ワールドシナリオ後編

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『哀哭のカナロ・ペレア』第4回


第1章 氷の大地決戦1 ルイス魔石化作戦
 氷の大地に築かれたベースキャンプから、より魔力を強力に感じるほうへと進んでいく一行。命を賭した決戦の前だというのに、空は底抜けに明るく晴れて、静寂を保っていた。ふと、先陣を切っていた哨戒隊が、何かに気付いたらしく、本隊を振り返って手を振った。と、同時に、激しい爆煙が立ち上り、瞬く間に哨戒隊を飲み込んだ。
「総員配置にッ!! ッ――!」
 重傷を負いながらも陣頭指示を買って出たアウロラ・メルクリアスは、強烈な頭痛に襲われその場にうずくまる。まるで重力が強化され体が丸ごと氷の大地に飲み込まれるような錯覚。それは彼女だけではなく、ほかの団員たちも同様であった。
「来るよっ……!」
 爆煙の向こうから、黒髪の少女が姿を現した。よたよたと体を左右に揺らし、泣いているのか顔を伏せている。煙が晴れ、その奥にはルイス・ツィーグラーの姿も見えた。
「フィーちゃん……!」
 フィラ・タイラーは一歩進み出て、その見覚えのある姿に思わず声を出した。瞬間、フィラの足元の氷が解け始め、低い地鳴りの音が聞こえた。
「危ない!!」
 トゥーニャ・ルムナは咄嗟に彼女をかばって突き飛ばす。大地を覆っていた氷は見る間に溶けて、ちょうど1人をすっぽりと飲み込むほどの穴が開いた。フィラは立ち上がり、「ありがとう」と寂しそうに言った。
「あなた……やっぱりそうなのね」
「違うの……フィラお姉ちゃん……」
 フィーと呼ばれた少女は顔を伏せたまま、頭に手を当てて苦しそうなうめき声を挙げる。
「私、悪い魔力のせいで、頭がおかしくなっちゃったみたいなの……止められないの……助けて……」
 消え入りそうな声でつぶやくその声は、本隊の後ろにいた者にまで届く。みな、一様に息を呑んだ。だが、誰しもが分かっていた。少なくとも彼女は味方ではない。そして、仮に『頭がおかしくなっているだけ』であっても、もう二度と『正常』には戻らないであろうことも――。

「……フィーちゃん、もういいの。分かってる……」
 フィラは、内ポケットに忍ばせた投げナイフに手をかけた。
「嘘なんでしょ? あなたたちは、そうやって私たちを騙して……この世界を破滅へと導いている」
 フィーのすすり泣く声が、ぴたりと止まった。
「……やっぱり、信じてくれないんだね」
 彼女は顔を上げた。口角はぎりりと上がり、薄桃色の唇の間から妙にぎらついた歯がのぞく。目は見開かれ、瞳は焼けるほど赤く輝いている。
「それじゃ、今度こそ……みんな、死んでね! あはははははッッ!!!」
「ッ――!!」
 その狂気染みた笑い声に、フィラはナイフを投げつける。だが、瞬間フィーはその場からいなくなり、すぐフィラの目の前にまで迫ってきていた。
「どこに投げてるの?」
「突撃――!!」
 フィーが次の攻撃に移る前に、早期に決着をつけなくてはいけない。アウロラは声を張り上げて指示を出す。本隊は方々から、フィーに向かって攻撃を始めた。
「お姉ちゃんは優しくしてくれたから、最後にしてあげる」
 フィーはフィラに微笑みかけると、またすぐに彼女の目の前から姿を消す。氷の上を高速で移動するフィー。翻弄されながらも、戦士たちはその姿をとらえようと攻勢を続けた。
「……フィーちゃんの攻撃……」
 フィラは暴れ狂うフィーの動きを見て、彼女が魔力増幅のアイテムを持っているかもしれないと感じた。それを破壊すれば、きっと彼女の動きはもっと鈍くなる。
「魔力増幅装置があるかもしれない……! それを破壊するわよ!!」
 彼女は全員に伝わるよう、大声で叫んだ。

「私は打ち合わせ通り、ルイスを!」
 マルティア・ランツは、ルース姫と共に魔力を捧げており、魔力を失っていた。直接ルイスに話しかけられたとしても、彼女は彼を止めることは出来ないだろう。それに――。
『私は、彼にルイスとして生きてほしいと思っている。ルイスが死んだら悲しい』。
 そんなこと、口が裂けても言えなかった。この世界を滅ぼそうとしている張本人に「生きていてほしい」だなんて……。だけど、せめてその気持ちは、彼に伝えたい。そうでなければ、ルイスの心が悲しすぎるから……。
「俺も行こう」
 リベル・オウスは顔をしかめた。彼の魔力では、魔法防具を纏っていても、体に強い負荷がかかっている。これ以上強い瘴気にさらされたら、どうなってしまうというのか。だがその意志は固く、額に玉のような脂汗をにじませて、まっすぐマルティアを見据えている。
 ユリアス・ローレンは剣を掲げ、リベルの横に並び立った。
「……気を付けて」
 アウロラはあたりを見回した。遠くから地鳴りが聞こえる。
「敵が増えそうだから……」
 白煙の向こう側から、大きな鳥型のモンスターや、人間の3倍ほどの大きさもある四足歩行獣がこちらに向かって襲ってきていた。
 アウロラの号令に、マルティア、リベル、ユリアス、そして魔石化を任せられている山の一族は、出来るだけ速足で移動を開始した。フィーはフィラを始めとした帝国民や、仲間たちが引きつけてくれている。彼女に気付かれないように回り込んで、ルイスを手早く倒してしまうことが狙いだ。
「投てき開始ぃーっ!!」
 コタロウ・サンフィールドはカタパルトを発射して怪鳥を墜とす。高速で移動する上に近接戦闘が中心になっているフィー目がけて攻撃をすると、フレンドリファイアの危険がある。遠くの敵を次々撃ち砕けば、その分戦力をフィーに集中させることができるし、同時にフィーをこの近くから逃さないように牽制することもできる。
『偽善かもしれないけど、申し訳ないと思う気持ちもある』
 彼はカタパルトで攻勢を続けながら、ふとフィーを見た。
『だけどマテオ・テーペの人たちを助けること……それがベルティルデちゃんの望みなんだ……その邪魔をするなら、俺たちは君達を倒す為全力を尽くすよ』
 カタパルトの一撃が、巨大な獣の頭部を陥没させ、地に伏せさせた。
 ヴィーダ・ナ・パリドはフィーの攻撃をかわしながら、その足を止めぬよう動きまわっていた。彼女もまた魔力の大半を捧げていたため、魔力を失っていた。ヴィーダはコタロウの攻撃で絶命まではしなかったものの、すでに虫の息になっている魔物を盾にして、間合いを取っていく。
 ルイスは、もう1人のセゥだ。本当は、もっと違う道もあったのだろう。儀式や、この世界のことをもっと早く知ることができたら……。しかし、そんな感傷は何の役にも立たない。これまで多くの犠牲を払いながら守られてきた世界を、こんな所で壊させるわけにはいかない。
 ヴィーダの頬を、氷のつぶてが切り裂いた。彼女は舌打ちをして魔物から身を引くと、頬を拭ってフィーの動きを注視した。
 トゥーニャは風の力で鋭くとがった氷のつぶてをはじき返していく。だが、フィーの攻撃の苛烈さが上回っているせいであろう、彼女は防戦一方で、なかなか反撃のタイミングを掴めずにいた。さらに、攻撃の起点であるフィーの位置が大幅に前後するために、防ぐ最適なタイミングも逸して、時々氷弾が風の防護壁を突き破ってくるほどであった。
 フィーは氷の上を縦横無尽に動き回りながら攻撃を繰り返している。コタロウたち遠距離攻撃部隊のおかげで、フィー以外の敵はかなり戦力を削られ、間合いに入ってきた頃には大幅に弱体化させられている。
「……な~んかおかしいな~……?」
 トゥーニャは警戒したまま、フィーの動きを目で追いかける。接近時は氷で攻撃。中・遠距離にいる間は炎で攻撃。だが、攻撃の威力から察するに、どう見ても水の魔力のほうが高いように感じられる。それじゃあ、どうして炎攻撃を織り交ぜるんだろう? わざわざ水にしなくても、フィーほどの魔力があれば氷の大地は、絶好のフィールドのはずだ。つまり……。
「遠距離で水の魔法が使えないか、決着を急いでいる理由がある……?」
 瞬間、ざしゅっと氷の柱が、彼女の太ももを切り裂いた。
「ッ……!?」
 飛んでくる攻撃に警戒していたために、足元の氷が急成長していたことに気が付けなかったのだ。ぎりっとフィーをにらむと、彼女が勝ち誇った笑みを浮かべているように感じられた。傷口から、瘴気がなだれ込んでくる。

 マルティア、リベル、ユリアスと山の一族が回り込んだ先で、ルースの面影を感じる男が、まるで何かに祈りを捧げるように目をつぶり、立ち尽くしていた。足元には氷晶があるにも関わらず、その周囲の氷の大地は融け、茶色い土が顔を出している。気温は低いはずだが、その周りだけ空間がねじ曲がったようであった。
「ッ……」
 リベルはそのあまりの魔力に、思わず胃からこみ上げてくるものを感じた。流れている魔力に粗密があるのか、その不快さには波がある。歪む視界の先にルイスを捉えたまま、彼は遠のきそうな意識を支えるために自らの太ももを一発叩く。
「ルイス!」
 マルティアは大声を挙げる。だが、ルイスは反応しない。
「私は、マテオに行く……私にも、何かが出来るかもしれないから。あなたも――」
 ユリアスは奥歯をぎりりと噛み締め、一歩先に出たマルティアを制した。
「もう、聞こえていないみたいですよ」
 今この場にいて、彼を殺せるのはユリアスしかいない。多くのものがすでに重傷、もしくは魔力枯渇の状態なのだ。彼が覚悟を決めるしかない。
「ルイス王子、ごめんなさい……」
 フィーの護衛に注力していた魔物たちが、ようやくルイスの周りに起きている異変に気付いたのか、猛然と集まってきている。
「おい! 来てるぞ!」
 リベルが声を挙げる。
「ごめんなさい……それでも僕は……大洪水を引き起こしたあなたを許せない……!」
 剣を握り直し、そして――。
「うぉぁああぁッッ!!!」
 背中から、心臓に目掛けて剣を一突きした。深々と刺さった剣。彼の服の上に、赤黒い体液がにじんでいく。
「あ……ああ……!」
 ユリアスの手の内側に伝わる、まだ温かい鼓動。ゆっくりと、ルイスは振り返った。そして、ひどくつまらなさそうな顔でユリアスを一瞥した後、背中に手をまわし、彼の手を握る。
「僕を……リーザに……」
 ルイスの口から、血が溢れる。そしてそのまま、力なく彼の体は地に崩れ落ちた。
 瞬間、強烈な魔力を帯びた風が、せきを切ったように周囲へと溢れ出す。魔力の直撃を受けたユリアスは、吹き飛ばされるように後ろへと弾かれる。
「ぐッ……!」
 リベルは顔をしかめる。強烈な魔力の波は、まだ止むところを知らない。早くしないと体も精神も耐えられなくなる――。爆心で、ユリアスがゆっくりと立ち上がった。
「……下がれ……あとは、俺が魔法剣で……」
 ユリアスは目を見開いたまま、手を掲げた。地表から、パラパラと小石が巻き上がる。
「――」
 彼は何も言わず、まっすぐその手を一行へと差し向ける。弾丸のような速度で飛び散った小石が、彼らの体に深くめり込んだ。
「なッ……!?」
 リベルの体にめり込んだそれが、太ももを貫通した。
「最後の魔力の影響です……気をつけて! もう一発来ますよ!」
 マルティアがリベルをかばうように前に立つ。再び小石が巻き上がった。
「まあ待てって……俺はもうダメだ。瘴気で肉体が限界にきている」
「回復は――」
「無駄だ……痛くないんだよ、傷が」
 リベルは彼女を押しのけて、魔法剣を手に取ったまま、まっすぐユリアスに向かって歩いていく。小石が、砂が、彼の体を襲う。それでも、リベルは足を止めなかった。そして魔法剣の切っ先をユリアスに向けると、体重を込めてぐっと押し込んだ。瞬間、ユリアスの中から瘴気が弾き出され、彼は膝から崩れ落ちた。
「クソ……」
 ガフッ、と血を吐いて、リベルは剣を引き抜く。
「あとは、頼んだぞ、ユリアス……!」
 そして、もう一撃、すでに息絶えて崩れ落ちているルイスに深々と差し込む。キィィ、と耳障りな高音が響いたかと思うと、まばゆい光と共に、彼の体が変形しはじめた。押していた魔力の波が一気に引き戻されるようにルイスの体に集まっていったかと思うと、そこからは、ただ静寂があたり一帯を支配した。
「あとは……俺が……」
 山の一族は倒れているユリアスと、物理攻撃と魔力によって重傷を負ったマルティアの看護、そして第二段階までを終えたルイス魔石化の最終工程を始める。リベルは、既にその熱を氷の大地に吸われ始めていた。やがて、氷晶の上には、リベル1人が取り残されていた。
「我々は、できる最大限のことをした――」
 山の一族の男は、自分たちを慰めるかのようにそう言った。リベルの遺骸の前で黙とうを捧げている。それから少しして、沈黙したままの隊列が、誰からとなく箱船へと向かって歩き出した。

 ルイスが絶命したときに生じた魔力の爆風は、すぐそばで戦闘を行っていたフィーの元にも届いた。
「――!」
 彼女は眼を丸くして振り返る。
「今よっ……!」
 コルネリア・クレメンティリンダ・キューブリックに目配せをして、突撃を仕掛ける。魔物を数体あっさりと切り裂くと、彼らに守られていたフィーの間合いに入り込む。
「……!!」
 フィーが一瞬息を呑んだのが、コルネリアからもはっきりと見て取れた。フィーに迫った彼女は、馬鞭でその顔面を一撃切り裂く。次いでリンダがヘビーメイスでその肩を砕きにかかる。
 しかし、強烈な魔力の影響か、2人ともフルパワーが出ない。フィーは攻撃を受けて傷付いた頬の血を拭い、冷たい目で彼女らを見た。
「どうして……」
 フィーの声には怒気がこもっている。コルネリアは怯むことなく、もう一撃叩き込む。だが、今度はかわされ、瞬間的に遠くへと逃げられた。彼女たちはそれを猛追する。
「そうか……!」
 トゥーニャは脂汗をにじませながら、彼女が近距離と遠距離で魔法を使い分けた理由を理解した。
「危ないよ~っ! それ以上近付いたら……!」
「ここで押し切らず、どうするというのです!」
「フィーは氷の上を自由に動ける……もちろん、遠距離の間合いだけじゃなく、近距離で炎も出せる……瞬間的に近付いて来て攻撃される可能性もある!」
 間合いを詰めれば詰めるほど、火の魔法でまとめて攻撃される危険性が高まる。だから、あえて弱い火の魔法を隠し玉にしているのだ。
「チッ……」
 フィーは舌打ちをして、輪の外にいるトゥーニャに目を向けた。手を差し向けると、彼女の周りの氷がにょきにょきと成長していく。
「またッ……!?」
 トゥーニャは飛びのこうとしたが、脚の傷が、彼女の体を自由にさせない。加えて、雪崩れ込んでくる瘴気が、その判断を鈍らせた。トゥーニャの背後に氷の壁が出現する。
「やかましい奴は嫌いだよ」
 そして彼女が手を思いきり握りつぶしたとき、低い地鳴りが起こった。トゥーニャの何十倍という高さにまで成長した氷壁が崩れた。
「これは……」
 トゥーニャは一か八か、自身の周りに風のシールドを張ってみる。だが、太ももの傷のせいか、いつもの半分の力も出せないことを悟って、天を暗く染めている氷塊を見上げた。
「あとは、みんな、頼んだね~――」
 彼女の最期の言葉が、轟音にかき消されていく。
「あなたの相手はこちらでしてよ!」
 コルネリアが突撃し、馬鞭で首を狙う。フィーの首元は切れたが、首を落とすまでには至らない。フィーは身を翻し、そのまま――。
「ぐッ……!!」
 フィーの手から伸びる鋭い氷が、鮮血で赤く染まっている。
「な……んですの、これ……」
 コルネリアの体は宙に浮き、腹に大きな穴が開いている。
「……!」
 彼女は奥歯を食いしばり、声にならない声で気合を入れた。最期の一撃を、彼女の懐、妙に少しだけ膨らんだところへと加える。
 フィーは驚き飛びのこうとしたが、コルネリアの馬鞭が一瞬早かった。フィーの懐に隠されていた魔力増幅装置が砕け、あたりを覆う瘴気が少しばかり和らいだように感じられた。
 それを確認して、コルネリアは口元でにっと笑うと、力を失った。
「ッ……がぁぁッッ……!!」
 リンダはヘビーメイスを握り直し、突撃した。それに合わせたように、一斉に襲い掛かる。
 思い切りメイスを振るった。コタロウが捉えきれなかった魔獣も襲い来る。顎を砕き、地に崩した。フィーのか細い肢体をめがけて、何度もメイスを振りかぶって、下した。音はない。鼓動もない。痛みも、色もない。フィーの攻撃で肩をやられた。炎によって服の一部も焼け、肌もただれているはずだ。それなのに、リンダは攻撃の手を止められなかった。
「殺すッ……!!」
 横から叩きつけたヘビーメイスが、フィーの脇腹を捉えた。瞬間、時が止まったように、フィーと目が合った。コルネリアが最後に付けた馬鞭の傷に、衝撃が加わって、勢いよく血が噴き出している。その虚ろな目。死を覚悟して死ねなかった者と、死にたくなくて死にゆく者の、対照的な両者の間に流れる、沈黙。リンダは、そのままメイスを振り抜いて、膝をついた。吹き飛ばされたフィーは、地面をゴロゴロと転がされ、やがて止まった。何かを言おうとして、天に手を向けた。
 フィラが、彼女のもとに歩み寄る。
「おね……ちゃ……たすけ、て……」
 フィラは手に握った剣の先を彼女に向けた。
「ふぃ、ら……おね……ちゃ――」
 そして――。

「どうやらルイスは魔石化が完了し、山の一族の手も借りて箱船に移動しているようです」
「そうですか……! それでは、総員退避しましょう!」
 戦闘終了後、アウロラはまだ比較的元気だった隊員の1人を偵察に出し、その報告を受け取った。
「回復薬があるものは使用した上で、箱船へ! これ以上魔物への深入りは不要です!」
 一行は残っている魔物を振り切りながら、急いで箱船へと向かって行った。

第2章 未来へ繋ぐために
 Sスヴェル本部では、本土の防衛について意見が交わされていた。
 海からの魔物の襲来に備えて、簡単なバリケードを設けてはどうかと、セルジオ・ラーゲルレーヴは提案した。
「北と西の魔力塔から避難することになった時、魔物が追いかけて来ないとも限りません。街に入れるわけにはいきませんから、どこか適した場所で」
 と、会議室のテーブルに簡易な地図を広げる。
 ジスレーヌ・メイユールや会議に出席した団員達も、それを覗き込んだ。
「完全に防ぐことは難しいですが、避難誘導のための時間稼ぎや魔物の誘導や防衛補助とかには役立つはずです。団員達だけではなく、協力者を募集しても良いかもしれません」
「そうですね……うーん、どこが適しているでしょうか……」
 セルジオとジスレーヌは、意見を出し合って候補地を絞っていった。
 そして計画がまとまると、さっそく協力者募集と物資調達が行われた。
 数日かけて物資等が本部前に掻き集められ、荷車に積まれて運ばれていくのをジスレーヌは見送る。
 できれば、魔物など来ないでくれと願いながら。

 外に出ていたカーレ・ペロナが戻って来た。
 地の継承者一族の力を得たカーレは、その能力を生かし伝達役を担っていた。
 宮殿および氷の大地に向かったSスヴェル団長代理と、日時を決めて連絡を取り合うことになっているのだ。団長代理もまた地の継承者一族の力を得ていた。
 団長代理はまだ船の上のため、連絡はできない。
 というのも地を通じた伝達は、双方が直接地面に接していないと繋がらないという制限がある。そのためカーレと団長代理と宮殿の皇族との間で行われる伝達には、日時を決めておかなくてはならないのだった。
 現在は、宮殿にいる地の継承者一族の能力を持つ人へ、Sスヴェル本部で行われている活動の進捗状況を報告していた。
「今のところ、特に目立った変化はありませんね。このまま全部うまく運ぶといいのですが」
「そうですね……みんな、無事でいてほしいです」
 カーレに答えるジスレーヌ。
 氷の大地の状況が気になって仕方がなかった。

 北と西の魔力塔へ、Sスヴェル団員と協力者達が雪の中を進んで行く。
 マシュー・ラムズギルが募った体力に自信のある若い衆が、歩ける程度に除雪作業を行っていた。
 マシュー自身は北塔へ続く街道についている。
 途中、ジスレーヌから渡された地図に印を付けられた地点に、簡易な防衛拠点が設けられた。
 ここは道中の休憩所も兼ねている。
 この後に来る街の人達はここで一息吐けるし、塔近辺で魔物が出た時はここで食い止めるつもりだ。
 ある程度除雪が済んだ街道を、橇に改造した馬車に物資を積んだリキュール・ラミルが到着した。
 そして拠点で白湯など温かい物を用意した。
「もう少しすれば、リュネ様が集めてくださったものが届きますよ。スープなども用意できるはずでございます」
「本部への伝令などで人が往復しますからね。目印にもなりましょう」
 白湯で一息吐いたマシューが応じた。
 雪かきで体は暑いくらいだが、温かいものは心を安らかにさせた。
 それからリキュールは留まり、マシュー達は魔力塔へ出立した。
 魔力塔付近は拠点よりは積雪は少ない。海から吹く風のためだ。その代わり、薄い雪の下の地面は凍っている。
 街の人達が魔力塔へ魔力を送る周りで、マシューと若い衆は有事に足を滑らせたりしないよう、地面を覆う氷と格闘し続けた。
 ──この作業が無駄に終わりますように
 マシューはそれだけを願い、黙々とシャベルを動かした。
 拠点のリキュールのもとに、リュネ・モルが追加の物資を積んだ橇馬車を走らせてきた。
「いやぁ、皆さん話せばわかってくれますねぇ」
 白い息を吐きながら、リュネは物資確保の経緯を話した。
「ラミルはこの非常時に際し蔵を開け放ち全財産を投じています。大地が生きるか死ぬかの瀬戸際に、貯め込んでいても仕方がありません。ぜひとも彼に続きスヴェルにご協力をお願いいたしたく」
 リュネはこういった内容で街の有力者に訴えて回ったのだった。
「そろそろ魔力提供の街の人達が橇で運ばれて来ますよ」
「では、体が温まるようなスープでも用意いたしましょう」
 今のところ、塔も拠点も平穏だった。

 東塔に緊張が走った。
 Sスヴェルで借りてきた剣を抜き、マティアス・リングホルムは他の団員と連携して魔物の注意を引き寄せた。
「できれば来てほしくなかったな……おい、鳥ヤロウ、こっちだ!」
 舌打ちし、マティアスは鳥型の魔物の羽に火をつける。
 ギャッと鳴いた魔物が、マティアス目がけて滑空して来た。
 より攻撃的に変異した鉤爪を剣でいなす。
 マティアスが引き付けている間に、団員達が魔法や矢で魔物を仕留めた。
 その間に、ロスティン・マイカンは借りてきたゴーレムを駆使して、魔力提供のために来ていた街の人達の避難誘導を行っていた。
 魔力提供には子供も年寄りもいる。
 ロスティンは逃げ遅れがちなそういった人達を、敷物を敷いた荷車に乗せてゴーレムに引かせた。
 そして、人々を率いて防衛拠点まで街道を走る。
 鳥型の魔物が一匹、追いかけてくる影が見えた。
 護衛に付いて来た団員が迎撃態勢をとり、ロスティンに拠点へ急ぐように言った。
 拠点のほうでも大きなゴーレムを確認していて、待機していた団員達が飛び出して来ている。
 ロスティンは拠点に着くと、ゴーレムを壁役として立たせた。
「敵は一匹だ、大丈夫!」
 青ざめている人達を励まし、ロスティンもゴーレムに並ぶ。
 魔物はだいぶ弱っていたが、人が多いこの拠点のほうが魅力的なのか、ふらふらと飛んで接近してきた。
「しつこいんだよ!」
 ロスティンの水の礫が魔物を貫き、息の根を止めた。

 北塔でも魔物の襲撃があったが、こちらも犠牲者を出すことなく撃退できた。
 中央塔の加護もあり、その後は魔物が襲い来ることはほとんどなかったが、警固は作業の終了時間まで気を抜くことなく行われた。

 Sスヴェル本部の暖炉のある部屋では、知性派の三人が手分けして古書の解読を急いでいた。
 女性の地の継承者達が残した最後の言葉は、連綿と続いてきた帝国皇族の闇の部分だ。
 部屋は暖かいはずなのに、心が寂しくなっていく。
 長い時間根を詰めていたせいか目の疲れを覚えたアルファルドが、目元をギュッと押さえて一息吐いた。
「過去から未来へ託された思いがけっこうあるな。今の状況を打破することができれば、彼女達の思いに応えることになるのかもしれないな」
「そうですわね……未解読ページはまだありますから、その中にヒントが隠されているかもしれません」
 マーガレット・ヘイルシャムが、凝った肩をぐるりと回す。
 これはこれで体力を使う作業だ。体は疲労を訴えている。
 しかし、頭ははっきりしていた。
「世界を治める仕組みが、継承者を贄にするというのは断固間違った、設計ミス」
 クラムジー・カープが憤りのこもった声で断言した。彼は解読作業と並行して新しく記録として残す作業もしていた。
「人間を道具にして憚らぬ者を、人間と呼べますか? 過去にもきっと……」
 そう考えた人がいるはずだと、クラムジーは思っている。
 ルイスを魔石化させる作戦についても、彼は個人的にはそれを嫌った。
「……さ、休憩はおしまいですわ。今は自分にできること、すべきことを、するだけです」
 マーガレットは再び意識を解読のほうに集中させた。
 この困難な状況を切り抜けた先には、きっと明るい未来があると信じて。
「その通りだな。どれ……少なくとも『2000年前』というのなら、同じように何かが起こってそれを乗り越えた方法があったはず」
 アルファルドも紙面を注意深く読み解く作業に戻った。
 それからどれくらいの時間が経ったか。
 ジスレーヌがお茶を運んで来た。
「少し休みませんか」
 部屋の緊張感が緩む。
 その時、古書に触れていたのは誰だったか。
 何かのはずみで表紙がずれた。
 それを直そうとした時、見返しがはがれかかっていることに気づいた。
 元々の見返し紙に別の紙が貼りつけられていたのだ。
 慎重にそれをはがすと、見返し紙には細かな文字がびっしりと綴られていた。
 三人は顔を見合わせると、それを最優先に解読を進めるのだった。
 きっと、ここに求めていたものがある──

第3章 氷の大地決戦2 基地・兵器破壊
 アルザラ1号で再び氷の大地に訪れた団員達は、現地に残っていた団員と合流すると、作戦遂行のために、氷の壁の内部に突入した。
「くっそッ! さっさと消し炭になっとけッ!!」
 変装して周囲にバレないよう作戦に参加しているエンリケ・エストラーダだが、変装の意味があるのか分からないほど激しく暴れまわっている。彼の周囲にいた魔物はことごとく火だるまになり、「グガォァァォ」と情けない悲鳴を上げながら逃げまどっている。
「まったく、有象無象が雁首並べて、見栄えだけは立派でござるな!」
 ジン・ゲッショウの差し向けた刃が魔物の肉体をとらえ、胴と首とを切り離す。あまりの手際のよさに、周囲はただそれを見守ることしかできなかった。
「お主、なかなかやるでござるな……さぞ名のあるものでござろう?」
 ジンは魔物の血で濡れた刃で空を切り、露を払って背中で聞いた。
「……名乗るほどのもんじゃねえよ」
「名のある者こそ、そういうものでござる……さあ、本丸を目指すでござるよ!」
 ははっ、と愉快そうに笑って、さらに奥を目指して先陣を切っていく。
 氷の壁の最奥部には、赤く明滅を繰り返す魔導兵器、そこに取り込まれるように一体化した女性――リーザと、それを眺めて笑っている男の姿があった。
「あっはっはっはぁぁ!! これでようやく……ようやくすべてが終わりますッ!!」
 その奇妙な叫びに、物陰に隠れたキージェ・イングラムはちらりと後方に目をやった。全員が押し黙ったまま、その男の次の言葉を待っているようだった。
「時は来ました……既に崩壊は始まったのです……! 君らも……」
 男の顔がこちらを向く。
「そのようなところに隠れていないで、一緒にこの世界の終焉を見ようではありませんか!」
 彼の眼ははっきりと見開かれている。瞳孔は完全に開き、もはやその顔には狂気すら感じられた。
「ネズミのように隠れまわっても、我々の前では意味はありませんよ……それともそこで、魔物と私に圧殺されたいのですか? あるいは……」
 彼が右手を魔導兵器に添える。部屋の瘴気が一気に濃くなっていく。団員の一部が膝から地に崩れ落ち、それでもまだ精神力で抗っているのか、顔を上げ、額から脂汗をにじませている。
「君ら自身が魔物になるというのも、悪くない選択肢かもしれませんね!」
「……! ジェイ!!」
 リィンフィア・ラストールが小声で引き止めようとしたが、キージェは臆することなく男の前へと歩み出た。
「おやおや……1匹だけですか……? おかしいですねえ」
 彼はキージェの背後を気にするように覗き込んだ。キージェはさらに前へ進み出て、男に触れられるほどまでの距離へと詰める。
「……お前は、まだ人であったとき、今のようなお前になりたいと望んでいたか? 自分の死に他者や世界を巻き込みたいと、そう思っていたのか?」
「……さあ、どうでしょうねえ。ずいぶんと昔のことですから」
 男は鼻で笑う。
「私に言わせれば、君こそおかしな男ですよ……どうして1人で出てきたんですか。もしかして、仲間を裏切りたいと?」
「お前は、憎しみに囚われている。人の感情の、いびつな部分だけが残されてしまっている」
 キージェは剣を抜き、男の首元に差し向けた。
「今すぐ装置を止めろ。ここで投降すれば――」
「装置は止められませんよ。一度動き出したら、あとはもう、ゆっくりと崩壊に向かって動き出すだけ……」
 彼はうっとりとした目でリーザを見た。
「君も、怖いだけなのではありませんか? 大丈夫……我々とともに行きましょう」
 瘴気が一層濃くなる。キージェの視界が歪む。脚に力が入らなくなり、焦点が合わなくなって――。
「これ以上は待てませんっ!!」
 奥で抑えられていたリィンフィアが飛び出して、男とキージェ、魔導兵器の間に強烈な風を送る。彼女のこの動きを皮切りに、団員たちは一斉に部屋の中へと雪崩れ込んでいく。同時に、小部屋に隠れていた魔物が扉を蹴破って乱入し、一気に激しい戦闘が始まった。リィンフィアは弾き飛ばしたキージェを部屋の隅へと連れていき、ひとまず手持ちの体力回復薬を与える。
「なんであんな無謀なことを……」
 彼女の膝の上でキージェはうっすら目を開けて、少しだけ微笑んだ。だが、すぐにまじめな顔に戻る。
「今すぐ魔導兵器を叩けば、被害は最小限に食い止められるかもしれない……俺にかまわず、装置を……」
「でも……!」
「大丈夫……ほら」
 キージェは目をぎゅっとつぶりながら、力なく立ち上がる。だが、すぐによろけて後ろにあった台に手を付いた。
「あ、気を付けて……」
「な、大丈夫だろ? 頼むから」
 キージェの目は、戦闘の中心を見据え、再び彼女を見た。リィンフィアはまっすぐ彼を見つめ返し、うなずいた。
 室内になだれ込んできた魔物は、一気に魔導装置を守るように配備された。それだけに留まらず、手の空いたものは完全体のハーフを守るように襲い掛かってきた。
「させないッ!!」
 タチヤナ・アイヒマンは間に割って入り斬撃で押し返すと、よろけて天を仰いだ魔物を袈裟懸けに斬り付けた。
「ぐががぁァッッ……!」
 元々この魔物も人間だったのだろう。背丈はタチヤナよりわずかに高いほどで、顔も、腕も、脚も、どれも人間のものと認識できる。魔物がゆっくりタチヤナに向き合おうとしたのを見て、彼女はもう一撃、今度は横一文字に斬り込んだ。真っ二つに断ち切られた胴は瞬間宙に浮いて、それから重力に従って崩れ落ちる。タチヤナの目は、すでに次の魔物へと向いていた。それでも彼女の心の内は、このあまりに素早い攻勢とは真逆のものだった。
 どうか、せめて安らかに……!
 その一振りに、祈りを込める。けれど、非情でなければならないのだ。そうでなければ、こちらがやられてしまう。
 タチヤナの背後を取った一部の魔物が、太い腕で彼女の頭を狙っていた。前方の敵に気取られて気付くのが遅れたタチヤナは、身を屈めて目をぎゅっと瞑った。
「危ねえぞ!」
 エンリケの炎撃が魔物を一瞬で黒焦げにする。
「しっかり全方向集中しろ!」
「了解……! ありがとう」
 タチヤナの言葉に、エンリケは目を魔物に向けたまま別の魔物に攻撃を仕掛けていく。
「こっちも行くでござるよ!」
 ジンは歪む視界を何とか立て直しながら、必死に魔物と戦い続けている。強烈な魔力だが、魔法防具のおかげもあってか、集中していれば何とか意識を保っていることができる。
「武士道とは死ぬことと見つけたり……なーんてことは、言わぬでござるよ」
 ステップインして魔物の首を落とし、いよいよ彼の手はハーフを守ろうとしているものたちへと向かおうとしていた。
「この首が落ちるまでに、いくつの首を落とせるでござろうなぁ」
 その目には、覚悟が満ち満ちていた。
「減らしても減らしてもまだまだ出てきやがるぜぇ……そこが原因かぁ!?」
 魔物が出入りしている奥の通路を見つけたエンリケは、炎で通路をクリアリングして強行突破した。
「これくらいなら、行けるよな……!」
 彼が見上げたのは、老朽化が進んだ建物の梁だった。どうやらそれは地下要塞の通路部を支えている主要な一本に見える。
「これで……魔物は減るだろッ……!」
 力を溜めて思い切り炎弾を集めて作り上げた火球を叩き込むと、意外にもあっけんなく梁はへし折れ、通路が崩れていく。
「ッとぉ……!!」
 間一髪、通路から内側に戻ったエンリケは満足げに一瞬だけ笑みを浮かべると、再び魔物と対峙した。

 ハーフの男を取り囲んだアレクセイ・アイヒマンは、事前に伝えていた作戦通り手足を狙って炎弾を放っていた。だが、男はその炎を水弾で的確に打ち消す。同時に火と水が消滅していることを考えると、少なくともアレクセイがやや加減して撃っている魔法と威力が拮抗していると言える。
「本気でそれですか?」
 男は余裕そうな笑みを浮かべている。あえて同じ程度の魔法をぶつけてこちらを試しているようだ。
「どうでしょうか」
 アレクセイは男から目をそらすことなく注視を続けている。フルパワーで最初から行けば、無意味な乱戦を巻き起こす危険性がある。できれば遠近織り交ぜた攻勢で相手の行動力を落とし、一気に勝負を決したい。アレクセイはもう一度、今度は威力ではなく数を増やして攻撃を仕掛けていく。だが、これも全弾打ち消されてしまった。
「こちらも行きます!」
 ルティア・ダズンフラワーの魔法が襲う。男の首を狙った空気の刃を、彼は首を少しだけ傾けて避ける。髪が千切れ、空に舞った。
 この室内はどこにも水がない。そのおかげで、彼は水を使った高速移動をしてこない……その代わり、室内に並べられた水槽から水を誘導して使うことができる。油断はならない。その思考を与えないように気を付けなければ……。彼女の特意な剣撃で攻めるには、まだ彼の能力が未知すぎる。
 さらに風の魔法を叩き込んだのは、リィンフィアだった。彼女はその射線にハーフと魔導装置のどちらをも捉えていた。精密機械は振動が弱点だと聞いたことがある……つまり、強烈な振動を与えれば、魔導兵器そのものの動きが止まる可能性があると考えたのだ。思い切り下から上へ突き上げるような風を起こす。
「ッ!!」
 その攻撃に気付いたのか、男はリィンフィアの喉元に向けて氷の弾丸を放つ。彼女が怯えて目をつぶった瞬間、キージェが弾丸とリィンフィアの間に飛び込んできた。
「ジェイ……!」
「っだッ……」
 肩口に刺さり込んだ氷は、体温で簡単に溶け、深い傷口だけが残っている。
「大丈夫!?」
「俺に構うな! まだ来るぞ!」
 リィンフィアは顔を上げる。先ほど彼女が放った攻撃は、確かに狙った位置にに命中していた。しかし、男は魔物を盾にして無傷。さらに水の壁を魔導兵器の周りに配備したことで、風の影響を最小限に抑えていたのだ。
「……そんな……!」
 男はリィンフィアの攻撃でズタズタになり、そのまま息絶えた魔物を床に捨てる。
「なるほど……君らを『愚かな敗者』と見くびるのには、少々強すぎるようですね」
「貴様のその顔が気に食わないッ!!」
 ヴォルク・ガムザトハノフは風を味方に付けて男の懐に飛び込むと、空気を圧縮した一撃で男の顔面を殴りつけた。彼の顔を、氷の壁が守る。
「がッ……あああぁぁぁ!!!」
 氷にひびが入り、拮抗した力が破られる。砕け散った氷に、ヴォルクの血がにじんでいる。男の顔にめり込んだヴォルクの拳が、彼を変形させて地面に叩き込む。
「今です!」
 ルティアは飛び込み、彼の体に斬りかかった……が……。
「えっ……!?」
 崩れ落ちたと思われていた男は、足元をがっちり床に固定したまま立ち尽くしていた。
「近接戦も出来ないと、戦闘では不利になりますからねぇ」
 彼は鼻から血を垂らしながら、にぃっと笑った。ルティアの剣は男の左腕を捉えたが、その代わり、肩に一撃貰って顔をしかめた。体に穴の開くような斬撃ではないものの、骨の芯を打ち砕くような激しい痛みに、ルティアは飛び退くしかなかった。
 ルティアとほぼ同時に飛び込んだアレクセイは、男の首を狙って斬撃を放っていた。だが、こちらはさきほどヴォルクに行ったのと同じように、氷の壁が攻撃を防いでいる。意志に熱を込めて炎で壁を溶かそうとする。しかし、同時に彼の腹を氷の刃が狙って伸びたのを察知し、アレクセイは氷を叩き落として一歩引いた。
 ヴォルクは顔をしかめ、立ち上がる。
「ぐッ……ぎぎぎィ……!」
 傷口から容赦なく侵入してくる瘴気……いやそれではない、体内から湧き上がり、膨れていく負の感情。抗う意志だけで、それを必死に跳ね除け、男をにらみつけた。
「我は、魔狼なり……我が咆哮に敵う者無し……」
 その姿に、巨大な影が落ちる。
「我が一撃は、無敵なり!!」
 指を差し向けると、その先端から強烈な圧縮空気弾が、レーザーのごとく発射される。
「なにッ……!?」
 ルティアとアレクセイの攻撃をインファイトで受けきるために、あえて地に足を固定していた男は、その想像もしていなかった攻撃から逃れられない。とっさに氷と土を混ぜた堅牢な壁を作ったが、ヴォルクの『霊悪(レイア)』の破壊力が上回った。放たれた鋭い爪撃のような10本の傷が、男を切り裂き、そのまま地面に崩した。
「愚かしいほど弱いのは、貴様だ……!」
 ヴォルクは額の汗を拭うと、吐き捨てるように言った。

 ウィリアムは魔導兵器の周囲にいる魔物を一通り薙いだ後、密かにインプラントを利用して魔力を増幅させていた。
「……少し、いいか」
 そう言って、一緒に行動していたナイト・ゲイルを遠ざけると、魔導兵器の中に取り込まれているリーザの周囲に火をおこし、目をつぶった。火の一族の能力は、炎を操ることだけではない。その中での移動を可能にし、直接触れている相手を熱から守ることもできる。それだけではなく、火を介して、火の見える範囲、火の届く範囲にいる相手と会話することもできるのだ。
「聞こえるか……」
 ウィリアムは意識を集中する。
「……レイザの仇は、俺だ。お前は拒絶された訳じゃない。だが、今の世界では、人として生きることはできない。お前も、アーリーも」
 反応はない。彼は諦めない。
「本当は、普通の幸せが欲しい……そうだろ? それなら、別の賭けはどうだ。皆が人として生きる世界を――俺は全てを賭けてもいい。どうだ?」
 ゆっくりと、ウィリアムに火が迫り、そして彼を呑み込んでいった。
「おい……おいおいおいっ!! お前燃えてるぞ!!」
 そばで見ていたナイト・ゲイルは、ウィリアムの身体が徐々に燃え始めているのに気が付いた。増幅しているとはいえ、元々そこまでの魔力を持っているわけではない。魔力が尽きて、炎に耐えられなくなってしまったのだ。
「おい! 聞こえてんのか! くそっ……!!」
 ナイトは顔をしかめ、剣をしっかりと握り込むと、「許せよ!」と叫んだ。脚に力を籠め、飛び上がって炎の壁を超えると、そのまま女の体ごと装置を叩き斬る。魔導装置は、これほどの大事件が起きているとはとても思えないほどあっけなく壊れた。火花と煙を上げて沈黙し、リーザの体は真っ二つになった。しかし、空間を覆っていた魔力は弱まらない。一団が突入した入り口から冷たい風が吹きつけ、装置の周りを覆っていた炎がようやく消え始めたとき、外から氷の崩れる音が響いてきた。同時に、強烈な揺れが大地を襲う。
「マズい……! 逃げるぞ!!」
 団長代理の怒号にも似た声が響き渡る。団員たちがシェルターの外に飛び出すと、そこには強い魔力の渦が出来ていた。氷の大地は崩れ、露出した地面には幾つものひび割れが見える。
「船まで走れッ!! これ以上ここに留まると命にかかわるぞ!!」
 その声に合わせるように、団員たちはアルザラ1号に向かって走り始めた。

第4章 エピローグ
 強い魔力が渦巻き崩壊していく大地を、ナイトとウィリアムは歩いていた。
 共に魔法エネルギーにより深いダメージを負っており、おぼつかない足取りだった。
「……っ」
 足を滑らせて倒れかかるナイトの腕を、咄嗟にウィリアムが掴む。
「かなり苦しそうだが、大丈夫か?」
「悪い……なんか、力を奪われたみたいだ」
 ナイトは、火の一族の力を失っていた。
「出かけ前に、チェリアの新技を受けたんだ。多分……分離」
 能力の高まりと共に、チェリアが出来るようになったこと。それは融合したものを、分離すること、のようだった。
「皆を守るってのはさ、お前の意思で、レイザの意思じゃなかったからな。アイツはアイツの守りたいものの中に、還っていったんじゃないか」
 レイザが守りたかった存在は、マテオ・テーペの生徒達、友、そして火の一族……。
「兵器の中にいたアイツ、何て、言ってた?」
 苦しげに息をつきながら、ナイトがウィリアムに尋ねる。
「……言葉じゃなくて、届いたのは思念だったが……アイツ、レイザの姉には人として生きたいって気持ちがなかった」
 彼女には、火の男性の継承者であったレイザや、一族のアーリーと違って人として、大切にされたことがなく、人を大切に想ったこともなかった。
 人間として扱われず、人を護るために在るそういう生き物なのだと、ただ、道具として、エネルギー源としてだけ、利用されてきた。赤子の時からずっと。
 そんな彼女を不憫に思ったのか、水の継承者の男性であるルイスが彼女に、教えた。
 火の一族の歴史を。彼女に双子の弟がいること、母親がどうなったのか。利用するために作られた(生まさせられた)妹、フィーのこと。
 そして怒りと絶望に震える彼女に、彼は希望を示した。
 世界を支配する人を滅ぼし、自分達が正常に生きれる人のいない世界を創ろうと。
 神の遣い(継承者)と精霊だけの世界だ。
 彼女はその世界にも魅力を感じなかった。ただ、自分に真実を教えてくれた彼を信じてもいいと思った。
 そして二人はハーフと共に、世界を壊した。
「まぁ……お前(人間)の勝ちだ。……俺は、間に合わなかった」
 人は、人の生きる世界のために、彼女が生きたいと思う希望を次々に取り去っていった。
 彼女と一つになるはずだったレイザの肉体を自分達のために使い。
 妹であった降霊の力を持つフィーを倒して、彼女に希望を与えようとしたルイスの肉体を自分達のために使い。
 そして、リッシュが生きる道もウィリアム到着前に閉ざされた。分離の能力を持つチェリアももうここにいない。 
「いや、もっと早かったとしても、俺じゃダメだったんだろうな」
 ウィリアムには他に愛する人がいて、裏切れない友もいるから。
 結局殺すことしかできなかった。
 救ってあげられなかったことに、心が痛む。
「けど、アイツの中にリッシュの記憶が残ってるのなら――」
 これから行われるという作戦が、少しでも癒しに、家族の愛を伝えるものになればいい。
 そう願うことしか、できなかった。しかし……。

 アルザラ1号に戻った団長代理は代表の一人のレイニ・ルワールと共に、甲板に運び込まれた魔法具のもとに向かった。
「基地の破壊は成功した。意思能力のある者ももういない。あとは暴走する魔力を、この魔法具で鎮めれば」
 これ以上の氷の融解は防げる。
 それは魔力の中に、一つの確固たる意思――精神を打ち込む魔法具。
 アトラ島と帝国が共同で開発した希望の魔法具だった。
 暴走の中心となっている魔力の中に、火の継承者と融合したリッシュの心があるはず。
 そのため、この魔法具で打ち込む一つの意思として、レイニが選ばれた。
 リッシュと心を一つにして、魔力を制御するために。
「発動後すぐにここを離れるように操縦士には伝えてあるわ。それじゃ、頑張ってくるわね!」
 気力を振り絞ってレイニは笑みを浮かべて、皆にそう言った。
 帝国騎士が魔法具の作動レバーを下ろした、その瞬間だった。
「これは私が使う!」
 突如、一つの陰がレイニを突き飛ばした。
「ま、待てッ!」
 制止の声が響いたが既に遅い。
 発動された力は、その者――バルバロの身体を貫き、彼女の精神が氷の大地へと打ち込まれた。
 反動でバルバロの身体は、船の外へと落ちる。
「歪んだ魔力に囚われたか……いや、あいつは、指名手配犯の女だ!」
「もう1発打てるか?」
「帝国に戻らなければチャージは無理だ」
 場は混乱に陥り、レイニは茫然と座り込んだ。
「くっ……海が荒れれば、戻れなくなる。陛下に任せるしか、ないだろう……。宮殿に報告をする。その後即出航だ」
 団長代理は苦渋の表情で言い、報告のために一旦船を降りた。
 レイニはふらふらと立ち上がると、茫然とした表情のまま、氷の大地を見ていた。
 そして団長代理が戻ってすぐ、アルザラ1号は帝国に向かい出航した。

 氷の壁があった場所の内部を、バルバロの精神は漂っていた。
 共に打ちこまれたエネルギーは楔とはならず、荒れる魔力の一部となってしまった。
(世界とかどうでもいい。『お前が』世界を滅ぼしたいなら、それでもいい)
 彼女はリッシュを探していた。リッシュに呼びかけていた。
(だけどそれは、お前を笑顔にはしない。お前は、笑ってた方がいい。そのためなら、私の何だってくれてやる。お前の中で悪さする奴は私が引き受ける)
 バルバロは知らなかった。
(だからお前は、母ちゃんところへ帰れ)
 彼女が探している人物は何かに憑かれていたわけではない。
 その人物の意思は随分前に別のものと一つになってしまい、もう存在しないのだということを。
 そして少し前に、肉体の命も断たれてしまっていた。


 帝国、本部では――。
 翻訳文を書きだした紙を前に、携わった者達は硬い表情で沈黙していた。
 燃える島の遺跡で発見された古書の、見返し紙で隠されていた部分の文章である。

 お祖母様から聞いた話を、ここに記しておきます。
 人はもともと、魔力を持たない存在でした。
 人と精霊は互いの領域を侵さず、人は群れをなし、精霊は自然と共に生きていました。
 ですが、人は力を欲し、精霊の領域を侵すようになりました。
 やがて人と精霊のハーフ――魔力を持った人間が世界に誕生します。
 邪な感情を持つその生命は、自然を破壊し魔力を穢していきます。
 神は世界を浄化し、命を正すために、人の身体を持つ精霊を世に使わしました。
 それが私達、痣を持つ者だそうです。
 2000年に一度、世界の魔力に限界が訪れ、滅びの危機を迎えます。
 4つの属性の一族は、そのたびに話しあい、危機を回避しようとするのですが、結局人は滅び、歴史は繰り返されているそうです。
 今から約100年前の滅びの後、地の一族は世界の統一と、王による統制を願いました。
 しかし、魔力を統べる王となった火の王はそれを望みませんでした。
 風と火の一族は、魔力を集め定期的に安定させるために、吹き溜まりを作りました。そして一族だけでその側に移り住み、他の一族との交流を断つことにしたようです。
 私達地と水は魔力を持った人間たちと共に、生きる道を選びました。
 地は人間との共存のために、世界の統一を求め続けていくでしょう。
 世界が統一されて、精霊と人間が心を一つにして、魔力を鎮めることができれば、魔力は荒れず、それにより命を落とすものもいなくなるのかもしれません。
 でもそれは、人が人である以上、不可能だと私は思います。意見が一致することなんて、絶対ない。
 だから繰り返す歴史を止めるためには、人と神の一族は交わってはいけない。火と風の判断は正しいと思います。
 そして、一族同士だけが交流を持ち、吹き溜まりの魔力を鎮めていければ、2000年に1度の滅びを、回避できるのではないでしょうか?
 いいえ、それが無理なこともわかっています。だから、歴史は繰り返されている。
 人が精霊の力を欲するから。求められた精霊が人を愛してしまうから。


「継承者を贄にするシステムは……人に知らせず、人と世界を護るために継承者たちが作ったのですね」
 クラムジーがため息を漏らし、アルファドが皮肉気に言う。
「そしてまた、歴史は繰り返し、2000年後に同じ事が起きるということか」
「新たな王となられる皇帝陛下が、どのような決断をされるかで、未来が決まるのでしょう」
 せめてこれ以上、命が失われることがないように、と、マーガレットは願う。

 

*   *   *


 しばらくして、氷の大地にいる団長代理からSスヴェル本部のカーレ・ペロナへ連絡が届いた。
 カーレはそれを素早く書き取ると、ジスレーヌのもとへ走った。
 メモを読むジスレーヌへ、カーレは口頭でも説明する。
「報告ありがとうございます。みんなを集めて知らせましょう」
 すぐに会議室に本部にいる団員達が集められた。
 団員達も団長代理からの連絡だと予想していたのか、緊張した顔をしている。
「団長代理から、連絡が届きました。まず、ルイスは魔石化されました。そして、大洪水を発生させた魔導兵器ですが、こちらは再び起動してしまいました」
「あ、あの魔法具は!?」
 焦った顔で団員が声を上げる。
 暴走した魔力を静めるために開発された魔法具が、レイニ・ルワールに預けられていたはずだ。
 それは使われなかったのか。それとも、期待した効果が得られなかったのか。
「……Sスヴェル団員の中に、指名手配犯が紛れ込んでいました。その者に使われてしまったとのことです」
「そんな! それじゃ、またあの洪水が来るんですか」
「氷の大地の氷はすべて溶けてしまうと思われますが、大洪水や津波のような現象は帝国では起こらないだろうと考えられています。というのも、水の魔力を静める儀式は正常に行われたからです。ただし、溶けだした分の水により水位の上昇や、豪雨や豪雪が予測されています。私達は、それらに備えなくてはなりません」
「くそっ……。その指名手配犯は?」
「死亡したそうです」
 団員達は、やり場のない怒りに歯噛みした。
「今日明日で急激な変化が起こることはないでしょう。災害に備え、長期的な計画を立てましょう。また何か連絡が入ったらお知らせします。報告は以上です」
 団員達が解散した会議室で、ジスレーヌはマテオ・テーペのことを思った。
 最難関と思われたルイスの魔石化が成功したのは大きな成果だった。
 魔石はマテオ・テーペを救ってくれるだろう。
 これで、皇帝以外に王になれる者はいない。
 しかし、魔導兵器の件は余計だった。
 水位がどれくらい上昇するかわからないが、リモス島がどうなるか心配だ。あの島が沈んでしまっては元も子もない。
(……このこと、ブレイブ号が帰って来たらシャナ達にも知らせませんと)
 アトラ・ハシス島にもどんな影響が出るかわからない。
 それどころか、航海そのものにも影響があるかもしれない。
(すべての魔力を統べる王とは……世界の安定を願う王ならば、暴走した魔力を静めてくれるはず。それで水位がすぐに戻ることはないでしょうけれど、さらに悪い事態にもならないでしょう。自国の民を愛する皇帝なら、たとえ罪人でも見殺しにはしない……と思いたいです)
 たとえ流刑囚であっても、大切な自分の民だと思うなら、彼らがいるリモス島を見捨てたりはしないはずだ。
(それに、ハーフを生み世界に滅びを呼び込んだのも、魔導兵器の影響を封じられなかったのも、帝国民によるもの……)
 できれば皇帝と直接話をする機会がほしいが、Gスヴェル本部襲撃時の傷がまだ癒えていないそうだから、あまり期待は持てそうにない。
 リモス村に戻ったら、せめて土塁を積むなどの処置はしておいたほうがいいだろう。

 一方宮廷では、誘拐されていた娘を取り戻したマリオ・サマランチ――皇帝が、親子そろって宮殿に移されていた。
 マリオはまだ安静が必要な状態だが、意識ははっきりしている。
 そして彼は、すべての魔力を統べる王となるために儀式に臨む意志を、重鎮達に示した。
 もう少し回復したら、儀式は行われるだろう。

 ところで、リモス島の行く末を心配するジスレーヌの思いは、マリオの見舞いに訪れたルース・ツィーグラーによって果たされていた。
 彼女はマリオに囁いた。
「水の魔力を暴走させたのは、旧王国の王子だったかもしれません。けれど、その後の世界を混乱させたのは、帝国の皇族の血を引くハーフであることはご存知のはずです。ミサナ・スヴェルダム……彼女達が引き起こした混乱を静めるのに、マテオの民は危険を承知で力を貸しました。すべての魔力を統べる王になるなら、その辺りを考慮してほしいですね。いいえ、あなたはそうしなければなりません……」
 ルースは、箱船が本来何のために作られたのか、旧公国の公王が魔導兵器実験には反対だったことを伝えた。
 そして最後に。
「あなたにしか頼れなくて、すべてを背負わせてしまってごめんなさい。こんな世界の仕組み、壊れてしまえばいいのに。そうしたら、ベルもあなたも、ただの人間でいられたのに」
 と、自分の無力さを悔しがった。
 マリオは穏やかな顔で微笑んだ。


●目標達成度
カナロ・ペレアの戦いに勝利する【成功】
※戦いには勝利しましたが、エンディングの作戦が失敗に終わっているため、
大成功には至っておりません。

●個別連絡
コルネリア・クレメンティさん
トゥーニャ・ルムナさん
本作戦で命を落としました。
身体は氷の大地に残っています。
共通の最終回では精神体での行動となります。この場に在る精神体でしか会えないNPCと接触が可能です。
詳しくは、オープニング参加案内をお待ちください。

リベル・オウスさん
本作戦で命を落としました。
身体の場所については、リモスのご案内をご確認ください。
共通の最終回では精神体での行動となります。この場に在る精神体でしか会えないNPC(真ルース等)と接触が可能です。
詳しくは、オープニング参加案内をお待ちください。

バルバロさん
精神と身体が離れた状態にあり、共に氷の大地にあります。
身体については重傷であり、介抱する方がいない場合、死亡に至ります。
共通の最終回では精神体での行動となります。この場に在る精神体でしか会えないNPCと接触が可能です。
ただ、本文で描かれていますようにリッシュ(アール)のみの精神は存在しません。
詳しくは、オープニング参加案内をお待ちください。

タウラス・ルワールさん
記載の行動を決行した場合、かなりの重罪になります。ご覚悟の上の行動とは思えませんでしたので、描写を控えさせていただきました。アクションに書かれていた言動につきまして、行っていないとしていただくことをお勧めします。
幇助までしていたとする場合、様々な関係修復は難しいと思われます。ご留意の上、共通の最終回の居場所、ご行動をご検討ください。

 

ナイト・ゲイルさん

火の継承者の一族の力(レイザが残した力)を失いました。

●人物の居場所につきまして
氷の大地にいた団員NPC(名前なし含む)は全てアルザラ1号に乗り、帝国へ向かいました。
個別連絡にお名前のないPCにつきましては、アルザラ1号に乗ったとなりますが、氷の大地に残ったとしていただいても構いません。
ただ、基地は破壊され、氷の上にあったベースキャンプも崩壊していますため、迎えが来るまでの生存はかなり厳しいです。

●スタッフより
【川岸満里亜】
今回は構成と、エピローグの前半部分(***より上)を担当させていただきました。

最終回、戦闘は無事に成功に至り、まさかのルイス魔石化→マテオに持っていくという展開になりました。……いえ、本気で無理だと思っていました。
魔石でマテオを維持するというのは、その場しのぎしかならないのですが、とりあえずマテオが沈んでしまうという展開は回避となりました。
強い意思や覚悟で挑んでくださった方、必死覚悟で挑み、命を落としてしまった方、強いアクションをありがとうございました。

基地の方の作戦につきましては、皆様の協力により死者が出ることなく成功に至ったことを嬉しく思います。
悲しい展開になってしまった部分もあるのですが、本編終了後に行われるIFシナリオで「燃える島で作られた魔石が、アールの手に渡っていたら?」という、楽しいシナリオを行いたいと思っていますので、今回の結末が受け入れられない方は、そちらが正しい歴史だと記憶に残すと良いと思います!

ワールドシナリオ前編、後編とお付き合いいただき、誠にありがとうございました。
カナロ・ペレアのエンディングシナリオである共通の最終回でも皆様にお会い出来ましたら幸いです。

【冷泉みのり】
こんにちは、冷泉みのりです。
ご参加してくださった皆様に感謝を。
第2章と第4章半分くらいを担当しました。
本土の備えも解読も、うまく進められたと思います。お疲れ様でした!

氷の大地で戦死してしまった方でゾーンシナリオのリモスのほうにご参加の方は、この後公開されるリモスにもご案内がありますので、そちらもご覧になってください。

IFシナリオは冷泉のほうでも予定があります。
IFでなくてもいいような気もしますが、今のところはIFです。
「闇落ちしたベルティルデの魂を救いにいこう!」といった感じのものを考えています。

それでは、共通の最終回でもお会いできるよう、心よりお待ちしています。

【東谷駿吾】
 ご参加いただきありがとうございました。今回は、第1章と第3章を担当いたしました。かなりの死闘となり、実際に行動不能に陥ってしまった方も……心苦しいですが、その健闘のおかげもあって、本当に最悪の事態だけは避けられたのではないかと思います。ご協力ありがとうございました!
 カナロ・ペレアのメインシナリオに携われたことに感謝いたします。まだイベントシナリオなどでお世話になるかもしれませんが、その時はどうぞよろしくお願いします!