燃える島のバカンズス
なんやかんやあった後、火の継承者、レイザ・インダーの身体は魔石化した。
その魔石を海賊のアール……と名乗っていたリッシュ・アルザラが、手に入れた。
これは、そんなもしもな話!
このリッシュ・アルザラが何者かと言えば、アトラ難民、マテオ民の多くの故郷である、アルザラ港の港町の実質の長であったアルザラ家の娘だ。
彼女の父親の名はジェイド・アルザラ。リッシュの物心がつく前に他界している。ジェイド本人は知らなかったが火の継承者の一族の血を引いていた。そして彼は、マテオ・テーペで港町の民をまとめていたリルダ・サラインが憧れていた従兄だ。
また、ジスレーヌ・メイユールとも遠い親戚関係にある。
リッシュは火の男性の継承者であったレイザ・インダーの許嫁とされていた。しかし、リッシュの母、レイニ・ルワール(旧姓アルザラ)が拒否しており、リッシュ本人は知らずにいた。大体そんなかんじ。
●アルザラ王国、王城という名の小屋
リッシュが魔石を手に入れて数か月が経った。
火の継承者が炎で実効支配していた燃える島は、アルザラ王国として独立し、リッシュは女王のお友達という名の陰の支配者となった。
そして火の一族の生き残りのアーリー・オサードや賛同者、海賊と呼ばれていた帝国の難民と、マテオ民を中心とした人々が移り住み始めていた。
各属性の魔術師たちと魔石の力で、島は随分と回復しており、城下町は温泉街として賑わいつつある。
「あなたが建国したのに、女王やらないってなによ」
「女王とか、そんな命を狙われそうなのになりたくない、私は自由に生きたいの! あなたがやればいいじゃない」
「嫌よ面倒くさい。それなら女王はサーナにしましょう。ウォテュラの王家の血を引いてるんだし」
「そうね、とりあえずそういうことで」
建国の際にはリッシュとアーリーの間でそんな押し付け合いがあり、女王は水の一族の力を持つサーナ・シフレアンとされている。
「ところでミノリン、資金と物資調達はどうなってる?」
リッシュがメイドのミノリンに問いかけた。
「あはい、順調ですが、もう少しむしり取り……いえいえ、ご寄付を戴きますか?」
「そうしてくれる? そろそろここも建て替えたいのよ」
「了解でーす!」
元気に返事をして、ミノリンは隣の動物小屋に向かっていった。
小屋の中では、フェネックの家族がわんわん吠え声をあげている。
パパ、ママと、仔フェネック2頭。とても可愛い!
部屋の隅には草のベッドが置かれており、足をつながれた女性が1人――。
「解放しろとは言わない、だがせめて、この動物たちと部屋を別にしてくれないか?」
部屋を訪れたミノリンに懇願したのは、チェリア・ハルベルト。
傷心旅行で訪れていたところ、捕まったのだ。
「あらどうしてですかー。こんなに可愛いのに~」
仔フェネックを抱き上げ、チェリアに近づけるミノリン。
「や、やめてくれ……ト、トラウマが……」
「ふふふっ、それでー、お父様にまたお手紙を書いてもらいたいんです。公爵さまったら、娘のためになら幾らでもお金を払ってくれるので、助かりますー」
「くっ、さすがに、これ以上は」
「はーい、こんにちは、お掃除にきましたー!」
そこに現れたのは、クリーンスタッフのマリアーノ。
「王宮の方にGが出没したので、こっちに誘導しまーす。このお部屋に餌撒いてGホイホイ化しまーす」
「ちょ、ちょっとまて、それだけは……わかった、書く、書きます……ぅ。ううう、お父様、ごめんなさい……」
チェリアは涙目になり、父、ハルベルト公爵宛ての手紙を書くのだった。
●集落の外れ
集落の外れでは、女の子たちが仲良く温泉を作っていた。
皆で楽しめるレジャー温泉を作って、国を活性化させるのだ!
「きゃっ。突然お湯が噴き出てきて、びっくりしました。服びちょびちょです」
「ジスレーヌちゃん、大丈夫? 火傷しなかった?」
ずぶ濡れになったジスレーヌ・メイユールにサーナが慌てて駆け寄ってきた。
「大丈夫です。熱くはありませんでした。それよりサーナさんも、服汚れてしまっていますね」
「そうね、そろそろ身体洗って、着替えて休憩にしましょう」
「はい。ここのお湯って、お肌すべすべになるんですよね。流しっこしましょうか」
「うんうん、身体洗ってあげるわね♪ ああんもう、濡れ濡れのジスレーヌちゃんかわいい。お姉さんが脱がしてあ・げ・る」
その時。
「すみません、王宮……といいますか、女王はどちらに」
男性がひょいっと顔を出してきた。
「き、キャー、痴漢!」
「覗きはダメですー!!」
サーナとジスレーヌが抱き合って叫び声をあげる。
「す、すみません。お着替え中とは知らず」
すぐにその人物――グレアム・ハルベルトは岩の後ろへと退いた。
「申し訳ありません。私たち本土からこちらの女王様とお話をさせていただくために、来たんです。あ、武器とかは持ってないです。ええと、お城はどちらでしょうか?」
グレアムの代わって現れたのは、ビル・サマランチという少女だ。
「お城ですか? それなら、あちら側の岩場の先にある小屋です」
「ありがとうございます。お仕事中失礼いたしました」
丁寧に頭を下げて、ビルはグレアムたちと共に王城……とされている小屋に向かっていった。
面会を希望している女王陛下がここで土木作業をしているとは露ほども思わずに。
「あれ? 何か落ちてるわ」
サーナが拾い上げたのは、グレアムが落した封書だった。親展と記され、きっちり封がされている。
「私宛てのお手紙ね。これは……多大なご寄附をいただいているハルベルト公爵からです! ……なにかしら」
封を開いて読んでみる。
「何て書いてありますか?」
「うーんと、人質交換のお願い? チェリアさんとさっきの女の子を内緒で交換してほしいそうよ。あの子の方がもっとガッツリむしりとれますよ! みたいな……どういう意味かしら」
「さあ? リッシュさんたちに任せておけばいいと思います」
「そうね! それじゃ、温泉入りましょー」
「はあい」
今度はきちんと、立入禁止の札を立ててから、2人は身体を洗うことにした。
●温泉街の個室休憩、お宿
露天風呂付き客室のある一番人気の温泉宿にて、3人の独身女性が愚痴をこぼしていた。
「結局、彼氏できなかったなぁ……」
食材を手に、ルルナ・ケイジが深くため息をついた。
「その若さで何を言っているんです。怒りますよ」
食器の準備をしながら言ったのは、ナディア・タスカ。水の神殿の神殿長だった女性だ。
「そうそう、ルルナはこれからでしょ! 私たちだって、まだ素敵な恋をするチャンスあるわよ」
「うん、シャナさんはすっごく綺麗だし、ナディアさんは綺麗で地位も能力もあるのに、ホントどうしてだろうね」
ルルナのそんな悪意のない言葉に、ナディアとシャナ・ア・クーはずーんと落ち込む。
「綺麗で地位も能力もあるといえば、帝国のチェリアさんもだけれど、チェリアさんは人気あるし」
「どこかで行われた投票の結果によると、ホントは人気あまりないみたいよ。妹は皆に愛されているみたいだけれど」
ちなみにそれが原因でチェリアはここに傷心旅行に来ていた。
「カサンドラさんは、ヒロインみたいなものだったしね。……シャナさんもアトラ島が舞台の時は、ヒロインみたいなものだったのに」
「うう、ルルナもうやめて。悲しくなるから」
「そうです。前向きにいきましょう。今日こそ素敵な方からのご指名がありますよ」
2人をそう励ますナディア。
この宿では、普通の給仕の他、1対1の接待や、マッサージなどのサービスも行っていて、サービスをしてもらいたいスタッフを指名することができるのだ。
家族連れ大歓迎!
カップルも勿論大歓迎! ……だけれど、うらやむスタッフにかるーくイタズラされるかも!?
●秘宝館
温泉街から少し離れた場所にある遺跡の地下には、秘宝館がある。
管理者となったのは、魔法学者のホラロ・エラリデンという男だった。
ここには遺跡で発見された魔法具を含む宝物の他、新たに彼が造りだした様々な魔法具も展示されている。
来訪者には、好みの魔法薬入りドリンクを1杯無料サービスしており、入口側のオープンテラスで景色を楽しみながら休憩をとることができる。
「女性に一番お勧めなのは、こちらの幼女になるドリンクですねぇ~。幼女用の温泉噴水の遊び場もあちらに用意してあるんですよぉー」
今日もホラロは女性に怪しいドリンクを勧めていた。
ともあれ館内で一番人気のある展示物といえば、霊を呼び出せる魔法具だ。
僅かな時間、呼び出した精霊や死者の霊魂と会話が出来るらしい。
●燃える島海岸
『リッシュ、お前が首謀者なのは判っている。お母さんも悲しんでいるぞ。無駄な抵抗はやめて、投降しろ!!』
海岸に近づいてきた船、アルザラ1号から、拡声器を用いた声が響き渡る。
「私は別に悲しんでいないわよ、怒 っ て い る だ け」
ドスのきいた声で言ったのは、レイニ・ルワール(旧姓アルザラ)。リッシュの母だ。
仁王立ちで島を見据えている。
『ええと……姐さんはお怒りだそうだ。わかるな、わかってるな、どうなるか』
若干声を震わせて拡声器で呼びかけ続けているのは、レザン・ポーサス。彼は火と水の一族の血を引くハーフで、弱い透視の特殊能力を持っている。
島の周りは、魔石により生成された炎の壁で覆われており、大型の船ではこれ以上近づくことはできない。
「やってくれるぜ、リッシュちゃん……。バリも、ここで暮らしてるんだよな」
「ルルナも入り浸っているようだし、一度様子を見てみないとな」
港町出身の公国の騎士、バート・カスタルとラルバ・ケイジが帝国製のゴーレムと共に甲板に出てきた。
ちなみに帝国製のゴーレムは寸胴でキャスターはついているが、足はない。愛嬌のある姿である。
『協力してやってもいいが、リッシュの身体はもらうぞ』
ゴーレムからそんな機械音声が発せられた途端、ゴーレムの頭に肘鉄が飛び、倒される。
『なにをする。そういう約束だろ』
倒れたまま、両手をじたばたさせているゴーレムを冷たく見下ろしているのはレイニ。
「あげるなんて言ってないわ。少しの間、リッシュの身体に入ることを許してあげるってだけ」
「まあまあ。火の壁超えるには、こいつの協力が必須なんだし……それにしても、好い様だな、レイザ」
笑い声をあげながら、バートはゴーレムの身体を起こした。
このゴーレムの中には、肉体から離脱し、火の精霊となっていたレイザ・インダーの精神が入れられている。
「とにかく、リッシュを捕まえるのよ。無傷で」
『それはつまり、服だけ燃やして無抵抗にしろと言うことだな……っと!』
今度は転ばされる前に、緊急避難するゴーレムレイザ。
「ははは、しかしさ、この島での生活、俺も興味あるんだよなー……」
島を見ながら、にやにやとレザンは笑みを浮かべていた。
彼には炎の壁の少し先の景色が見える。ただ、彼の透視の能力は非常に弱くて、集中してじっくり眺めてなんとか透視出来る程度。
しかし、この島で囚われているチェリア・ハルベルトというハーフ。彼女の潜在能力を引き出す特殊能力で、能力を上げてもらえば……!!!
「フフフ、俺、温泉の番頭とか天職かも」
そうして、島の視察及び、リッシュを捕らえに訪れたメンバーたちは、島に降りていった。
* * *
一方、王宮という名の小屋にて、知らせを受けたリッシュは恐怖に震えていた。
「マミーい、いや、お母さんが来ているですって!?」
「あなたのお母さんって、魔法も使えないただの人なんでしょ? なんで怖がる必要があるのよ」
青くなっているリッシュに、アーリーは不思議そうに尋ねた。
「うちのマミー、怒らせると超怖くて。昔ちょっとイタズラして、船に穴を開けた時なんて、吊るされて……」
「船に穴ってそれはちょっとのイタズラじゃないでしょう」
「そうかもだけど、それでも航海中、船首に一晩中はないでしょ!? 何度もサメに食べられかけたんだからッ!!」
リッシュは知らない。この時レイニは、接待で酔いつぶれ眠りこけていたことを。
まあ捕まれば、そんな感じの仕置きが待っていることは間違いない。
「ああーん、でもなんで怒ってるんだろ。私何か怒られるようなことした? も、もしかして一番に温泉に招待しなかったからすねてる!?」
「……」
アーリーは思った。この親子っていったい……。
選択肢
アルザラ王国の公務員として、交渉
アルザラ王国の住民としておもてなし
視察、交渉に訪れた
視察、というか遊びに来た
温泉宿でゆっくりする
秘宝館で○○する
○○を焼く、殴る、捕まえる
なんでもいいからキャッキャッする
その他シナリオに関係のある行動
■参加方法
公式ショップでチケット(700円)を購入していただき、こちらのフォームからアクション(400文字まで)をご投稿ください。
こちらのシナリオは、アトラ・ハシス、マテオ・テーペのキャラクターでも参加可能です。
シリーズ参加経験者であれば、カナロ・ペレアに登録していない方でもご参加いただけます。
■スケジュール
2021年2月10日 参加案内公開
2021年2月10日 チケット販売開始(アクション受付け開始)
2021年2月17日(23時59分59秒) アクション受付け締切
(フォームからの投稿は念のため翌朝9時まで行えるように設定してあります)
リアクション公開日は参加者の人数により変動。遅くて3月末日。
【ご案内】
こちらは特殊なイベントシナリオ(パラレル)となります。本編とはずいぶん違いますが、細かいことは気にせずにお楽しみください。
PCの状態(継承者の一族の力を持っているとか、魔力失っているとか)や立場も好きに決めていいです。
NPCについては、シリーズ全てのNPCが舞台にいるとして接触可能です。
(ただ、川岸が書いたことがないNPCとの接触は、避けていただけると助かります!)
オープニングに登場していないNPCについては、基本的にスタートは以下となります。
アトラ・ハシスのNPC→アルザラ1号に乗船しています。
マテオ・テーペのNPC→島の住民もしくは、島に遊びに来ています。
カナロ・ペレアの帝国の騎士NPC→交渉に来ています。
カナロ・ペレアの一般人NPC→島に視察(観光)に来ています。
カナロ・ペレアではダブルアクションを禁止としています……が、このシナリオでは何も気にすることはありません。
本能の赴くまま、アクションをお書きください。
【参加可能キャラクターについて】
このシナリオには、1プレイヤーにつき、3キャラクターまでご参加いただけます。
シリーズ参加PC以外のキャラクターでも参加可能です。PCの恋人とか家族とか、2隻目の避難船に乗っていた人とか、カナロに登場、登録できなかったPCやボツキャラ、未来からやってきた転生した自分など、どんなキャラクターでもOKです。設定は補足欄でご説明ください。
PC登録していないキャラクターも1キャラにつき1PC分のチケット購入が必要になります。アクションを一度でも投稿した後に、参加人物(キャラクター名)の変更はできません。再投稿される場合、同じキャラクター名でご投稿ください。
尚、NPCとして無料で登場できるのは、運営が設定した公式NPCだけです。PCの子ども、ご家族や弟子等、PLさん制作のキャラクターを登場させるには、1キャラクター分のご負担が必要となります。
●担当者より
こんにちは、川岸満里亜です。
こちらのシナリオは川岸1人で担当させていただく予定ですが、何かの際には他ライターさんに手伝っていただくかもしれません。
このシナリオはコメディです。細かい事は気にせず、ノリと勢いいで、本編では出来なかったことを思いっきりやってしまってください!
時期はゾーン最終回頃じゃないかと思いますが、気にしなくていいです。
NPCについてですが、シリーズの他マスター担当NPCのうち、キャラクターをよく理解できていないNPCは苦手としております。カナロに登場していないアトラの原住民NPC全て、カナロのゾーンで担当していないNPC全て、マテオのメインシナリオサイドに連続で登場していないNPC全て、かな。
担当外でも、こちらのオープニングや案内に名前が出ているNPCは大丈夫です。
あと、リルダ、セラミス、皇妃は私が設定を担当したNPCなので、接触希望の方は、是非どうぞ。
それでは皆様のアクション楽しみにお待ちしております!
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