会員サイトはこちら  

ワールドシナリオ前編

『深淵の眼差し かげろうの蒼』第4回オープニング

◆皇族の血筋

 今から30年程前、ウォテュラ王国から王家の姉妹が亡命してきた。

 姉は皇子の公妾となり、妹はハルベルト公爵家にそれぞれ嫁いだ。

 そして生まれた子供達が、ラダ・スヴェルダム、ミサナ・スヴェルダム、グレアム・ハルベルト、チェリア・ハルベルト、カサンドラ・ハルベルトであった。

 ハルベルト公爵家は、地の特殊な力を有するアルディナ帝国皇家の血を引いている。

 ウォテュラ王国の王族もまた、水の特殊な力を持つ。

 二つの異なる特殊な力を持つ一族同士の子は、一族の特殊能力は継承しないようだが、代わりに本人一代限りの弱い特殊能力を持って生まれてくる。

 たとえば、ラダは千里眼、グレアムはインスパイア、チェリアは対象の能力を引き上げる術などだ。

 弱い力だったはずのそれらが、今、少しずつ強くなっているという。


◆幽霊船?
 騎士団副団長の元に、海岸の拠点から不可思議な報告が入った。
 ──先の戦闘で沈んだはずの海賊船が接近している。
 副団長は拠点に急行し、渡された遠眼鏡で確かめた。
「あれは、沈没したはずでは……。だが、妙な雰囲気だな。まるで物語に出てくる幽霊船のようじゃないか」
 遠眼鏡を部下に返しながら言うと、部下も緊張した面持ちで頷く。
「船全体が不気味な黒い霧に覆われていて、人が乗っているのかもわかりません。ただ、船の周りに海獣が多数従っているのが気になります」
 副団長はしばらく考えた後、部下に命じた。
「船はまだ遠い。監視を続けろ。それから、海岸に魔物が飛び出してきた穴があったな。念のため、あそこも見張っておけ」
 指示を出した副団長は、報告のため宮廷に戻った。
 しかしこの翌日、塞がれていたはずの海岸の穴から海の魔物――海獣の群が飛び出して来た。
 穴の入口は内側から破壊されていた。そこに多数の海獣の死骸があったことから、塞いでいた岩の破壊にすべてを費やして死んだのだろうと考えられた。
 拠点の騎士達だけでは対処しきれないと判断した責任者は、副団長へ救援要請を出した。

「幽霊船を確保せよ」
 それが、皇帝が出した命だ。
 これまで何度も使われた会議室で、ランガス・ドムドールは招集した面々を見渡す。
 面子はほぼ同じ。
「騎士団は懲戒部隊を率いて幽霊船を確保。スヴェルは海岸の海獣討伐に加勢せよ」
 さらにゴーレムと炮烙玉の製造状況について、研究者に確認した。
「ゴーレムは試作機を動かす準備が整っています。炮烙玉も対海獣用に揃えてあります。数に限りがありますので、その点はご注意ください」
 研究者は、炮烙玉の説明については副団長とスヴェル団長グレアムを向いて言った。
 それから、とランガスは今回もこの場に呼んだルース・ツィーグラーに目を向けた。
「箱船の修復は終わっているな? 騎士団と共に出撃し、援護するように」
 ルースは、きつい眼差しでランガスを見据えていた。

◆箱船出撃要請の理由
 マテオ民が多くいるリモス村へ、ルースの使いが訪れた。
 使者はルースと共に宮廷に行った貴族だった。彼は平民にも友好的な貴族で、リモス村に残った同胞との再会を喜んだ。
「幽霊船──元はアルザラ港の貨物船で海賊船になっていた船ですが、確保されれば我々のもとに返されるそうです」
 箱船が出撃した場合に、皇帝が示した見返りはこうだ。

 幽霊船を確保し、修繕を行う。

 貨物船として使えるようになれば、箱船に随伴させてマテオ・テーペに残された人達を助ける際の物資輸送に使えるだろう。

 海底と帝国との往復には約二ヶ月かかるため、その分の必要物資を貨物船で運べるとなると、箱船に空きができるのでより多くの人を乗せられるのだ。

 また、帝国には魔法具の製造技術がある。箱船に搭載されている魔法具を製造し、貨物船に配備することができるかもしれない。もしそれができれば、新たに船を造るよりはるかに早く箱船をもう一隻手に入れることになる。

 ただし、帝国民の協力がないと実現はできないだろう。

 帝国も今は貧しく、スラムの住人を含め日々の食事にも困っている者が多く存在している。

「そういった人達に回るはずの物資を分けてもらわないと成し得ない、というのが現状です。つまり、我々が帝国の味方であり、海底の同胞を本気で助ける気持ちであることを、身をもって示さなければならないのです」
「私達への嫌疑はかなり和らいだから、次の段階へ進むのですね」
 ジスレーヌ・メイユールの確認に頷く貴族。
 ジスレーヌは、ルースはどういう意見なのか尋ねた。
「会議の場で、姫は返事を保留にしました」
「私達がマテオの人達のために魔法具と大型船を求めたら、帝国の人達の命の一部まで背負うことになりますからね……。でも、それがあれば、もっとたくさんの人を一度に連れ出せる」
 皇帝は、民の命を他国の者に預けてまで、聖石が欲しいのか。
 いや、そうでもして聖石を手に入れないと、世界は終わってしまうのかもしれないくらい時間がないのか。
 ジスレーヌは、集まっているマテオ民達に意見を求めた。
 また、アトラ民達にも客観的な意見を聞かせてほしいと願った。
 その上で、箱船を出撃させるか決めよう、と。

◆陸を求める幽霊船
 黒い霧を纏った幽霊船──元海賊船の甲板に、バルバロはいた。
 願いは、ただ一つ。

 

 住む場所を、仲間と生きる土地を……手に入れるんだ。

 

「私は、力を得た……!」
 バルバロから可視できるほどの強力な魔力が迸る。
 その目にかつての情の篤さはなく、妄執を抱えた狂気に満ちていた。
「大地……大地に触れさえすれば──」
 バルバロの感情の昂りに応えるように、船の周りの海獣達が荒々しく飛び跳ねた。


ワールドシナリオ第4回参加案内

 

■スケジュール
2019年8月15日 シナリオガイド公開
2019年8月20日 チケット販売、アクション受付け開始
2019年8月31日 アクション締切
2019年9月20日頃 リアクション公開

■参加方法
公式ショップでチケット(500円)を購入していただき、ダウンロードしたファイルに記載されたURLのフォームから選択肢の選択、手段(200文字まで)をご投稿ください。

■第4回の主な目的
幽霊船を調べる

■選択肢
・【騎士団員】幽霊船に乗り込む。
・【騎士団員】小型魔導船から援護
・【懲戒部隊】海賊船先行調査、戦闘。
・【騎士団員・スヴェル】海岸から援護
・【スヴェル】海岸で海獣と戦う
・【スヴェル】救護活動
・【マテオ民】箱船に乗り、騎士団援護
・【マテオ民】箱船に乗り、海底洞窟調査
・【アトラ民】マテオ民に協力する
・【リモス村】スヴェルに協力する(救護活動)
・【海賊】騎士、スヴェルと戦う
・【海賊】投降する、情報を流す
・ボランティアとして崖上でお手伝い
・開発案を出す、開発に協力

■選択肢説明
【騎士団員】……立場:帝国騎士、傭兵騎士
【懲戒部隊】……トゥーニャさん、囚人
【スヴェル】……立場:スヴェル
【リモス村】……拠点がリモス
【マテオ民】……マテオ・テーペ出身PC全員
【アトラ民】……アトラ・ハシス島の民全員
【海賊】……立場:海賊

選択肢の前に【 】のない選択肢は、PCの立場や状況に合っていればどのPCでも選択可能です。

■海岸
磯のような土や岩の浜です。

■幽霊船
大洪水前に、アルザラ港と呼ばれていた港町から出航した避難船(貨物船)です。
海賊船として使われていました。
バルバロさんと、海賊の残党5名ほどが乗っています。
バルバロさん操る魔物が船の穴を塞いでいます。

■状態負傷以上の方
日常生活に問題はありませんが、魔法の発動や敏捷性に影響が出る可能性があります。無理をすると悪化します。

■懲戒部隊
トゥーニャ・ルムナさんの他、囚人PCも加わることができます。
また拠点がリモス村のマテオ難民も志願することが可能です。
命令に背いた場合、騎士団員から攻撃されます。

■状況説明
海岸に近づいた幽霊船に、魔法で騎士達が乗り込み、調査と船の確保を試みます。
海賊の残党に関しては、前回と同じ方針です。
海底洞窟から飛び出してきた魔物の討伐はスヴェルが担当します。
箱船は海からの作戦のサポートと、作戦後の海底洞窟の調査を依頼されています。
マテオ・テーペ出身者のうち1人でも箱船で作戦に協力するというアクションをかけた場合、箱船は出航します。

バルバロさん
歪んだ負の魔力の憑代となりつつあり、主にオープニングで書かれている目的を、魔法と海の魔物達を操り、成し遂げようとします。
詳細は決めていただけますが、状況に合わない行動、バルバロさんの能力値に見合わない戦略は立てられないです。
歪んだ負の魔力は自身の力だけでは追い出すことはできず、意識も囚われているため、抗うこともできません。
バルバロさんの心は、親しみを感じている人の声に反応しますが、呼びかけや相手の負傷程度では正気に戻ることはありません。

エンリケ・エストラーダさん
海獣2体が従っています。エサをくれるエンリケさんに懐いているというような状態です。
海獣たちはバルバロさんが何か命令をした時には、バルバロさんに従います。

メリッサ・ガードナーさん
今回は、拠点がリモス村のマテオ難民と同じ立場となります。

ウィリアムさん
番外編で治療に専念されたため『状態:負傷』の方と同様の行動が可能です。

ヴォルク・ガムザトハノフさん
番外編で無理をしましたね!? 今回強力な魔法の行使や激しい運動をした場合、次回は重傷(動けない)となります。

■開発について
今回も以下の開発について、協力、資金の提供をすることができます。

・ゴーレム
・炮烙玉(投箭を詰めたもの)
ゴーレムは、協力、資金提供の結果により、今回試作品を動かしてみることができます。
炮烙玉は今回も資金の提供のみ可能です。今回も海獣討伐に使えるかもしれません。
資金の提供につきましては、アクションとは別に行っていただけます。

新たな開発案もお待ちしております。
皆さんのアクションに役立ちそうな開発案が他にもありましたら、是非ご提案ください。

■マスターより
構成、データ処理を担当いたします、川岸満里亜です。
1カ月お休みをいただいてしまい、申し訳ありませんでした。
ワールドシナリオ前編もあと2回で完結です。
皆様と一緒に完走できましたら嬉しいです。

 

*   *   *


こんにちは、冷泉みのりです。
オープニング、エピローグ、及びリアクションの一部を担当します。よろしくお願いします。
ジスレーヌが登場していますが、これまで通りリモス村に待機です。
リモス村在住の方の選択肢について補足します。
【リモス村】……拠点がリモスであれば囚人でもマテオ難民でもアトラ島民でも選べます。
【マテオ民】……拠点がどこであっても、マテオ難民であれば選べます。
【アトラ民】……拠点がどこであっても、アトラ島民であれば選べます。
【懲戒部隊】……囚人設定のPCのみ選べます。
※特に立場や拠点の指定がないボランティア、開発関係はPCの立場や状況にあったアクションであるよう、お気を付けください。

今回もよろしくお願いします!