ワールドガイド
●舞台~大洪水から現在まで~
今から約5年前の帝国暦1993年、世界は突然の大洪水に襲われました。
広大な国土を持つアルディナ帝国も例外ではありません。
残った領土は、高原だったごくわずかな範囲のみで他はすべて水没しました。かつては遠くに見えていた離島も姿を消し、また他国の状況も一切不明です。
ところで、もともと高原だったそこには皇室の離宮がありました。
当時、離宮にはその時の皇帝の第三皇子ランガス・ドムドールと親族である大貴族、護衛の騎士達が滞在しており、未曽有の洪水の知らせを受けるなり、付近の町や村、集落に避難を呼びかけました。
そしてランガス第三皇子は離宮に建つ魔力の塔の力を用い、地の魔術師達と共に付近一帯の土地を隆起させ、さらに土の壁で周囲を覆って、避難してきた人々を大洪水から守ったのです。
現在、約2万人程が生活をしています。
ランガス第三皇子は、皇族が持つ特殊な魔力を用いて父である皇帝や母の皇妃、また他の皇子達と連絡を取ろうと試みましたが、誰一人応答する者はいませんでした。
その後、国民のために尽力したランガス第三皇子は、他の皇族の生き残りの可能性が絶望的であることと、救われた国民からの強い支持を得て皇帝に即位しました。
それから約1年後の1994年、水位が下がり島が二つ海面に姿を現しました。
これの確認後、土の壁は取り払われています。
そしてさらに2年後の1996年、片方の島が燃えはじめ、水位はじょじょに下がっていっているという調査結果を得ました。
●帝国各地について
○宮殿
もともとは高原にあった皇室の離宮でした。
大洪水後、ここを中心に再び街がつくられていったのです。
現在、皇帝とその家族や親族である大貴族が暮らしています。
○特別収容所
大貴族の屋敷が連なる敷地の一角には、未曽有の大災害を引き起こしたとして、ウォテュラ王国からの避難民が収容されていると言われています。
大洪水は、帝国と対立国であったウォテュラ王国の軍事実験で引き起こされたと考えられており、帝国民からの憎悪ははかりしれません。
そのため避難民は、強制労働を課されていると公表されています。
○城下町(貴族および騎士居住区)
宮殿の敷地の北側を覆うように広がっています。
貴族および騎士達約200人がこの一帯に暮らしています。
○城下町(一般国民居住区)
宮殿や貴族、騎士達の居住区の外側が一般国民の居住区域になります。
およそ1万9000人が暮らしています。
○大広場
貴族や騎士達の居住区と一般国民の居住区の間にあります。
ふだんは騎士団の演習や子供達の遊び場として使われていますが、時々演説が行われることもあります。
○スラム街
ウォテュラ王国からの避難民収容区画と塀を隔てた向こう側に広がり、約700人が暮らしています。
身寄りのない者や大洪水で肉親を失った子供達が主な生活者です。
○魔力塔
魔力を蓄積している塔です。
東西南北の外れに一本ずつと、宮殿に四方のものよりも大きな塔が一本建っています。
○燃える島
本土の東沖にあり、姿を現したのは1994年頃ですが2年くらい前から突然炎に包まれるようになりました。原因はわかっていません。
また燃える前は、この島は海賊の拠点にされていました。
遺跡があったという話ですが、何の遺跡かは不明です。
○開拓地リモス村
本土の西側にあり、燃える島と同時期に姿を現しました。周辺の海流の変化が激しく船で近づくことはできませんが、特定の条件下でのみ島に渡ることができます。狭い島ですが、じょじょに面積が広がっていくと考えられています。
人が住めるようになったのはわずか1年ほど前からで、現在では約100人が暮らしています。
その立地条件から流刑先として利用され、住人のほとんどが本土で罪を犯した者達です。
○鉱山
開拓地にある鉱山です。開拓地が現れたことで一緒に姿を現しました。通常の鉱石に加えて魔法鉱石も採れるたいへん貴重な鉱山です。
魔法鉱石が採掘できる鉱山は特定の場所にしか存在しないため、ここが発見されたことは奇跡とも言えます。
流刑囚の主な労働先です。
●気候・文化
日中は暑く、夜は極寒という寒暖差の激しい気候です。また、冬には大雪になります。
土地はもともとは自然豊かで肥沃でしたが、大洪水から守るために大地を隆起させた影響で、現在では作物が育ちにくくなってしまっています。
特に避難直後は食糧不足になり混乱が続きました。同時に疫病や怪我、飢餓等により避難民の半数以上が亡くなりました。
混乱が落ち着いてからは、農業と畜産でどうにか食糧を確保しています。
漁業は基本的には行っていません。海賊という脅威があるからです。川での漁も、川魚が貴重な生物であることから禁止されています。
●政治体制
絶対君主制の軍事国家です。
●魔法について
〇魔法とは
魔法の存在は誰もが知っていますが、習得には素質が必要です。
素質がある人は、物心がつく頃から十代後半くらいまでにその兆候があらわれます。
まれに素質はあっても兆候のない人もいます。鈍感であったり魔法に興味がない人などが当てはまる傾向があります。
また、魔法には地、水、風、火の四つの属性があり、個人の素質によりどれか一つがあらわれます。
その後は訓練等で技術を磨いていくことになります。
〇魔法の行使
魔法の発動方法は、地域や民族でさまざまです。
魔法の発動には高い集中力が必要であるため、その手段として印を結ぶ、詠唱を行う、杖などの道具を用いるなどがあります。
〇魔法鉱石
魔力を帯びた特殊な鉱石を指します。
かつてはこの鉱石と魔法技術を用いて、日常的なものから限定的なものまでさまざまな魔法具や薬品類が作られていました。
しかし大洪水後は、魔法鉱石が採れる鉱山が水没したため生産は止まっています。
そのため、開拓地にあらわれた鉱山はとても重要視されているのです。
○魔法具について
魔法具は、人が使ってはじめてその効果をあらわす道具です。
目的はさまざまで、日常で使う照明の類から人が扱う魔法以上の強力な威力を発動させるものなど多岐にわたります。
魔法具の製作には熟練の技術者と長い時間が必要です。
そのため、魔法具の生産数はごくわずかでとても希少価値の高いものとなっています。
現在、魔法具は宮殿にあるものがほぼすべてです。
他は貴族が個人的に所有している可能性があるのみです。
以下は製造過程の一例です。
まず、魔法鉱石を製錬し純度の高い魔法石を、1ヶ月以上を費やしてつくり出します。
さらに魔法具にした時の効果を高めるために、錬成を行います。この作業には3ヶ月以上が必要です。
最後に、魔力を通しやすい物質に必要量を配合し、魔法具として完成させます。これには1ヶ月以上かかります。
●人々について
ほとんどが帝国人です。
他、旅行などで訪れていた外国人が少数います。
一般の国民の生活はおおむね質素です。
主食はパンや芋、それと豆類、チーズ等です。
ごくまれに肉や魚が料理に使われます。
ふだんから不自由なく食事をとれているのは、裕福な商人か貴族以上の身分の人々です。
衣服については、一般国民は綿か麻になります。
絹製の衣服はとても貴重で高価なので、皇族あるいは大貴族が所持している程度です。
●海賊について
大洪水から1年後に土壁が取り払われた後に、帝政に背く者達により結成されました。
構成員は主にスラム出身の者達です。税金を納めず、犯罪行為で生計を立てていた人達がいつしか海に下りたため、海賊と呼ばれるようになりました。
当時出現した二つの島のうち、遺跡のある島を拠点にして周辺海域の探索を行っていましたが、1996年頃に突然島が炎に包まれてしまったため、現在は本土の東側の海岸に拠点を移しています。
帝国からは海賊とみなされていますが、これまで帝国に対し大規模な犯罪行為を犯したことはありません。ただし窃盗などの軽犯罪行為は常時犯しているようです。
そのため、彼らの縄張り内では漁が行えない状態です。
しかし、中には海賊と取り引きをして漁に出ている漁師もいるようです。
●地形
本土は半径約3キロメートルのほぼ円形で、周りのほとんどが崖になっています。
開拓地側には石段が設けられていますが、その先は木の柵で厳重に閉ざされ見張りが置かれています。
また燃える島の方面は海に出られる海岸がありますが、ここは海賊が占拠しているため近寄ることはたいへん危険です。
4/8
帝国暦の年数を修正しました。
大洪水発生は帝国暦1993年の秋です。
現皇帝が即位したのはその数カ月後で、オープニングは洪水から5年と数か月後となります。
5/1
海賊についての項目に、文章を追加させていただきました。
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