『決戦、近づく中で』

●氷の大地ベースキャンプ
 アルザラ1号がハルベルト兄妹を乗せて出航した後。
 訪れていたストラテジー・スヴェル団員のうち、氷の大地に残った者達は一旦ベースキャンプに集合した。
 風の特殊能力を持つ山の一族の魔法で帝国宮殿と連絡をとりながら、今後について話し合っていく。
「儀式の場に、ルース姫の双子の兄のルイスが現れて、ルース姫を連れて行こうとしたんだ。だけど、ルース姫は拒否して、精神を全て捧げて暴走を抑えた」
 箱船やブレイブ号に乗ってこの地に訪れていた者が、団員たちに儀式で起きたことを話した。
 この地の、恐らく氷の壁の向こうに、大洪水を発生させた者――水の継承者や、ハーフがいることはもう確実だった。
「マテオ・テーペの水の障壁を維持するために必要な聖石は、もうすぐ力を失ってしまう。自分達はすぐにここを発たなければいけないんだけど」
 できれば、聖石の代わりとなるものをマテオ・テーペに届けたい。
 代わりとなれるものはただ一つ。膨大な魔力を吸収した継承者の男性からのみ作ることのできる魔石。
「次のSスヴェルの作戦は、ルイスの討伐。そして魔石化することになるみたいだ」
 ここに残った者達でそれに成功した場合に限り、帝国は魔石の所有を主張しないとのことだった。
 激しい戦いが続き、重傷を負っている者や、魔力が枯渇し、戻っていないものもいる。
 この状態で、勝利することが出来るのだろうか……。

●ハルベルト兄妹
 アルザラ1号船内。
 氷の大地を出航してすぐに、チェリア・ハルベルトの意識は戻った。
「これまでのことは……うっすらと記憶にある。私の側にはいつもあのフィーと名乗る娘がいた。あの娘の中には、亡くなった私とカサンドラの母の精神が入っていた」
 彼女は、降霊の特殊能力を持っているようだった。帝国領にいた頃は、火の継承者の女性の霊を入れていたようだと、チェリアは語っていった。
 それから「すまなかった」と彼女は謝罪し、言葉少なく、暗い表情でうつむいていた。
 チェリアが過ごす部屋には窓はなく、武器になるようなものも一切置かれていない。
 そして彼女の希望で、部屋から出られないよう、右足とベッドをロープで繋いでいた。
 状態に変化がなくても、定期的に彼女から歪んだ魔力を弾きだしながら、船は帝国領へと急いでいた。

 グレアム・ハルベルトの身体はチェリアと離れた部屋に収容されていた。
 歪んだ魔力や、地の継承者の一族の能力の影響を受けにくい者――魔力が低く、体力のある者が交代でグレアムの見張りと世話を行っていた。
 しばらくして、アルザラ1号と合流するために、帝国から小型魔導船が出航したとの報告があった。
 その船に乗っている地の継承者の一族の力で、グレアムを強制的に落ち着かせることができるとのことだった。

●地の一族の女性
 小型魔導船の甲板で、エルザナ・システィックは深く考え込んでいた。
 出航前、エルザナは皇帝、ランガス・ドムドールの側仕えであるルーマ・ベスタナに呼び出された。
 一部の者しか知らないが、ルーマは皇帝の影武者である。
 Sスヴェルの議事録を見て思いついたのだが、と。彼はエルザナに語り始めた。
 世界の魔力を統べる王を誕生させるには、痣のある男性継承者の身体と、女性の継承者の精神が必要だと言い伝えられている。
 吹き溜まりの魔力を吸収したランガスの身体に、双子の姉セラミスの精神を入れて、チェリア・ハルベルトの能力で融合させることで、それを成そうと考えられていた。
 だが、かつての王が誕生したと思われる2000年前、チェリアと同じ能力を持ったものが、存在していたとは限らない。
 そのため、チェリアの力なしでも、王の誕生は可能であるはず。
『もしかしたら、ランガスの精神自体なくても、セラミスの精神があれば、可能なのかもしれない』
 近いうちに、ランガスを魔力を統べる王とする儀式が行われる。
『セラミスの精神だけで王を誕生させられる、というのなら――』
 "俺はこの身体を、ランガスにあげようと思う"
 ルーマの言葉に、エルザナは目を見張った。
 ランガスは、世界の魔力を統べる王となる存在であり、世界の王となった場合、帝国の皇帝であり続けることは難しいと考えられている。
 ランガスを神として、忠義を尽くすという考えは重鎮たち皆一致しているのだが、人間の王として、この国をまとめる新たな皇帝が必要だという意見を持つ者達と、このままルーマがランガスに扮し、皇帝を続けるべきだという意見を持つものとの間に対立が見られた。
『この身体がランガス自身となるのなら、このまま皇帝を続けることに反対する者はいないだろう。彼には子どももいる。彼女達を正式に皇族とするか、皇族に嫁がせ、子孫を皇帝としていけばいいだろう』
 だからエルザナ。
 キミもきちんと覚悟を決めてくれ。
 ルーマの穏やかな声が、エルザナの心を抉っていた。
 セラミスの意思の確認。そして、必要ならば、彼女と一つになるように。
 そういう意味だと、察した。
「エルザナ、さん……」
 不安げな声が響いてきた。
 声の主は、ビル・サマランチ。ランガスと貴族の娘との間にできた子どもの1人。
 彼女は、地の継承者の力を持っている。
 ビルにエルザナの精神を眠らせてもらい、セラミスと話をしてもらう予定だった。


カナロ・ペレア後編『決戦、近づく中で』参加案内

■スケジュール
2020年8月1日 シナリオガイド公開
2020年8月2日 チケット販売、アクション受付け開始
2020年8月9日 アクション締切(チケット販売終了)
2020年8月下旬頃 リアクション公開
※後編第4回のアクションに必要な情報が含まれているシーンのみ、先行公開させていただく可能性があります。

■参加方法
公式ショップでチケット(1500円)を購入していただき、こちらのフォームから選択肢の選択、手段(600文字まで)をご投稿ください。

■選択肢
・【氷の大地】ベースキャンプで相談
ワールドシナリオ後編第3回後のシーンです。
この時点で氷の大地にいると出来る方用の選択肢です。

・【アルザラ1号】チェリアと面会
ワールドシナリオ後編第3回後のシーンです。
この時点でアルザラ1号に乗っていると出来る方用の選択肢です。
※箱船とブレイブ号乗船者はこちらの選択肢はご選択いただけません。

・【アルザラ1号】グレアムと面会
ワールドシナリオ後編第3回後のシーンです。
この時点でアルザラ1号に乗っていると出来る方用の選択肢です。
※箱船とブレイブ号乗船者はこちらの選択肢はご選択いただけません。

・【アルザラ1号】セラミス、ビル、エルザナと会話
ワールドシナリオ後編第3回後のシーンです。
氷の大地からアルザラ1号に乗って出航した方、本土から小型魔導船で救援に向かったとすることが出来る方用の選択肢です。
※箱船とブレイブ号乗船者はこちらの選択肢はご選択いただけません。

・【帝国領】で行動する
ワールドシナリオ後編第3回後のシーンです。
この時点で帝国領(本土、リモス、燃える島)にいると出来る方用の選択肢です。
※箱船とブレイブ号乗船者はこちらの選択肢はご選択いただけません。

・その他状況に沿った行動をする

■注意事項
こちらのシナリオは、後編重要シナリオ第3回から第4回の間の物語です。
ワールドシナリオの番外編扱いですが、ゾーンシナリオの状況も反映されていますので、ゾーンシナリオのリアクションやあらすじも確認いただきますと解りやすいかと思います。
居場所や選択肢により時期が違いますが、時期についてはあまり気にしないでください。
既に書かれている内容と一致しない行動や、状況や立場上行けない場所に行くという行動、及び本編を進めようとする行動はお控えください。

アルザラ1号は、後編第4回開始前に帝国領に到着しますが、後編第3回でアルザラ1号に乗ったとする方は、アルザラ1号船内での行動でお願いいたします。

ワールド後編第3回で本土にいた方は、エルザナやビルと共に、アルザラ1号の救援に向かったとすることができます。

尚、ワールドシナリオ後編第4回も、氷の大地では作戦が2つ行われる予定です。
最初の作戦(ルイス戦)については、第3回の作戦のあと、アルザラ1号で帰還する方はご参加いただけないです。ご注意くださいませ。

こちらのシナリオでは、この期間の世界の状況に沿っていれば、オープニングと関係のない行動をしていただいても大丈夫です。
NPCと会うことも可能ですが、立場や状況により会えない人物を誘ったり、面会することは出来ません。

■マスターより
こんにちは、川岸満里亜です。
ワールドシナリオの番外編扱いで、シナリオを1つ行わせていただくことにいたしました。
ゾーンシナリオの話題も出していただいて大丈夫です。

注意事項にもありますが、後編第3回でアルザラ1号に乗って帝国に戻ったとする方は、次回のルイス戦にご参加いただくことができないです。
3~4間のストーリーもご確認の上、帰還するかしないか、ご検討ください。

皇帝のランガスですが、ゾーンシナリオ後編第3回で重傷を負い、意識が戻っていない状態です。
腹違いの妹のエルザナと、ランガスの実子(公妾の子)であるビルは酷く落ち込んでいます。

セラミスはランガスの双子の姉で、20歳の時に、地の魔力を鎮めるための儀式で、肉体を失いました。
彼女の精神は現在、エルザナの中に入っています。

今回エルザナはグレアムの精神が入っているネックレスを持ってきてはいません。
グレアムの精神を戻すシナリオは、来月行えたらいいなと思っております。

それではどうぞよろしくお願いいたします。

※こちらのシナリオのリアクションは、川岸、冷泉が担当いたします。