ワールドシナリオ後編

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『哀哭のカナロ・ペレア』第2回

 

第1章 氷の大地哨戒網
 極寒の氷の大地。うっすらと降り積もった粉雪が、風に舞って風紋を作り上げている。前回構築したベースキャンプ周辺は、風の魔術師たちによってやや風が抑えられているものの、少し離れたところは嵐のように猛烈な風が吹き荒れている。空は晴れているが、舞い上がった雪のせいで、視界はそこまで良くはない。この地で多くの敵を殲滅し、儀式を成功させなくては……。そして同時に、我々には連れて帰りたい、大切な人がいる。
 アウロラ・メルクリアスは、ベースキャンプに残っていった帝国騎士に話しかけていた。
「このあたりの地形について、少し教えてほしいんだけど」
「調査してみた結果、ここは他よりも少し高台にある。海からも近く、攻撃防御ともに、要塞としては悪くない位置と言えるだろう。だが、港から多少距離があるし、とんでもない数の軍勢に囲まれた場合は……包囲殲滅の大損害を被る危険性もある。何より、この拠点を失うわけにはいかない」
「鋭い山が背後になってるとか、敵の来る方向が予想できそうな場所はないかな?」
「……ここだ」
 騎士は地図を広げ、指を差す。ベースキャンプから少し離れたところにある丘陵地だが、さらにその奥には滝がある。
「この山から下りてこようとすれば、かなりの高さをジャンプしなくてはならないことになる……並みの魔物には無理だろう」
 アウロラは、ありがとう、と言って微笑んだ。だが、騎士たちの表情は重く硬い。彼女は戦闘のために集まった者たちを先導して、その地点へ視察に行った。
 箱船の船室から雪原の上にそりを走らせて、木材を運び出していく。コタロウ・サンフィールドはベースキャンプに突貫の櫓を作るつもりでいた。ベースキャンプの位置はそれなりに見通しが利く。地上から数メートル高い地点からであれば、地吹雪の影響もほとんど受けず、遠くの敵が見渡せるかもしれない。魔物をおびき寄せる地点までは距離があるが、ここからであれば狼煙や信号灯が有効に使えるだろう。今は急ぎで作り上げるが、しっかり強化すれば今後にも活かせるものを作りたい。
「問題は、ここが狙われないかだけど」
「こっちは準備できてるわよ」
 この寒い中、額にうっすらと汗を浮かべたフィラ・タイラーが、白い息を吐きながらベースキャンプへと戻ってきた。
「雪と氷だからと思ってたけど、塹壕を作るのも楽じゃないわね」
 彼女に協力した騎士たちも、天を仰いで白い息を吐いている。
「ベースキャンプと戦闘目標地点の間は警戒があるからいいとして、その反対側、こっちに深めの穴を用意したわ。塹壕としても使えるし、落とし穴的なトラップとしても使える」
 風のコントロールがあれば、塹壕地帯だけ地吹雪を止めることも、また強化することもできる。
「さて、今度はその櫓作りに協力すればいい?」
 着々と、ベースキャンプの防御が固められていく。

 魔物討伐の懸念点の一つである、謎の氷の壁。今回の戦闘地点からは少し離れているが、ベースキャンプには近く、今後のことも考えると事前に調査を行っておくのが無難だと考えられていた。
「……息苦しいな」
 脂汗をにじませて、リベル・オウスはつぶやいた。
「そうか?」
 女が首を傾げた。彼女は変装し、偽名を使って隊に同行しているバルバロだ。
 本来バルバロの魔力であればこの瘴気は危険なほどの濃度になっているはずだが、使用した『魔石の欠片』の効果によって事なきを得ている。魔力が十分にあるはずのマルティア・ランツユリアス・ローレンも、うっすらと青冷めて具合が悪そうに見える。
 ユリアスが深く息を吐いて、気を保つ。
「頭が痛いような……はっきりとではないですが」
「歪んだ魔力の影響なのでしょうか……」
 マルティアは、リベルに調合してもらった気付け薬兼栄養ドリンクの存在を確かめて、リベルの顔を見た。
「大丈夫ですか?」
「ああ……」
 それだけつぶやいたが、リベルは明らかに苦しそうで、少しでも油断すれば、その歩みが止まってしまいそうなほどである。
「無理せず、少し休んだほうがいいんじゃないか?」
「長居するほうが危険だ……さっさと終わらせよう」
 リベルは顔をしかめてさらに前へと進み出た。
 氷の壁に近付くにつれて、リベルの顔はさらに苦痛に歪む。
「先生、これ……」
 マルティアは鏡と栄養ドリンクを渡す。
「……すまん……ンぐッ!? 苦ッ!」
 自分で激苦に調合しておいたことをすっかり忘れて、リベルは頭の中に火花が走ったような衝撃に襲われた。
「大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫……過去の自分に感謝だ」
 リベルは額の汗を拭う。
「それ、かなり強烈だから、危険かもしれないと思ったら早めに飲んだほうがいい……正気を失いかけてからだったら、吐き戻すかもしれないぞ。俺はここにいるから、少しでも危ないと思ったら下がってこい」
 彼は笑って栄養ドリンクの一部を預かると、氷の壁から一歩身を引いた。これ以上近付くことは、危険だと判断したのだ。
「……この壁……特に洞窟の入り口があるわけではないようですね……」
 ユリアスが壁に手を当ててみる。だが、特に変わったところはないようだ。壁伝いに歩いていく。
 バルバロは氷の大地に手を当て、地脈の様子を探っている。だが、氷の層はかなり厚いらしく、その下にある地面に影響を与えることは難しそうだ。それよりも先に手が冷たくておかしなことになってしまう。
「仕方ねえ……」
 彼女は壁の上を見上げる。
「登るか」
 カバンからアイスバイルを取り出し、ニヤッと笑った。だが――。
「え……? かてえ……刺さらないぞ……」
 氷塊にアイスバイルを突き立てるのにはそれなりにコツがいる。一見簡単そうに見えるが、それで数十メートルはあろうかという氷の壁のてっぺんまで登るのは無理だろう。自分の背ほどの高さまで何とか登ったバルバロだが、これ以上は先に体力が尽きると判断して、地面に降りてくる。
「……ったく、どうしろってんだよ……」
 バルバロの目測では、高さ20メートル、厚みはアイスバイルを突き立てた感覚では、1メートルよりももっと分厚い可能性が高い。
「……あ、見てください、ここ……」
 ユリアスが、氷の壁の一部を指さした。そこは、ほかの場所と違って雪が付着しておらず、真新しい透明の氷になっているようである。
「……ここだけ、なんだかおかしくないですか?」
「そうだな……」
 バルバロとマルティアも中を覗き込む。
「もしかしたら、ここの氷を水にしたり氷に戻したりしながら出入りしているのかしら……」
「いよいよ、何か隠してるに違いねえなこりゃ」
「……あれ、奥に何か……人!?」
 マルティアの目に、人間のような……あるいは人間の形をした魔物のようなものの姿が見えた。その生物はこちらの様子に気が付いたのか、すぐに走って逃げ去った。
「……もしかしたら、偵察者が奥にいる部隊に報告に行ったのかも……」
「マズいぞ、こっちの手勢じゃろくに戦えない……!」
 瘴気が一層濃くなってきた。このままでは4人とも正常ではいられなくなってしまう。
「急いでベースキャンプへ……もしかしたらすぐにでも敵が出てくるかもしれない……!」
 一行は足早に氷の壁を後にした。

第2章 燃える島の調査
 結界の内側で、リキュール・ラミルは手料理を作っている。食料の一部は帝国ら援助があったが、嗜好品の類は彼の自腹だ。
「いやはや、この歳で冒険商人の真似事とは。これだから人生は面白うございますな」
 既に先発隊は出発し、後発隊はここで少し休養を取ってから入れ替わりで行動するという段取りだ。拠点防衛と体力温存、そして、隊の全滅を防ぐための方策。
 リキュールはストラテジー・スヴェル団員の男に椀を差し出して微笑んだ。彼は、ここで兵站係として常駐する。戻ってきた者のために食事も用意しているし、調査報告書の代筆も行う予定だ。
「今はまだ、そう身構えなくてもよろしいでしょう」
 この結界を一歩外に出れば、何が出てくるかわからない。その緊張が、リキュールにも伝わってきたのだ。男の目線の先には燃える島が、不気味に沈黙を続けて佇んでいた。

 キージェ・イングラムは先発隊の中でもさらに斥候として、偵察を行っている。そのすぐ後ろに、ロスティン・マイカンの姿もある。キージェは目視で、ロスティンは歪んだ魔力を検知する『人間探査機』として、周囲の警戒を怠らない。微かな反応を探ろうと、ロスティンはじっと意識を集中している。
 風の音。2人の後ろを付けてくる先発隊の足音と、キージェが地図を作成するためにペンを走らせる音。時々鼻をかすめる硫黄のような匂い。
「……」
 ロスティンは小さく息を吐いた。廃墟となった神殿は、もう目の前にある。これまでも多くの魔物と遭遇したが、なんとか切り抜けてきた。だが、ここにはより強い歪んだ魔力が留まっている可能性がある。魔物がいるなら、この前か、この中か……。だが、見た目にも、気配も、神殿の前には何も感じられない。もし中にいるなら、狭い範囲で同士討ちを避けながら戦うことになりかねない。廃墟なら、足場の保証もない。
 キージェがちらりと後ろを向く。リィンフィア・ラストールは彼にうなずいて見せた。ゆっくりと、重たい石の扉が開き、中から冷たい空気があふれ出してくる――。
 遺跡の中は暗く、暑く、湿度が高い。少なくとも人間が住むのに適した環境とは言えないだろう。こんなところに何かがいるとすれば、それは……。ロスティンが叫ぶ。
「敵襲! 前方から……」
「3体だ!」
 キージェが笛を吹く。戦闘態勢を整え、襲い掛かる魔物を斬り付ける。……呆気なく、3体とも斬り伏せられ後には、何もなかったかのような静寂だけが残された。事前に構築しておいた連携が功を奏したと言えるだろう。
「これは……」
 その奥には、祭壇が広がっていた。天井が抜け、日の光が漏れている。ところどころに小さな水たまりのようなものがあり、そこからうっすら湯気が立ち上っているようにも見える。
「……これが……」
 カーレ・ペロナは祭壇へと進み出る。
「……少し、祈りを捧げさせて欲しいのですが。精霊に、ご挨拶を」
 彼の意見に反対するものはおらず、皆、その後ろに立ってその祈りを見ていた。
 祭壇の前にひざまずき、目を瞑る。朽ちた祭壇とは言え、祀られている精霊の威厳に変わりはない。騒々しく探索を行うことを陳謝しなくては、カーレの気が済まなかったのだ。それから、皇帝と帝国、自らの父兄への祈りをも、彼は捧げた。
 祈りを終えたのを見届け、再び一行は祭壇室の中を見て回る。
 リィンフィアは恐る恐る宝箱を開け、一つ一つ、中のものを確認する。古銭、硫黄に侵されて真っ黒に変色した剣、砕けてボロボロになった宝石……。どれも考古学的価値は高そうだが、歪んだ魔力との関係があるとは考えにくい。彼女はキージェと協力して、宝箱や台座に刻まれている文様を写し取った。
 ――ふと、彼女はあることに気付いた。この祭壇室の一部だけ、壁の色が薄いように見えるのだ。
「……?」
 彼女は立ち上がり、その壁のほうへ。そして、周囲の壁を軽くたたきながら、音の違いを確認する。
「……ここ、まだ奥があります」
 一行は色違いの壁の前へと立つ。リィンフィアはそこを、ゆっくりと押した。……その中に。
「……あの台座の上……!」
 それは、間違いなく古書だった。
「……回収しても、よろしいですか?」
 周囲がうなずいたのを見て、カーレが恐る恐る前に進み出、部屋の中へと入る。
 なぜかこの部屋だけはひんやりと涼しく、乾燥している。何らかの結界が施されているのだろうか。彼は古書を開いて中を確認する。
「……これは……!」

第3章 対策会議開始
 Sスヴェル本部に、本部に残っている団員達が集まっていた。
 マテオ・テーペ代表のジスレーヌ・メイユールが主催した、対策会議が開始されようとしている。
 団員達と向かい合う形に設けられた席に、ジスレーヌは緊張した面持ちで座っていた。
 両隣には、サポートと書記を担当してくれるマーガレット・ヘイルシャムと、クラムジー・カープに座ってもらうことにした。
「よろしくお願いします」
「お任せください、こういったことは得意なのです。いずれこの受難の時代が後世に歴史として語られるときのためにも、記録を残しておくことは大切ですから……」
 ジスレーヌにそう答えて、マーガレットはペンをとった。
 まず紙に、日時、場所、そして出席者を記していく。
 主催がマテオの民のジスレーヌだからだろうか。帝国民の姿はあまりない。
「お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。世界と命を守るために、情報が必要です。生き残った私達皆で協力できますよう、知恵とお力をお貸しください」
 最初にSスヴェルの活動状況について、ジスレーヌは報告した。
 氷の大地では儀式の準備が進んでおり、アルザラ1号もそろそろ到着する頃だ。
 燃える島の調査は慎重に進められており、まだ本土には届いていないが、古書などの回収も行われている。
 それで、各地の現在の状況を教えてほしいとジスレーヌは皆に求めた。
「うちの辺りでは、魔物が出ることはないな。稀に歪んだ魔力の影響で動植物が暴走したって話を聞くが、騎士団が対処してくれるから何とかなってる」
「うちの方もだ。性格が荒々しくなったり、植物の状態が変だと感じたらすぐに、報告するようにしてる」
 魔物化する前なら、既に開発された魔法剣や、地の高位魔術師により、歪んだ魔力をはじき出すことが出来るのだ。
 そして、魔力を込めた風や水で本土から追い出す。
 騎士団によりそんな方法がとられているようだった。
「いまはそれで凌げていますが、水の魔力の儀式の際に、どのようなことが起るかわかりません。魔石や、陛下のお力も無限ではないはずです。私達になにが出来ますでしょうか?」
 ジスレーヌが皆に問いかける。
「余波の想定もあるなら、この地に生きる皆さんを守れる備えが必要です。歪んだ魔力を魔石へ変換することは難しいでしょうか……?」
 そう発言したのは、アトラ民のセルジオ・ラーゲルレーヴだった。
 備えについては、皆同感だった。だが……。
「解んねぇから聞くが、魔石作るのって気軽に作れんのか?」
 マテオ民のマティアス・リングホルムが疑問を口に出した。
「魔石とは、特殊な魔法鉱石です。魔法鉱石は人工では作りだせないので、魔石も無から作りだすことは出来ないはずです。魔法鉱石は石炭のようなもので、魔力が集まっている地――恐らく、魔力の吹き溜まりの側でしか、採掘はできないと習いました」
 そのため魔法鉱石は大変貴重であり、どの国であっても、一般人が魔法具を手に入れることは難しかった。
「けど、燃える島で作ったんだろ? 魔力さえ集めることができれば、同じ方法で作れるんじゃないか? 燃える島の炎を魔石にできたってことは時間がかかるわけじゃあないんだな。作成に負担がかかるのか?」
 そんなマティアスの素朴な疑問に、ジスレーヌもそう言われればと思う。
「もし小さければ負担が軽くて量産できねぇのか? 聖石、昔割って船とマテオに置けないかって提案したことあるんだが出来なくてな。作る段階ならできんじゃねぇの?」
「燃える島では、どのように魔石を造ったのでしょう?」
 ジスレーヌが皆を見回した。
 書記のマーガレットの手が止まっていた。
 現場にいたセルジオが、暗い顔で答える。
「膨大な魔力を吸収し化け物と化した『人の身体』を、魔石に変えました。『地の神族の一人が命がけで作り出した』というのも本当です」
(そう、男性の継承者の『体』です。2000年に4つしか誕生しえない)
 マーガレットも過去に、友人と共に似た質問をしたことがある。
 そして、魔石の材料が何かも知った。
 その時の話を許可なくここで話すことは、彼女に対しての裏切り行為につながる。
 だからなにも言わず、会議の記録を再開する。
 ただ、ジスレーヌにはこっそり言っておこうと思う。
 魔石を作ってくれと帝国に言ってはならないと。
(それは、皇帝陛下に死んでくださいと言っているようなものですから)
「魔石化まではいかなくてもいい、歪んだ魔力を戻す、あるいは別の力を加えて違うものへと変換することはできないでしょうか。その力を防衛に使えれば……」
 セルジオが難しい顔で、考えながら言った。
「愛を知る我のように、皆が円環の理の技を使えれば、そのくだらぬ魔力の問題も片付くのにな」
 一番前の席に座っていたマテオ民の少年、ヴォルク・ガムザトハノフが言葉を漏らした。
「皆が円環の理の技を使えれば、とは?」
 ジスレーヌが不思議そうに聞く。
「母直伝の愛氣の事だ」
 それがどんな技なのかジスレーヌには分からなかったが……。
「別の力については魔法具の力や、色んな人に協力をしてもらい集めた魔力などでしょうか? あとは、ヴォルクさんのいう様な愛とか正の感情をのせたものをなど……?」
「なるほど」
 セルジオとマティアスには多少なりとも伝わっていたようで、ヴォルクはうむと深く頷いた。
「よろしい。2人を魔王軍広報担当と勢い担当に任命しよう」
「え?」
「おい! 誰が勢い担当だ!」
 セルジオが驚き、マティアスはヴォルクに抗議の声を上げた。
「ヴォルクくんてば……」
 ジスレーヌの緊張が少しだけほぐれた。
「魔力塔を使えばいいんじゃないか? 海賊の奴らと戦った後の様に。そういえば、ガーディアン・スヴェルが南の魔力塔の力使って、汚染された水を浄化したことがあったよな?」
「宮殿の魔力塔は、ここを護るために使われているのですよね? 燃える島側の魔力塔は使ったばかりですが、他についてご存知の方は?」
 状況をまとめる手を止めて、クラムジーが尋ねた。
「北は悪用されそうになったけど、止めたんじゃなかったっけ? 西のリモス側は大洪水以降、使われたって話は聞いてねぇな」
 帝国人の初老の男性が答えた。
「北と西ですね。では、魔力塔の力で歪んだ魔力を戻したり、変換したりする方法について、どなたかご存じの方はおられませんか?」
 そのジスレーヌの問いに、答える声はなかった。
「やってみなければ分からない、ということでしょうか」
 そう言い、クラムジーは考える。
 魔力塔の貴重な魔力で試すことはできない。
「けれど、団長代理はこう言っていた『島の浄化』をすると」
 Gスヴェルで行われた水の浄化は、水の中から歪んだ魔力を抜きだすもので、歪んだ魔力自体を消滅させるものではなかったと思われる。
 しかし、燃える島についてはどうだろう。
「島から歪んだ魔力を追いだしても、この本土に集まってしまっては元も子もない。だから、歪んだ魔力を追い出すのではなく、島自体を浄化する算段が帝国にはあるのでは?」
 クラムジーの言葉に、ジスレーヌは首を縦に振った。
「聞いてみましょう。そして魔石が無理でも、魔力塔を貸してもらえないかお願いをしてみましょう。私達だけではなく、ここに生きる皆の想いを乗せた魔力を集めましょう!」
 ジスレーヌがそう言うと「我が魔王軍も力を貸そう」と、ヴォルクが拍手をした。そして、マティアス、セルジオも続き、集まった人々が次々に賛同の拍手をしていく。
(荒れずにすんだようだな)
 全てを記した後、クラムジーはほっと息を付き、ペンを置いた。
(しかし、魔力塔は持ち出せない)
 この案は、マテオ・テーペの救いにはつながらない。
 そっと覗き見ると、ジスレーヌの顔に不安の色が表れていた。

第4章 冷たい孤島で
「調査か……」
 帝国騎士は櫓のできた拠点で険しい顔をしていた。タウラス・ルワールの申し出た「中型船の探索」という提案は、確かに興味深いものだ。だが、皇帝の命令でもある今回の作戦について、事前相談なしの変更は認められず、また時間的猶予もない。
「申し訳ないが、それは認めるわけにはいかない……もしどうしてもと言うなら、それは我々の管轄外になってしまう。何より、その中型船がどれほどの歪んだ魔力を帯びているか、見当もつかない。もう少し前、調査の段階で言ってもらえればまだやりようはあったが……」
 タウラスは「そこをなんとか」と食い下がったが、こればかりは、どうしても認められるものではなかった。
「ぜひ、その医療知識を活用して、団長の――グレアム回収のサポートをお願いできないか」
 彼はその言葉に、渋々うなずいた。

 魔物の先陣を切っていた男は、間違いなくグレアム・ハルベルトであった。数十を優に数える手勢。グレアムは冷たい顔で、昔の仲間たちを見ていた。――かと思うと、瞬きするよりも素早く、制圧部隊の前に姿を現す。
「ッ……!?」
 その速度に、すべての人間が恐怖した。瞬間移動、もしくは、時間を止める能力……それとも……足元の氷を利用した『水の一族の能力』なのか……?
「おい! この人数でこれだけを相手にするのは無理があるぞ!」
「他の奴らはどうした!」
 怒号が響き渡る。だが、多くの者がグレアムに掛かり切りになっている。一陣としてグレアム制圧と魔物制圧を行っていた集団は、魔物による分断攻撃を受けて二つに切り分けられている。グレアムを抑えるので精いっぱいであるもう一陣は、助けに入るほどの余裕がない。それどころか、グレアムの指示を受けて次々と襲い来る魔物を、わざわざこちらに誘導して倒していかなければならない。つまり、まだまだこれから敵の数は増えるのだ。
 ジン・ゲッショウは魔物の一体を炎で包み込む。
「グガァァッッ!?」
「これまた妙な取り巻きを連れているでござるなぁ。色男にはちと似合わぬ。その取り巻き、拙者がいただくでござるよぉ!」
 彼が走り抜けると、それに視線を奪われた魔物たちが数体、ジンを追いかけてグレアムのそばを離れる。ジンは別地点で待ち構えていた魔物撃破隊の元へと魔物を誘導する。だが――。
「抑えきれねえ! これ以上は無理だ!」
 悲鳴にも近い声をあげながら、1人で2体、3体の相手をする騎士たち。
「なんとか耐え抜くでござる!」
 ジンは遠くからさらに火炎を放ち、魔物を攻撃し、誘導し……。そして自らも戦いの中に身を投じていく。
 リンダ・キューブリック は防寒の毛皮を甲冑の上に着、熊のような外見になっていた。
「いつもよりちょっとは手応えがあるようだな」
 魔物を統率している『団長』、グレアムがいることで、魔物同士の連携と指揮が上がっているように見えた。そして、ひるんだり、恐れをなして逃げ出すようなことがなくなっている。――リンダにとっては、まさに『最適の相手』である。
「今日は死に日和だ……!」
 メイスをふるいながら、やや酒の回った頭でつぶやく。彼女の対面している魔物の数は、通常の兵士の倍以上。アドレナリンが駆け巡り、魔物を叩き潰す。一瞬でも油断してタワーシールドをおろそかに扱えば、確実に命が無くなるだろう。
「来いッ……!」
 目は見開かれ、狂ったような微笑みをたたえた戦士。リンダは魔力の高いものたちに群がろうとする魔物を、徹底的に排除していく。返り血で黒く染まりあがる毛皮。彼女は休むことなく、敵を殲滅し続ける。
「いや~、グレアムさんが『みんな』となかよくなれて何よりだよ~」
 トゥーニャ・ルムナはニコニコと微笑んで、それから冷たく続ける。
「ちゃんと相手してあげるね~」
 彼女の巻き起こした風が、魔物を空中へと巻き上げ、そしてそのまま氷の大地に叩きつける。
「1度くらいじゃビクともしない~?」
 彼女の魔力に引き付けられた5体、6体の魔物が一度に巻き上げられ、叩き落され、また巻き上げられ……。
「回復もしっかりしないと~……」
「サポートします」
 彼女の後ろに回ったタウラスが、「お怪我は」と聞いた。
「大丈夫だよ~」
 トゥーニャは笑って、タウラスの差し出した薬を飲んだ。
「瘴気の影響は大丈夫~?」
「なんとか……」
「厳しかったら、少し魔物たちから離れててね~……」
 そう言いながら、トゥーニャはまた魔物たちを風で巻き上げる。
 ……だが、次から次へと増えてくる魔物。次第に隊列が崩れ、陣が狭められていく。
「別動隊は何をしている! 団長を早く!!」

 ナイト・ゲイルはグレアムの護衛として残った魔物を斬り倒しながら、グレアムの動きを注視している。彼の剣に纏わせた火の力は、どうやら普通の斬撃よりも高い効果があるようである。
「チェリアを救うためには、アンタも必要なんだ!」
 グレアムの目がナイトをちらっと見る。手をかざした、と思うと……。
「ぐッ!?」
 風の魔法とも、また彼の使うはずの地の魔法とも違う、魔力のエネルギー弾がナイトに向かって飛んでくる。間一髪それを剣ではじき返したが、衝撃で手が痺れ、思うように動かない。
「しっかりしろ! チェリアを見かけたら、必ず迎えに行くからな!」
 アレクセイ・アイヒマンは防御が薄くなったグレアムに、火の魔法で追撃を与える。だが、瞬間魔物が身を挺して盾となり、グレアムに傷一つ付けることができない。
「ぐッ……!」
「グレアム団長!」
 至近距離まで詰め寄ったタチヤナ・アイヒマンは、魔法剣を構えて一気に突撃する。だが、グレアムに軽く翻弄され、弾き飛ばされる。
「っあぁァッ……!」
「ターニャっ!」
「おい! よそ見するな!!」
 一瞬妹に気を取られたアレクセイに、魔物の突進が襲い掛かる。さらにそれを警戒したナイトにも、氷のつぶてが襲い掛かった。
「……戻ってきてください……」
 タチヤナはよろけながら立ち上がり、もう一度剣を構えた。
「私には……私たちには、貴方が必要です!」
「……」
 グレアムはつまらなさそうな目で彼女をじっと見た。そして、口元に笑みを浮かべると、「行け」と魔物につぶやく。
「ターニャっ……! ……っ……」
 左の脇腹を抑えながら、アレクセイはタチヤナの前に立ちはだかった魔物を火の魔法で焼き払う。苦痛に顔を歪め、サポートを続ける。タチヤナはもう一度グレアムに突撃し、彼の腹に魔法剣を突き立てた。
「貴方が……大好きです! 傷付いても、拒まれても……この手だけは……絶対に離さない……!」
 グレアムは軽い衝撃を受けたようだが、歪んだ魔力をはじき出すことはできなかった。タチヤナの肩に腕を回し――。
「ターニャッ!!」
「ああああああ!!!!」
 一気に魔力を流し込まれたタチヤナの体は、わずかばかり光ってさえ見える。
「団長ッ……!」
「離れるんだっ!!」
 動けなくなった妹をグレアムの前から突き飛ばすと、今度はアレクセイに刃が向けられる。
「ぐああぁっ……!?」
 間一髪急所を外したアレクセイだったが、体勢を崩し、顔をしかめる。
「危ないっ!!」
 エルゼリオ・レイノーラが風の魔法でグレアムを押し返し、何とか連撃を阻止する。
 振りほどかれたタチヤナは、氷の大地の上を転がっていく。グレアムは刃の消えた魔法剣を振り払うと――。
 エルゼリオはキャロル・バーンの前に立ち、彼女をかばうような形で戦闘を続けていた。キャロルとグレアムの間に、エルゼリオは立っていたはずだった。
「どこを見ている」
「ッ……!!」
 振り返ると、そこにはグレアムの姿が。間一髪、風の魔法で二人の体を後方に飛ばし、斬撃を回避する。
 斬っても斬っても減らない魔物。風の魔法で斬撃を与え、あふれ出した瘴気は上空へと飛ばす……これをもう、十数分続けている。倒した魔物の数はすでに十体を超えた。だが、減らない。それどころか、まだまだ増えているようにさえ見える。そして、一向に攻撃のチャンスさえ見えないグレアム。不意打ちで与えた風弾で頬に小さな傷をつけてはいるが、致命的な傷は与えられていない。
 第一、グレアムまで近付いてダメージを与えたいが、その前の敵が多すぎるのだ。タチヤナが間合いに入ったことで、さらに彼を守る防御が固くなったようにさえ見える。
 ルティア・ダズンフラワーも加勢し、さらに魔物を削っていく。
 ルティアは団長代理の言葉を思い出す。
『グレアムさんが、その意思の元にたどり着いた時、おそらく完全に歪んだ魔力に囚われているだろう。彼を追う我らの前に立ちふさがるはずだ』
 歪んだ魔力に完全に囚われた場合、人間を含め生物はすべて魔物化する。
 しかし、グレアムをはじめとする特異体質の者達は、おそらくだが外見に変化はない。
「既に、あなたの身体は魔物と化しているのですね。魔物からは歪んだ魔力をはじき出せない。だけど……!」
 彼の意思は、この本部で預かっている。
 彼の命が残っていたのなら、元に戻る可能性もあるはずだ。
 そうも聞いている。
 人間に戻る、方法はあるはず……。本土に連れて帰る。そのためにはこの無数の敵を一度処理してしまわなければ――。
「引き付けをお願いします!」
 ルティアは魔物を切り裂いて振り返る。だが、別動隊も魔物に取り囲まれている。これ以上の陽動は難しいだろう。顔をしかめ、彼女はまた魔物に向き合う。地の魔法を警戒しつつ、斬り込んで、少しずつグレアムに近付く。そしてわずかな隙を縫って……。

「団長ッ!!」
 風の力を剣に込め、死角から彼の胴に斬りかかった。急所は外したが、できるだけ大きな力が乗るように意識して……。
「……!」
 だが、彼はわずかな足音と殺気に気付き、ルティアと相対して剣を受け止める。
「……フフフ……」
 グレアムは怪しく笑い、受け止めた剣を力任せに弾き返す。それからルティアの胴に斬り込もうと右足を大きく前へ――対して、ルティアは身を翻して彼の背に回り込むと、浅く一撃斬り付けた。グレアムは力任せに動いていたために、想定外の範囲から飛んできた攻撃を避けることができず、膝から崩れ落ちた。途端に、魔物の統制が崩れ、攻勢が弱まる。
「今だ!」
 エルゼリオが踏み込んで魔物を蹴散らす。統制のなくなった魔物は連帯攻撃がなくなり、確かに強いものの個別撃破で何とかしのぐことができる。彼はキャロルのためにグレアムへの道を開けた。
「早く団長を!」
「ええ……!」
 綺麗に空いた一直線の道を駆け、魔法剣を構えずに駆け出すと、いきなりグレアムに抱き着いた。
「……!?」
 そしてグレアムの背中から自分もろとも、まとめて串刺しにしたのだ。――だが、貫通した魔法剣は、歪んだ魔力をはじき出すことができない。目の前に飛び出してきたキャロルを片手で弾き飛ばすと、グレアムはさらに一歩、前へと進み出る。
「ぐッ……グレアムさんっ……!」
 氷の大地に引っかかれて、彼女の腕には小さな傷がいくつか出来てしまった。そこから、グレアムの瘴気が侵入してくる。キャロルの意識が遠のいていく。
「貴方の苦しみは、私が……!」
「……」
 グレアムは背中に負った傷を気にしているのか、ゆっくりと、顔をしかめながら立ち上がる。
「あアアアアぁぁぁッッッ!!!」
 それは、とてもあのグレアムとは思えない、狂気に満ちた絶叫だった。魔物たちの攻勢が強まる――。間違いない。グレアムは何らかの方法で魔物の統率を取り、士気を上げている……。恐らくはグレアムの能力、『インスパイア』によるものだろう。
「魔法剣がダメなら……!」
 ナイトが炎をまとわせた剣を振りかざし、グレアムに斬りかかる。
 間違いない。もう交渉や説得は不能だ……彼は、見た目こそ団長だが、その中身はもう――。
 グレアムはひらりと剣撃を交わして、自身も剣を構え直した。
「団長ッ!」
 ルティアも加勢して、2人で1人を挟み撃つ。
「魔物は任せるでござる――!」
 手一杯になっているはずの魔物討伐隊は、さらに多くの魔物を引き付けて、ほとんど1人で同時に4体以上を相手にし続けている。さっさと止めないと大変なことになる――。
「止まりやがれッ……!!」
「お願いです団長!!」
 挟まれて逃げ場を失ったグレアムは、氷の上を瞬間移動してするりと抜ける。
「すみません……団長……!」
「ぐァッ……」
 アレクセイの炎弾が、グレアムの膝をくじいた。
 駆け寄り、ナイトが彼の肩に深々と剣を突き立てる。
「がァァァぁぁッッ!!!」
 咆哮の後、魔獣たちは急におろおろとあたりを見回し、急いで元来た道を走って逃げていった。
 雪野原の中心には、軽傷を負ったものが多数、すでに息も絶え絶えのものも少なくない。多大な犠牲を払って、一行はグレアムを確保することに成功した。エルゼリオは傷付いた体でキャロルに近付くと、タチヤナが持っていた魔法剣を起動し、彼女の体から瘴気をはじき出した。場に残っている瘴気はようやく薄くなっていき、白く荒い息を誰もが何度も吐き出した。

 アレクセイはタチヤナを抱え上げる。幸い、命に別状はないようだ。グレアムの魔力を瞬間的に高量浴びた上に、寒さと痛みで気を失ってしまっているらしい。一刻も早く引き上げる必要があるだろう。
 別動隊は――なんとか無事か。ちらほらと怪我をしながらもこちらに向かってきている姿が見えた。その時だった。
「ほら、チェリア。こうして、人間は私たちの大切な人を傷付けて、奪っていくの」
 チェリア……?
 微かに聞こえたその名前に、驚いて振り返る。断崖の上に、黒い髪、赤い瞳の少女が立っている。そのとなりには……チェリア・ハルベルトの姿があった。
「チェリア様!?」
「兄様、グレアム……兄様……」
 だが、アレクセイの声など少しも聞こえていないように、チェリアはただ、グレアムを一心に見つめている。
「チェリア!」
 その様子に気付いたナイトも駆け寄ろうとするが、断崖はあまりに高く、さらに飛行型の魔物が彼女たちまでの行く手を遮っている。
「滅ぼしましょう。すべて」
 赤い瞳の少女は海へと手を伸ばす。
 ズズズズズ――。鈍い、地鳴りのような音が響く。
「あれ……嘘だろ……」
 大量の海水が、空を飛んでいる。あまりに強力な魔法。その海水は戦闘を終えたばかりの一行の真上にまでくると、空中で炸裂した。
「凍らせなさい、グレアム!」
「……かしこまりました」
 無数の水滴が、空中で弾丸のように凍って、あるいは巨大な氷の塊として彼らの上に降り注ぐ。グレアムはがくりと力を失い、再び目を閉じた。
「うわあああっッッ!!」
 あたりが絶叫に満ちる。
「……行きましょう、チェリア」
「兄様……」
 チェリアは悲しそうにつぶやいて、断崖を後にした。
 一歩飛び出していたために難を逃れたナイトと、タチヤナを肩に担いだアレクセイは、チェリアの背中をただ見守るしかなかった。

「……あーぶなかったぁ~っ!!」
 氷の塊の頂点に風穴が開き、中からトゥーニャが顔を出す。
「だ、大丈夫だったのか!?」
「大丈夫……とは、言い切れないんだけど……まあ、大多数はね~……」
 トゥーニャの顔色が曇る。ナイトが下に目をやった。そして、顔を背ける。雪が真っ赤に染まっているのが見えてしまったから。
 氷塊を内側からぶち抜いて、奥からゾロゾロと助かったものが顔を出す。
「……グレアム団長には悪いが、もうここで死んでもらったほうがいい」
「なっ、なぜそのようなことを仰るのです……!」
 ルティアが抗議する。
「さっきは風の魔法使いと水の魔法使いの機転で何とか命は助かった。だが、団長が次に目を覚ました時、味方に戻っているわけではない」
「命が残っていたのなら、元に戻る可能性もあると聞いています」
「彼の命を護るために、この戦いで死者を出すことは許されない。それが団長の意思だともな」
「……」
 ルティア以外にも、多くのものがグレアムを連れ帰るのには賛成だった。目が、訴えかける。
「……良いだろう。ただし、この作戦で命を落としたものもいる。魔物の手に掛かったもの……そして、グレアム団長の魔法によって葬られたもの。それだけは、絶対に忘れるな」
 ナイトがグレアムを捕縛して引き立たせると、一行は船へと向かって退却を始めた。命を落としたものは瘴気を帯びている可能性も高い。ここに、捨て置くしかない。
 みな、思い思いに、時々この大地を振り返る。命が助かったものの中にも、負傷者、重傷者は少なくない。もしかしたら、ここで死んでいたかもしれなかったのだ。

 Sスヴェル代表の一人、レイニ・ルワールは他の船の乗組員を残し、団員たちをアルザラ1号船に乗せて、一旦沖へと避難した。
 そして、山の一族の特殊能力で本土へ報告をして、指示を仰ぐ。
「これ以上の魔物引き付けは、諦めるしかないわね。アルザラ1号はグレアム・ハルベルト……団長を乗せて、帝国領に帰還します。残れる人はここに残って。そして、生き残って」
 急いで戻ってくるから、と。
 レイニは苦悩に満ちた声で、皆にそう言った。

 


●目標達成度
グレアム・ハルベルトの身柄確保【成功】
遺跡の探索に成功し、古書を手に入れる【大成功】

●スタッフより
【川岸満里亜】
構成を担当しました川岸です。
今回は本土の会議のシーンも書かせていただきました。
まずは、大変な状況の中、シナリオにご参加くださり誠にありがとうございました。
すっきり大成功のリアクションをお届け出来なかったことを、申し訳なく思っております。


後編のワールドの方針といたしまして、協力して作戦成功を目指すものであり、フリーアクションを選択せず、団行動から外れた行動をとった場合は、独自行動よりも協力を優先するものとして、調整させていただくとしております。
そのため、フリーアクション以外のアクションにつきましては、その方針でマスタリングを行わせていただきました。
フリーアクションにつきましては、今回も描写の対象となるアクションはございませんでした。いただいたシチュエーションが起り得なかったためとなります。

次回はまたお休みをいただくことになってしまったのですが、その間に後編第2回の補完、及び情報整理用のシナリオを行う予定ですので、ご都合が付きます方は、参加をご検討いただけましたらとても嬉しいです。

ワールド後編第3回の参加者募集開始は5月下旬を予定しております。
流れを変えたい方がおられましたら、そろそろフリーアクションを成功させねばならない時期かもしれません。
尚、今回いただきました敵中型船調査のアクションにつきましては、奪取に絞ったフリーアクションでしたら、面白い展開に繋がったかもしれず、残念に思っています。

それでは次回もどうぞよろしくお願いいたします。

【東谷駿吾】
皆さんご参加いただきありがとうございました。今回は、氷の大地での準備・戦闘、および燃える島での調査を担当させていただきました。
特に氷の大地での戦績、なんとかグレアムを連れ帰ることはできましたが、戦闘は人員配置などからかなりの苦戦を強いられてしまいました……私も心苦しくはあったのですが、今後の作戦がさらにうまくいくよう、皆さんのお力をお貸しください!
現実世界でも強敵(某ウイルス)が流行していますので、手洗い・うがい・十分な栄養と休養をしっかり摂って、来たるべき戦いに備えてくださいね。