ワールドシナリオ前編
『深淵の眼差し かげろうの蒼』第2回オープニング
◆海賊の反撃
現在海賊船と呼ばれている船は、大洪水に港が飲み込まれる前に脱出できたアルザラ港の貨物船であることがわかった。
その中にいくつかある船室の一つに、海賊のボスの専用室があった。
ボスはそこに、前の戦いで帝国に攻撃をした者と人質確保のために動いた者だけを呼んだ。
招集された面々の中に、バルバロとエンリケ・エストラーダの顔もある。
ボスは窓際に寄りかかり品のある妙齢の女の腰を抱いて、集まったメンバーを確認するように見渡して口を開いた。
「この前はよくやった。じきに人質を取り戻しに騎士団が来るだろう」
海賊達もこのまま終わるなど思っていない。これから人質を使った策をボスが授けてくれるのだと期待の目で言葉を待った。
「人質の中の漁師を盾にして、帝国を迎え撃つ。俺達の目的は海岸だ」
そこでボスは野心的な笑みを浮かべ、未来の展望を告げた。
「海岸を俺達のものにできれば、水位が下がった時に現れる大地すべてが俺達のものだ。そして、いずれは俺達が俺達のルールで帝国を治める!」
壮大な未来図に海賊達は息を飲む。想像が追いつかず、目を白黒させる者もいた。
「秩序なんていらねぇ、力あるものが支配する国を作ろうぜ! 俺達のルールに従う者、大切なもの、弱者も力で守ればいい。帝国に屈する弱いヤツはいらない。パワーに自信のないヤツは知恵を貸せ」
難しいことはわからなくても、自分達が帝国を乗っ取るという夢は魅力的だった。底辺から一気にのし上がるのだ。海賊達の目が輝いていく。
ボスはその反応に満足そうに頷いて締めくくった。
「この海は、俺達の味方だ。多くの帝国兵をおびき寄せ、すべて沈める──!」
呼応するように海の魔物や藻類が、海上を飛び跳ねたり海面を覆ったりした。
窓からその驚異的な光景を目にした海賊達は興奮に沸き立ち、雄たけびを上げる。
船室に異様な熱気が満ちた。
その頃、人質達が集められている別室では。
柱に縛りつけられているトゥーニャ・ルムナは、いつでも魔法で外せるロープをあえてそのままに、この場に閉じ込められた者達の様子を見ていた。
漁師二人は絶望的な顔をしていたが、メリッサ・ガードナーだけは違う顔だった。
何より彼女は、この部屋にいるものの拘束はされていない。バルバロの友人だから、半分は海賊の仲間扱いなのだろうか。
ふとメリッサと目が合い、微笑まれる。
きっと彼女には、トゥーニャが拘束を抜けるなど容易いことを見抜かれているのだろう。
◆人質交換交渉
宮廷会議室では、人質交換の交渉についての話し合いが行われていた。
出席者は前回と変わらず、皇帝ランガス・ドムドールに騎士団長それからスヴェル団長のグレアム・ハルベルトの他、研究者や貴族達である。
「騎士団長が降伏勧告に行ったが、近づけなかったという」
ランガスの視線を受けた騎士団長が苦々しく頷く。
「行き場もないのに無駄なあがきを……。奴ら、攻撃してきおった」
魔法の攻撃などものともしない防具が騎士団にはあるが、さすがに船を破壊されたらどうしようもない。それで仕方なく引き上げたのだった。
「では、人質交換といこうか」
ランガスは次の作戦に移ることにした。
「最初は捕らわれているマテオ・テーペの二人とこちらの海賊二人だ。次に、同じく捕らわれている漁師二人と騎士か貴族二人を入れ替えてもらう。その際、水と食料もつけよう」
ここまでは海上で行われる。
「最後に、漁師と入れ替えで人質になってもらった二人と、海賊船に帰還の意志のある海賊十名を交換する。これは海岸で行うことを条件とする」
「承知しました。騎士二名を募っておきましょう」
命がけの任務になる、と騎士団長は覚悟した。
それからランガスはグレアムに目を向け、スヴェルの役割を告げた。
「スヴェル団員には、海上および海岸での交渉時の護衛を命ずる。仮に攻撃をされても防戦に徹するように。ボランティアの管理も引き続き頼む」
「お任せください」
グレアムは頷き返した。
また、リモス村にも協力要請が出された。彼らは騎士団かスヴェルの指示に従って動くことになる。
「次に、海岸での交渉時に起こり得ることとして、海賊十名が引き渡された直後の攻撃が考えられる」
海上ももちろん危険だが、捕らえた海賊すべてが開放されてはいないから、危険度は低いと考えられる。
「リサ・アルマ提案による拠点は完成しております。また、ジン・ゲッショウの案である投箭を詰めた炮烙玉も、少量ではありますがそろえてあります」
騎士団長の報告に頷くランガス。
「ゴーレムはどうなっている? 提案者はマティアス・リングホルムと言ったか」
これには開発室の研究者が答えた。
「はい。ゴーレム制作ができる技術者および資金の募集が開始されています」
引き続き開発室では案を募集しているという。
会議は終わり、それぞれ持ち場へ向かった。
◆薄暗い部屋
向かい合う相手の顔の判別さえつかない部屋で、静かに話しかける声があった。
「あなたは私の忠実なるしもべ、そうですね?」
男が海賊に語りかける。そして、小さな石のついた首輪を巻き付けた。
「ラダ、何か見えるかい?」
男は傍にひかえていたもう一人の男──ラダに尋ねた。
彼は何も言わずに首を左右に振るだけだった。
ワールドシナリオ第2回参加案内
■スケジュール
2019年5月23日 シナリオガイド公開
2019年5月24日 チケット販売、アクション受付け開始
2019年5月31日 アクション締切
2019年6月20日頃 リアクション公開
■参加方法
公式ショップでチケット(500円)を購入していただき、ダウンロードしたファイルに記載されたURLのフォームから選択肢の選択、手段(200文字まで)をご投稿ください。
■第2回の主な目的
人質交換を成功させる。
解決のための布石を打つ。
■選択肢
・【騎士団員】交渉に行き、交渉する
・【騎士団員】交渉に同行し、護衛する、防戦
・【騎士団員】人質になる(帝国騎士限定)
・【騎士団員】海岸で対策
・【騎士団員】騎士団長に意見
・【スヴェル】交渉に同行し、護衛する、防戦
・【スヴェル】海岸で対策
・【スヴェル】ボランティアの管理
・【リモス村】騎士団に協力する(海岸で対策)
・【リモス村】スヴェルに協力する(ボランティアと救護など)
・【海賊】騎士、スヴェルと戦う
・【海賊】投降する
・【海賊】帝国に情報を流す、伝言を託す
・人質になっている
・ボランティアとして参加、意見(救護など)
・開発案を出す、開発に協力する
■状況説明
海賊船(本船)に乗っている海賊の人数はおよそ50人です。
人質は帝国の男性漁師が2人、マテオ・テーペから訪れた女性が2人。
海賊船の近くに、小型海賊船(ボートやヨットです)が数隻停船しています。
今回、マテオ・テーペの人質が開放に至らなかった場合、マテオ・テーペの箱船に協力命令が出ます。
人質が解放された場合も、協力要請が出る場合があります。
(箱船が沈められてしまった場合、マテオ・テーペへ帰還の方法を失い、2隻目の出航も不可能となります)
魔力の高い方は、魔法攻撃に対しての抵抗力も高いです。
ただし、受け手の魔力を利用するタイプの魔法は、魔力が高い方が影響を受けやすくなります。
帝国の船(小型魔導船です)は、崖上から海岸に下ろされ、海岸から出航します。
海岸には、前回捕らえられた海賊のうち、海賊船への帰還を望む約10人の海賊が下ろされています。
展開によっては、海賊船は海岸に接近しないかと思います。『海岸で対策』の選択肢を選ばれる方は、ご留意ください。
「【騎士団員】人質になる(帝国騎士限定)」の選択肢につきましては、選択をされた方が3人以上の場合、アクションの内容にもよりますが、信頼の高い人、魔力の低い人が優先して選ばれます。選ばれなかった方は、護衛(補欠)として同行します。
2人未満もしくは、適任者がいない場合は貴族NPCが選ばれます。
海賊船は海岸に接近出来ない状況が続くと、飲み水(真水)が得らず危険な状態に陥ります。
■開発について
前回提案のあった、以下の開発について、協力、資金の提供をすることができます。
・ゴーレム
・炮烙玉(投箭を詰めたもの)
ゴーレムについては、協力、資金提供がなければ後編開始頃、1体分完成するものと思われます。
炮烙玉は資金の提供のみ可能です。今回は少量の準備が出来ましたが、作成資金が集まった場合数が増えます。
資金の提供につきましては、アクションとは別に行っていただけます。
■マスターより
構成、データ処理を担当いたします、川岸満里亜です。
カナロ・ペレアはPC同士のシリアスな戦争の物語ではないです。ですがゲームを盛り上げ、他の参加PLを楽しませる悪役行動、対立アクションは大歓迎です。
その他ルールなどにつきましては、第1回のマスターコメントでご確認ください。
それでは今回も是非、よろしくお願いいたします!
* * *
こんにちは。オープニング、エピローグ、リアクションの一部を担当します冷泉みのりです。
今回もリモス村に、騎士団およびスヴェルへの協力要請が出されています。
騎士団とスヴェルが行う海岸の対策への協力か、ボランティアとして参加し救護活動などを行うかです。
それ以外の選択肢を選ぶと採用の可能性が非常に低くなります。
マテオ・テーペのPCはまだ本土での信用を得られていないため、流刑囚枠に組み込まれています。
この二つの身分のPCは、騎士団やスヴェルが不利になるような行動をとると、即刻リモス村へ送り返され、地下牢行きになります。報酬も出ません。(それでもやるという方は止めませんが)
アトラ・ハシスのPCは自由に選択できます。
また報酬は、どの身分であってもルール通りに支給されます。
それでは、今回もよろしくお願いいたします!
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