ワールドシナリオ前編

『深淵の眼差し かげろうの蒼』第1回オープニング

 

◆襲撃

 まだ空が白み始めた頃の早朝。

 街にある騎士団の詰所の扉がけたたましく叩かれた。

「誰かっ、誰か助けてくれっ!」

 扉を叩く男は汗と泥にまみれあちこちに傷を負っていた。

「こんな時間に誰だ……?」

 夜番で眠気の混じった騎士団員の声が扉の向こうから聞こえると、男は泣きそうな顔で早口に訴えた。

「海岸の奴らが海賊に襲われたんだっ。仲間が人質にとられたっ」

「何だって!?」

 男の叫びに眠気が吹き飛んだ騎士団員がすぐに扉を開け、今にも倒れそうな男を支えた。

「本当なんだな? 他の者はどうした、お前一人か?」

「が、崖を登れた奴はそこで休んでる……登れなかった奴は……わからねぇ」

「……そうか。手当てをする。詳しく聞かせてくれ」

 傷だらけの漁師の男は、騎士団員の肩を借りながら詰所の奥へ連れて行かれた。

 

◆宮殿作戦会議室

 テーブルに広げられた帝国東側の地図を、皇帝ランガス・ドムドールと騎士団長さらにガーディアン・スヴェル団長のグレアム・ハルベルトが囲んでいる。三人から発せられる緊迫した空気が室内に満ちていた。

 今朝早く、騎士団長からランガスへ海賊が攻め寄せてくると報告があがった。ランガスはスヴェルにも協力を要請し、グレアムは急ぎ宮殿へ駆けつけたのだ。

 騎士団長の報告によると、海賊側は人質をとっておりさらに魔物化した海の生物を従えているという。

「魔物を従わせる術があるというのですか?」

 グレアムの疑問は騎士団長だけでなく、ランガスも不思議に思う点である。

 しかし騎士団長は、自分もこの目で見たのだから間違いないと主張した。彼は、助けを求めてきた漁師とも対面している。そして崖の上に逃れた者達を騎士団で診療所へ運び込んだのだ。

「ふむ……どのような手を使ったかは不明だが、事実として受け入れねばなるまい。ところで、崖の下に残された者や海賊の様子で他に気づいたことはあるか?」

 ランガスに問われた騎士団長は、見てきたことをそのまま伝える。

「まだ薄暗い時間でしたので崖の下まで灯りが届かず、様子はわかりませんでした。海賊のほうは、先ほども申し上げたとおり魔物を従えておりましたが、不気味なくらい静まり返っていました」

「あの、海賊船は見えましたか?」

 グレアムの問いに騎士団長は、

「遠くのほうにうっすらと影が見えた。それ以上はわからん」

 と、難しい表情で答えた。

 崖の上は特に遮るものもない。あまりうろうろしていると海賊か海賊船から何か仕掛けられる可能性があった。暗くてよく見えないこともあり、騎士団長は見張りを数名残して怪我人の対処を優先させたのだった。

 騎士団長はランガスに向き直ると強い口調で言った。

「陛下、一刻も早く人質救出と海賊共の殲滅を!」

「うむ、これより人質救出作戦および海賊排撃作戦を行う!」

 排撃──つまり、追い払えということだ。

 これまでもさんざん悪事を積み重ねてきている海賊に対し甘すぎる、と騎士団長は声を荒げそうになったが皇帝の決定ゆえ黙って従うことにした。

 その後、作戦内容が詰められ騎士団長は広場へ、グレアムはスヴェル本部へ向かうため作戦会議室を退室した。

 

 海賊の事件については、アトラ・ハシス島から来ているアルザラ一号の航海士であるレイニ・ルワールの耳にも届いていた。

 彼女は海賊が占拠していないほうの海からならば、アトラ・ハシス島に帰ることができるだろうかと検討を始めた。

 

◆騎士団長による演説

 騎士団員の告知により、広場には大勢の人々が集まっていた。

 ざわめく彼らの前に設置された壇上に騎士団長が現れる。

 騎士団長が人々へ威圧的な視線を巡らせると、広場はやがて静かになっていった。

「よく集まってくれた! すでに知っている者もいようが、今朝がた海賊が略奪を目論んでいるとの知らせが入った。奴らは暴走した魔力の影響で魔物化した海の生物を操り、我らを脅かそうとしている!」

 動植物の魔物化による被害は年々増えている。だがその生物を人間が操っているというのは初耳だった。

 不安のどよめきが広がる。

「静まれ! 我らには優れた武器がある! 騎士団では対魔物用の魔導武器を開発中である! また、諸君らには魔法具の案を広く募集する! 協力を希望する技術者またはアイディアがある者は、宮廷の開発室を訪ねるように! 国のため、家族のため、愛する者達のために、海賊などに屈してはならん! 共に戦おう!」

 騎士団長の鼓舞に、特に海賊の被害を受けたことのある人達から呼応の声があがった。

「こうしちゃいられねぇ。海賊共が崖を登ってこれねぇようにバリケードを作るぞ!」

「石や木片を投げつけてやれ!」

「上から熱湯をぶっかけてやるわ! あいつらのせいでお魚を食べられないんだから!」

「この際だ、始末してやる!」

 他の人々も攻め込まれると聞いては呑気になどしていられない。

 海賊と魔物への恐怖と敵愾心に広場は包まれたのだった。

 

◆スヴェルの受け持ち

 スヴェル本部の会議室では、グレアムが団員に指示を出していた。

「スヴェルは騎士団のサポートを行います。海岸に残っているかもしれない一般人の救助、投降および捕縛した海賊の護送の補佐です。ただし戦闘技術のある団員には、騎士団と共に海岸で作戦の後方支援にあたってもらいます」

 この時ばかりはふだんは穏やかなグレアムも厳しい表情をしていた。そして彼の様子から状況を察した団員の表情も引き締まる。

「それと、街の人々への対応もあります。前線で戦うことになる騎士団の支援のため、街の人達が集まっています。彼らをまとめるのもスヴェルの担当です」

 騎士団支援のボランティア活動を支えるため、スヴェルでは伝達や炊き出し、怪我人への手当てが行われる。

 続けてグレアムは、騎士団のように訓練を受けていない一般の人々が戦況次第で暴走しないように管理するのも自分達の任務だと告げた。

「それでは、この用紙に各活動内容を挙げましたので、各自希望する箇所へ名前を書いてください。決して無理なところへは行かないように」

 そうすることで当日誰がどこにいるかがだいたいわかる。

 ちなみにグレアムは本部で指揮にあたる。

 団員達は次々に記名をしていき準備に取り掛かった。

 

 

ワールドシナリオ第1回参加案内

 

■スケジュール

2019年4月20日 シナリオガイド公開

2019年4月23日 チケット販売、アクション受付け開始

2019年4月30日 アクション締切

2019年5月20日頃 リアクション公開

 

■参加方法

公式ショップでチケット(500円)を購入していただき、ダウンロードしたファイルに記載されたURLのフォームから選択肢の選択、手段(200文字まで)をご投稿ください。

 

■第1回の主な目的

海賊に捕まっている人質を救出する。

海賊を海岸から追い出す。

 

■選択肢

【騎士団員】前線で戦う

【騎士団員】後方支援

【騎士団員】騎士団長に意見

【スヴェル】騎士団と共に戦う

【スヴェル】後方支援、救護活動

【スヴェル】ボランティアの管理

【リモス村】騎士団に協力する(前線で戦う)

【リモス村】スヴェルに協力する(後方支援、救護活動)

【海賊】騎士、スヴェルと戦う

ボランティアとして参加

海岸に出ていて被害に遭う

開発案を出す

 

■地形

街と海岸を繋ぐ石段はありません。

一般人は細い崖道や、梯子、綱を用いて登り下りをしています。

騎士団員(傭兵騎士含む)と戦闘能力のあるスヴェル団員は、騎士団保有の魔法具と魔術師の風の魔法で崖下まで移動可能です。

属性が風で、魔力が21以上あり、且つ体力が非常に劣っていなければ、自身の魔法で1、2度の往復くらいは可能です。

 

■敵と人質

海賊と魔物約50~100人(匹)くらい。

海賊は大した武器は持っていませんが、魔法を使う者もいます。

人質は海岸で暮らしていた人十数人くらい、ほぼ男性。

 

■マスターより

構成、データ処理を担当いたします、川岸満里亜です。

ワールドシナリオ前編(1回~5回)では、主に海賊との戦いが描かれます。

付随する行動や、開発関係の行動も大歓迎です!

開発については、多くの支援や寄付があったアイディアは実現に向かい、戦況や世界の状態に大きな影響を及ぼすでしょう。

支援アクションや寄付の募集については、第2回から開始されます。

 

シナリオに参加=作戦に参加したPCは報酬を得ることができます(被害者は見舞金扱い)。基本皆同額ですが、特に貢献したり、シナリオに関係のない行動をした人につきましては、報酬が高額だったり、支給されないこともあります。

シナリオで得たお金は、開発や被害者に寄付をしたり、貯めることで後に特殊なアイテムが購入できるようになります。また、気概のある方は自身強化のために必要になるかもしれません。

 

海賊のPCにつきましては、基本的には拠点は燃える島となり、応援に駆け付けて騎士団と戦うという流れになるかと思います。

普段はスラム街で暮らしているが、海賊の一味であるなどという設定や、海岸を占拠している海賊の1人であるという設定もしていただいても構いません(内容によっては採用出来かねますが…)。

 

それでは、ご参加お待ちしております!

 

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こんにちは、冷泉みのりです。 

 

オープニング、エピローグ、及びリアクションの一部を担当します。よろしくお願いします。 

 

選択肢が細かく提示されていますので、そちらを参考にPCが一番活躍できる場所を選んでいただければと思います。 

 

リモス村で活動している流刑囚とマテオ・テーペのPCにつきましては、騎士団およびスヴェルへの協力要請が出ています。

【リモス村】の選択肢のどちらかを選んでください。それ以外の選択肢を選ぶと採用の可能性が非常に低くなります。(マテオ・テーペのPCはまだ信用を得られていないため、流刑囚枠に組み込まれています)

この二つの身分のPCは、騎士団やスヴェルが不利になるような行動をとると、即刻リモス村へ送り返され、地下牢行きになります。報酬も出ません。(それでもやるという方は止めませんが)

アトラ・ハシスのPCは自由に選択できます。

また報酬は、どの身分であってもルール通りに支給されます。

 

それではアクションを楽しみにしています!

4月30日 レイニの名字の間違いを修正しました。