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ワールドシナリオ前編

『深淵の眼差し かげろうの蒼』第5回オープニング


◆平和な日常を取り戻すために
 思うままに空を飛ぶトゥーニャ・ルムナが、燃える島の近くに何回目かの竜巻を起こす。
「う~ん、これはいまいちだね~。もっとひねりが……」
 究極の竜巻を起こすには、と思案し自身もぐるんと回ってみる。
 彼女の周りには、いつしか鳥の魔物が集まってきていた。
 いろんな種類の鳥が魔物化したもので、爪や嘴がより攻撃的な形状になっているのが共通点である。
「そういえば、鳥のみんなも大洪水で下りる大地がなくなって、いっぱい死んじゃったんだよね~。狭いかもしれないけど、あそこの本島に行って遊んできなよ~」
 トゥーニャが指さしたほうへ、鳥達は一斉に飛び去っていった。

 スラム街では、突如勃発した暴動に加え、どこからか大挙して押し寄せてきた鳥の魔物の襲撃を受け、大混乱に陥っていた。
「クソッ、どうなってるんだ!?」
「火を消せ!」
「誰かそいつを止めろッ!」
 あちこちでこのような怒号が飛び交っている。
 この混乱は、じょじょに街や貴族居住区へと広がっていった。

 


 街にある広場では、緊迫した面持ちの騎士団副団長が集まった人々に事態の説明を行っていた。
「最近の魔物の出現は、水の魔力の暴走により歪められた魔力が生物の正常な魔力と混ざり、歪ませたことが原因だと考えられている!」
 聴衆を見渡す副団長の目に映るのは、どれも不安そうな顔ばかりだ。
「歪んだ魔力は、燃える島に集まっているようだ! 海賊達もその影響を受けていた! 知能が低い生物や子供、または大人でも魔力の高い者が、特に影響を受けやすい!」
皇帝は大丈夫なの!?」
 大洪水の時、自分達の命を救った皇帝を心配する声があがった。
 声のほうへ顔を向け、心配ない、と返す副団長。
「神の力を有する陛下や皇族の方々が影響を受けることはない!」
 人々から安堵のどよめきが起こる。
 次に、スラムの暴動との関係が問われた。
 スラム民なら、歪んだ魔力に侵されなくとも暴動を起こすだろう、という不信感があった。
「彼らも歪んだ魔力に侵されている! 海賊が入れられた特別収容所と壁を隔てて隣接しているスラム民は、影響を受けてしまったのだろう!」
 何だよそれ、と聴衆の不安が不満に変わっていく。
 特別収容所へ入れる前に何とかしなかったのか、と。
「そこが厄介なところなのだ!」
 副団長の声に苛立ちが混ざる。
 彼はこのことを聞いた時、頭がどうにかなるかと思ったのだ。
「歪んだ魔力は通常、強い地の魔法をぶつけることで対象から弾き出すことができる! だが、弾き出されたそれは消滅するのではなく、また別の生物の中に入って行くのだ!」
 副団長は断言したが、実はまだ確定されたわけではない。
 魔法研究者が、最も可能性があることとして挙げたものにすぎない。
 だが、今はこの説を信じて動くしかないのだ。
 そう、動く──。
 無限に繰り返される悪夢のような現状を、変える手立てがある。
 かつての騎士団長が主導して行われていた開発で、彼が亡くなった今はその息子が引き継いだ対魔物用の魔導武器だ。
 魔導砲一基と、地の魔法が込められた魔法剣。
「魔法剣は魔力があれば誰でも使える、殺傷能力のない剣だ! また魔導砲は東の魔力塔に設置し、燃える島付近にいる歪んだ魔力にとり憑かれ、竜巻を起こしている者を解放する!」
 あの竜巻、人間の仕業かよ……。
 そんな恐れの呟きが、さざ波のように広がった。
「そのために、皆の力を貸してほしい! 魔導砲発射には多量の魔力が必要だ! 魔力を提供しても良いという者は、東の魔力塔に向かってくれ!
 魔法剣は皆も購入できるようにした! 歪んだ魔力にとり憑かれた者がいたら、これで解放してあげてほしい!
 また、風の魔法を使える者達よ! 空に向かって風を起こせ! 弾き出した歪んだ魔力が他の生物に入る前に、空へと送るのだ!」
 そうして空に集まった歪んだ魔力を、宮殿で保護している火の神族の生き残りの女性に燃やしてもらうのだ、と副団長は言った。
「国民よ、力を結集せよ! 災厄を打ち払い、平和を取り戻すのだ!」
 自分達がするべきことを提示された彼らは、日常を取り戻すために動く決意をした。
 副団長は断言するように言ったが、実は推測がほとんとだ。
 上空で燃やしたところで、この問題が解決できる保証はない。
 だが、このままでは人間のほうが疲れ果てて滅ぶだけだ。
 生き残るための、賭けだった。

 


 リモス村に宮廷から使いがやって来た。
 燃える島近郊で竜巻を起こしているのが、マテオ民のトゥーニャであることを伝えに来たのだ。
「魔力の高さ故に起こった、不幸な出来事だったことは理解している」
 使いは先にそう言って、マテオ民の不信感をなだめた。
 それから、トゥーニャを救うために東の魔力塔に設置した魔導砲を使うことを説明し、最後にこう付け加えた。
「歪んだ魔力が弾き出された後、彼女は意識を失い落下する恐れがある。箱船で救助を願いたい」
 海賊と戦う際に建てた拠点からの報告で、トゥーニャらしき人影が空を飛び回っていることが報告されていた。
「それと前回の海底洞窟の調査により、魔物化した海獣が歪んだ魔力を本土やリモス村に運んでいた可能性が出てきた。これが正しいか調べるために、箱船で海に潜り燃える島の周りを調べてほしいのだ。……ただ、島へ逃げた海賊の残党がまだ捕まっていないため、危険を伴うことになるだろう」
 そのため、トゥーニャ救出も燃える島周囲の調査も強制ではない。
 マテオ民達は集まって相談を始めた。


ワールドシナリオ第5回参加案内

■スケジュール
2019年9月24日 シナリオガイド公開
2019年9月25日 チケット販売、アクション受付け開始
2019年10月1日 アクション締切
2019年10月下旬 リアクション公開

■参加方法
公式ショップでチケット(500円)を購入していただき、ダウンロードしたファイルに記載されたURLのフォームから選択肢の選択、手段(200文字まで)をご投稿ください。

■第5回の主な目的
トゥーニャの救出
解決に向けて奮闘

■選択肢
・【騎士団員】本島の混乱の対処に動く
・【騎士団員】魔導船で海賊残党対処、箱船サポート
・【スヴェル】スラム街の対処に当たる、指揮する
・【リモス村】マテオ民に協力する(箱船に乗る)
・【リモス村】野戦病院で救護活動
・【マテオ民】箱船でトゥーニャ救助
・【マテオ民】箱船で燃える島周辺調査
・【アトラ民】マテオ民に協力する(箱船に乗る)
・【海賊】投降を呼びかける、投降する、逃亡する
・暴走する、戦う
・東の魔力塔に行き、魔力を提供する
・スラム街の対処に当たる
・野戦病院で救護活動
・開発関連

■選択肢説明
【騎士団員】……立場:帝国騎士、傭兵騎士
【スヴェル】……立場:スヴェル
【リモス村】……拠点がリモス
【マテオ民】……マテオ・テーペ出身PC全員
【アトラ民】……アトラ・ハシス島の民全員
【海賊】……立場:海賊

選択肢の前に【 】のない選択肢は、PCの立場や状況に合っていればどのPCでも選択可能です。

■状態負傷以上の方
日常生活に問題はありませんが、魔法の発動や敏捷性に影響が出る可能性があります。

■状況説明
本島の混乱の対処と、遊びに(襲撃に)来ると思われるトゥーニャ・ルムナの対処が急務となります。
燃える島へは帝国の魔導船も海賊の残党を捕縛するために向かう予定です。
ただ、トゥーニャが燃える島から離れる、もしくは意識を失わない限り、帝国の魔導船は燃える島に近づくことができません。
箱船はマテオ民PCが誰も箱船の選択肢を選ばなかった場合、出航しません。

今回は以下のNPCが参戦します。
説明はPL情報です。

マリオ・サマランチ
スヴェルの建物の管理人。帝国皇族?
歪んだ魔力を弾き出す際、魔力塔に集めた魔力に力を注ぎます。

シャナ・ア・クー
風の継承者。
歪んだ魔力を飛ばす際、魔力塔に集めた魔力に力を注ぎます。
また、トゥーニャに特殊能力(風の魔力に声を乗せる)で呼びかけてみます。

アーリー・オサード
火の特殊な力を持つ一族(継承者の一族)の生き残り。
歪んだ魔力を燃やす際、魔力塔に集めた魔力に力を注ぎます。
トゥーニャから歪んだ魔力を弾きだす作戦が失敗した場合、トゥーニャごと燃やすよう命じられます。

ベルティルデ・バイエル
水の継承者。
箱船に乗って仲間を助けようとします。

■魔力塔での作戦
基本的には、魔力塔の周りに集まって想いを込めた魔力を捧げます。
ただし、マリオ、シャナ、アーリーと重要シナリオ(オープニングフリーシナリオかゾーンシナリオ前編1回~4回)の何れかで、顔を合わせたことのあるPCは、NPCに同行して塔の上階に行き、NPCに協力することが可能です。

■地の魔法が込められた魔法剣
剣の柄に魔力を注ぐことで発動する魔法具です。金属の刃はなく、発動と共に地の回復魔法エネルギーの刃が形成されます。対象を斬る、突くなどの方法で歪んだ魔力をはじき出すことが可能です。
魔力が低い方でも扱えますが、魔力が尽きると発動できなくなります(休憩で魔力は回復します)。
魔力0の方は使用できません。
騎士団員と戦闘能力のあるスヴェル団員には、貸与されます。

■その他歪んだ魔力について
地属性で魔力21以上の方は、単身で回復魔法をぶつけることで対象から歪んだ魔力を弾き出すことができます。
魔力の低い方が単身で回復魔法をかけても、何も効果はありませんが、地属性複数人で魔力の合計が21以上あれば、一斉にぶつけることで可能となります。
自分自身が歪んだ魔力に囚われてしまった場合、自分の魔法のみで自分の中から弾き出すことは出来ません。
歪んだ魔力が弾き出された後は、基本的には意識を失います(魔力が低く、体力が高い場合はその限りではありません)。

トゥーニャ・ルムナさん
歪んだ魔力に意識が完全に囚われています。
悪役として皆と戦いたい場合は、戦闘、破壊アクションを書いていただいて構いませんが、そうではない場合は、魔力に宿っている声と会話するなどのアクションで、今後に繋げていただけたらと思います。
皆に助けてもらえなかった場合は……ごめんなさい!

エンリケ・エストラーダさん
エンリケさんは歪んだ魔力に囚われていないと考えています。懐いている海獣2体を除き、海獣(魔物)を指揮することはできません。
懐いている海獣も命を賭けるようなことはしません。
共にいる歪んだ魔力に囚われた海賊たちは、多少海獣を操ることが可能です。
投降に応じず逃げた場合、賞金首となります。

メリッサ・ガードナーさん
拠点がリモス村のマテオ難民と同じ立場となります。
帝国側に危険視されています。

バルバロさん
騎士団員と一緒に魔導船に乗って燃える島へ近づき、残党から歪んだ魔力を弾きだし、投降を呼びかけるようにと言われています。

タウラス・ルワールさん
娘生存の情報が入った為、レイニ・ルワールが子どもをアトラ島の友人に預けて、こちらに戻ってこようとしています。
許可しない場合は、アクション欄に『妻不可』とご記入ください。記入なし、もしくは不参加の場合は、レイニは帝国領に戻ってきます。

■開発について
製造、試作テストの協力者の募集は行われますが、今回は新たな案の募集は行われません。
ゴーレムについては、2体完成に至っており、今回採掘作業などに利用されます。
役立てたい場所がある場合は、ご提案ください。

炮烙玉(投箭を詰めたもの)も、多くの資金提供がありましたため、十分なストックがあります。

■アイテム購入について
地の魔法が込められた魔法剣(400G)と、回復薬セット(200G)を購入することが可能です。
回復薬セットは、魔法薬の体力回復薬と魔力回復薬、その他栄養ドリンクなどが入っています。シナリオで使用してもなくなりません(毎回使えます)。
尚特殊な状況下にあるPCにつきましては、購入しても今回使うことはできないです。その他のPCにつきましては、今回から利用できます。

■マスターより
構成、データ処理を担当いたします、川岸満里亜です。
前編最終回です。当初の予定とはずいぶん違う不思議な展開となりましたが、少しでも良い形で後編を迎えることが出来ればと思います。
尚、前編終了後には、寄付金(ワールド参加で貯めたG)も募りたいと思っています。街の復興や、スラム街の人達、水の魔力調整の為、マテオ民救出のため等。
どこに寄付金が集まるかにより、どこの人々がより助かるかに影響がでま……誰ですか、鬼!とか言ったのは。
そういうわけで、チームプレイが求められるワールドでは特に、立場、状況、能力値に合った行動をよろしくお願いいたします。
自分の立場でこの行動が出来るかどうか分からないと言う方は、Q&Aをよくご確認の上、ご判断くださいませ。失敗や没を避けたい方は、判断できない行動はしないことをお勧めします。


*   *   *


こんにちは、冷泉みのりです。
オープニング、エピローグ、及びリアクションの一部を担当します。
選択肢【リモス村】などについて、少し説明します。

・【リモス村】マテオ民に協力する(箱船に乗る)
 マテオ民でもアトラ民でもないリモス村を拠点とするPCが選べます。実質、囚人設定のPCに向けたものです。
・【リモス村】野戦病院で救護活動
 リモス村を拠点とするマテオ民、アトラ民、囚人が対象の選択肢です。

【】のない選択肢について
・リモス村拠点のマテオ民とアトラ民……立場や状況が合っていれば、どれでも選べます。
・リモス村拠点の囚人……『暴走する、戦う』『東の魔力塔に行き、魔力を提供する』から選べます。『野戦病院で救護活動』をしたい方は【リモス村】野戦病院で救護活動を選択してください。
 ただし『暴走する、戦う』を選び周囲に被害を及ぼした時は、リモス村に強制送還されます。

前編最終話も、よろしくお願いします。