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ワールドシナリオ後編
『哀哭のカナロ・ペレア』第２回オープニング

　アルディナ帝国、アトラ・ハシス島、マテオ・テーペ、それぞれの代表たちの話し合いにより、世界を安定させるために立ち向かう団、ストラテジー・スヴェル（以下Ｓスヴェル）が創設された。

　出資者は、帝国のハルベルト公爵。すでにあるガーディアン・スヴェルの姉妹団体にあたる民間組織だ。

　代表者は三人で、帝国、アトラ・ハシス島、マテオ・テーペからそれぞれ一人が選出された。
　帝国からはハルベルト家に連なる下級貴族の青年で、魔法に長けた魔術師。
　アトラ・ハシス島からは、航海士のレイニ・ルワール。
　マテオ・テーペからは、伯爵の娘のジスレーヌ・メイユール。
　この三人である。
　Ｓスヴェルは団長にグレアム・ハルベルトを据えており、彼が不在の今はハルベルト家に連なる下級貴族の青年が団長代理を務めている。
　また、団員の参加資格は、
１．いずれかの国や地域に住民登録をしていること。
２．連絡の取れる『人間』であること。
　この二点のみだ。
　ガーディアン・スヴェルは主に街の人達のためのボランティア組織であったが、ストラテジー・スヴェルはより広範囲に戦略的に活動する組織である。

　集まった団員達を前に、団長代理は姿勢を正して前回の作戦成功を労った。
「皆の尽力の成果だ。次の作戦も厳しいものになるが、世界を守るために力を貸してほしい」
　そして、今回の作戦会議が始まった。

■氷の大地～対グレアム
　今回の作戦は、レイニがまとめた報告書を元に立案された。彼女は一足先にリモス島に行き、アルザラ１号の出航準備に取りかかっているため、ここにはいない。
　氷の大地には風の特殊な魔力を持つ一族が留まっており、一族の能力により本土と連絡を取り合うこともできている。
　団長代理はまず、前回の作戦で氷の大地で起こった出来事と、現地にある脅威について話し始めた。
「ここでは完全に魔物化した動物や人間に遭遇した。そうなった生き物に、回復魔法での処置は効かない……当然、話も通じない。今回も遭遇の可能性が高いと思われる。接敵したら躊躇わず命を絶つように。強い相手だという。手加減など考えたら死体になるのはこちらだろう」
　それから、歪んだ魔力の影響も深刻だと告げた。
「とても濃い歪んだ魔力に満ちていると思われる。自分や周りの変化には常に気を配るように」
　最後に、設営したベースキャンプについて触れた。
「現在、ここには何人か残っていて、ベースキャンプの防衛と周辺の調査が行われている。私達はこれからベースキャンプの仲間達と合流し、水の魔力の吹き溜まりに魔物などが向かわないよう、引き付けるのが仕事となる」
「籠城するの？」
　ベースキャンプなら備えもあるからね、と言った団員に、団長代理は首を横に振った。
「ベースキャンプは今後も使う予定だから、魔物との戦闘で傷つけるわけにはいかない。そのため、おびき寄せるなら別の場所になる。できるだけ私達に有利な場所を選びたいな。協力を頼む」
　自分達が戦いやすい場所へ魔物を誘導し、殲滅する。
　近接攻撃が得意な者と魔法など遠距離攻撃が得意な者との連携が重要になるだろう。
　彼らのサポートができる者も必要だ。
　そして、ここで魔物を多く引き付け倒すことができれば、水の魔力の調整に向かうルース姫達の負担も減るのだ。
「一つ、懸念がある……」
　団長代理は緊張した面持ちで団員達を見渡した。
「前回の作戦で、燃える島で発見されたグレアムさんやチェリアさんが乗った船が、氷の大地でも発見されたらしい。直接調査はしていないから詳細はわからないが、おそらく彼らは何らかの形で私達の前に現れると思われる。もし姿を現した場合、グレアムさんの身柄の確保を優先する。……そしてもし、こちらに犠牲が出そうな場合は、躊躇せず彼の命を絶つように。これは、彼の願いでもある」
　私達は、絶対に負けられないと、団長代理は強い眼差しで言った。

■燃える島～遠征調査
「今回の燃える島の調査は、数日間をかけて行う」
　と、団長代理は言った。
　彼は机の上に、燃える島の大まかな地図を広げた。
　島の中心部からやや外れたところに、遺跡――廃墟となった神殿がある。
　彼はそこを指さし、作戦の説明を始める。
「これは、かつての地の神殿だ。この遺跡の地下には、地の魔力の吹き溜まりへと続く地下道があり、ここ本土とリモス村の二か所と繋がっているようだ。そして、この地下道を通じて島に満ちる歪んだ魔力が流れ込んでいると考えられる。この魔力の流れは、地下道を岩で塞いだところで完全に抑えることはできない」
　そこで、と団長代理は周りに集まった団員達を見渡した。
「２フェーズの作戦を行う」
　と、作戦が長期であることを、まず知らせた。
「第１フェーズは、第２フェーズのための準備だ。燃える島全体の調査と、神殿に残された書物などの回収を行う。優先するのは、島の調査だ。地形、危険な場所、魔物の情報、その他生き物がいればその情報……何でもいい、集めて記録してくれ。この情報が第２フェーズに生かされるからな。また、島には海賊が集めた盗品もあるが、これらは積極的に回収しなくてもいい。回収作業については、書物を優先する」
「盗品の中に明らかに貴重なものがあった時は？」
　小さく手を挙げて言った団員に、団長代理は真面目に答えた。
「君に目利きができて、それが今後の世界のためになると判断したなら、しっかり回収してくれ。個人的な小遣い稼ぎのために手を出すことは許さない」
　スヴェルは騎士団ほど規律に厳しくはないが、それでもあまりに身勝手が過ぎれば除名もあり得る。
「島および遺跡には、大量の歪んだ魔力が留まっていると思われる。深入りや単独行動は禁止する。次に繋げるためにも、全員で生きて帰るぞ」
　犠牲を出さないためにも、団長代理は団員達に厳しく言い渡した。
　続く第２フェーズは、島の浄化だ。
「第２フェーズにも皆の力が必要になる。詳しいことは、今回の作戦を終わらせてから話そう」
　泊まり込みであることも考えて準備を怠らないように、と言って団長代理はいったん解散を告げた。

■Ｓスヴェル本部～世界の未来のために
　現在、人の生存が確認されている場所は三か所ある。
　ここ帝国とアトラ・ハシス島、そしてマテオ・テーペだ。
「ルース姫が水の魔力の吹き溜まりに、魔力の暴走を静めに行ってますが、それですべて終わるとは思えません」
　そう言ったジスレーヌの表情は落ち着いている。
　数日前にレイニの前で取り乱した様子は、欠片もない。
「水の魔力は、二十年の節目を迎えるずっと前から……あの大洪水の時から暴走しているのです。そこに節目の年が重なっています。ルース姫が成功しても、その余波は必ず人々が生きる地を襲うでしょう」
　事の深刻さに、団員達に緊張が走った。

　そしてジスレーヌは大洪水前から計画されていた『箱船計画』について、その場にいる皆に話した。
「吹き溜まりに集まった魔力を安定させるには、膨大な魔力の塊である魔石が必要とのことです。約２０００年前に魔石から作りだされたという聖石は、マテオ・テーペの人々を守るために持ち出さないとルース姫が決断されました」
　水の暴走を静める儀式は、他の魔石――長くアトラ・ハシス島で管理されていた、３種類の魔石から作りだされた道具を使って行なわれる。
「こんな大災害を起こしておきながら、ルースは世界より自分達を優先するのかッ！！」
　帝国の団員の怒声が響いた。
「燃える島を燃やしていたのは、マテオ・テーペに在った火の力でした。帝国はそれを魔石化しました。その魔石は今、この帝国本土で生きる皆さんを守るために使われています。世界の安定ではなく、皆さんの命を守るためにです！」
　場が静まりかえった。
「私は、マテオ・テーペの人達も、命を投げ打つつもりのルース姫や、覚悟を決めている人達、今ここに生きている人達の命も全て諦めません。だけれど、意思を持っていても流されているだけでは、ダメなのだと気付きました」
　生き残った以上、私達は人任せにしていてはダメなのです、とジスレーヌは拳を握りしめた。
「まずは、現在のそれぞれの状況を教えてください。魔石や継承者の力に頼らず、私達皆の力でなんとかできないか考えませんか？　そして、世界を安定させるには何をすべきなのかも。火の魔力を魔石化したように、水の魔力を魔石化して抑えることはできないのでしょうか。他に、魔力を静める方法は？　知っていることを、教えてください。自分達に都合の悪いことを隠すのではなく、未来のために情報を出し合いませんか？　そして私達に何ができるのか、考えましょう」
　そしてジスレーヌは水の魔術師から聞いた話、宮殿でのこと、レイニから聞いた話を包み隠さず、皆に話した。


『哀哭のカナロ・ペレア』第２回参加案内

■スケジュール
2020年3月31日　シナリオガイド公開
2020年3月31日　チケット販売、アクション受付け開始
2020年4月7日　アクション締切
2020年4月30日頃　リアクション公開

■参加方法
公式ショップでチケット（５００円）を購入していただき、こちらのフォームから選択肢の選択、手段（２００文字まで）をご投稿ください。

■第２回の成功条件
グレアム・ハルベルトの身柄確保
遺跡の探索に成功し、古書を手に入れる

※作戦が成功に至った場合、支援者や活動資金が増え、魔法具が貸与されるなど活動がしやすくなります。

■選択肢
・氷の大地の作戦に参加（儀式前準備）
　※周辺調査。拠点強化。

・氷の大地の作戦に参加（儀式中サポート）
　※魔物、ハーフとの戦闘メイン。

・燃える島の調査に参加
　※島全体と遺跡調査。

・本土の対策会議に参加
　※会議参加、会議準備等のサポート。

・フリーアクション

【フリーアクションとは】
ワールドシナリオ後編は、世界を滅ぼそうとする存在に、立ち向かう団に所属するメンバーたちの戦いの物語です。団員として、状況に沿った協力行動が望まれます。
それ以外の、選択肢や団行動から外れた行動をとる場合「フリーアクション」をご選択ください。
フリーアクションは、その行動が物語に大きな影響を与える場合にのみ採用され、採用された場合にのみＰＣがリアクションに登場します。
※フリーアクションの選択をされず、選択肢や団行動から外れた行動をとった場合は、独自行動よりも協力を優先するものとして、マスタリングが行われます。

今回は匿名で対策会議に文書（情報）を送りたい方も、フリーアクションをご選択ください。
ＰＣの名前は出ませんが、文書は（悪戯と判断されなければ）描写されます。

【ゾーンシナリオ『任重くして道遠し』参加者の方】
第１回で氷の大地に向かった方が参加できる作戦は、氷の大地で行われるもののみとなります。且つ、第２回で儀式の場へ同行された方は「・氷の大地の作戦に参加（儀式前準備）」の作戦のみにご参加いただけます。
第１回でリモス村で行動をされた方は、時系列的に「・氷の大地の作戦に参加（儀式前準備）」の作戦にはご参加いただけません。

■状況説明等
魔法具ではない一般的な作業に必要な道具や、武具は借りることができます。
また今回は、前回の活動の結果により、帝国騎士と帝国所属の傭兵騎士は、騎士団から魔法防具を借りることがでるようになりました（防具のみです）。
魔力の高い方は、歪んだ魔力の影響を受けやすく、場合によっては囚われて自我を失います。
対処法については、こちら等でご確認ください。
魔力が低い方は、魔法防御力も低いです。魔力の濃度が高い場所で魔法防具を纏っていない場合、その場にいるだけで身体に大きなダメージを受けます。
燃える島の拠点内（結界内）では魔力の影響を受けませんが、魔法も使えなくなります。
結界の外と中は生物は普通に行き来ができます。エネルギー体は行き来できません。
今回の氷の大地の作戦（儀式中サポート）は、次回に続きますため、アルザラ１号の本土帰還は第３回中となります。

■敵
【燃える島】
実体のない魔物が出現します。
負の魔力が動物の姿化したエネルギー体です。
物理攻撃も効きますが、魔法攻撃の方が有効です。

【氷の大地】
寒冷地に生息する野生生物（陸上種、海洋種共に）、及び元人間の魔物が出現します。
グレアムが魔物を率いて襲ってきます。他のＮＰＣとも遭遇する可能性があります。

グレアム……個人能力の他、地と水の継承者の一族の力を使ってきます。
水の継承者の一族の力については、はっきりと描かれたことがありません。後編プロローグを参考に予想してください。

【その他】
なし

■継承者の一族の力をお持ちの方
継承者から力を与えられた方、施術を受けた方、魔石の欠片を使用された方（使用される方）につきましては、魔力が高くても歪んだ魔力の影響を受け難いです。

■その他注意事項
箱船と元海賊船（ブレイブ号）、及び暴走した水の魔力を鎮める儀式は、ゾーンシナリオで取り扱われます。
ワールドシナリオで干渉することは出来ません。

■個別連絡
エンリケ・エストラーダさん
バルバロさん
前回の連絡事項と同じとなります。

■マスターより
主に構成を担当いたします、川岸満里亜です。
後編のワールドシナリオは、人類vs負の意思です。作戦の成功を目指して皆で協力をする、ほぼ協力型となります。
（ほぼ）全員協力型ですので、グループ行動につきましては、ＰＣ掲示板をご活用いただき、メンバーを募ってくださいませ！

今回、ゾーンシナリオリモスの参加者のみ、選べる選択肢、選べない選択肢があります。
その他のゾーンシナリオにご参加中の方に制限はありません。第１回時にアルザラ１号に乗り、氷の大地のベースキャンプに残ったとして「氷の大地の作戦に参加（儀式前準備）」をお選びいただいても構いません。

尚、次回以降、燃える島にて一定の条件を経たＰＣは、継承者の一族の力を宿す可能性があります。

後編のワールドシナリオは各ゾーンシナリオの状況により、作戦が変わっていきます。
ゾーンシナリオの方も是非よろしくお願いいたします。

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こんにちは、冷泉みのりです。
オープニングストーリー、及びリアクションの一部を担当します。
今回もよろしくお願いいたします。

前作マテオ・テーペの時点では、ジスレーヌがこのような役割を担うことになるなどまったく考えていませんでした。
マテオの未来だけでなく、彼女がどういう方向に向かって行くのか、皆さんのアクションによって変わっていくと思います。
ひっそり楽しみにしています。