ゾーン落ちたカナロ氏ね!?
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◆夢の世界へようこそ!

 真っ暗な部屋の中、秒針の音が響いている。
 ここは、誰かの夢の中。誰かの……って、誰の?
 私の……僕の……俺の……あるいは、あなたの。
 そんな誰かの、夢の中。
 さあ、瞳を閉じて。大きく深呼吸しましょ?
 だんだん深く、ゆっくり……そうそう、いい感じ。
 ……それじゃあ、誰かさんの夢を、覗きに行きましょうか。

 

☆  ☆  ☆


 崖の上に立っている女性――アウロラ・メルクリアスは、きょろきょろとあたりを見回していた。誰もいない。何かの違和感が、彼女の中にじっとりと感じられる。
 頬をつねる。むにーっと伸びて、どこまでも伸びる。腕と同じくらいまで、伸びる、伸びる……でも、全然痛くない。
「……夢?」
 彼女はきょとんとして、ただ、自分がいま夢の世界にいることだけはしっかり理解した。
「夢なら、何でもできるよね……例えば……ほら」
 アウロラが意識を集中すると、ゆっくり、ゆっくりと体が浮き上がる。
「ほら飛べた!」
 にこっ、と笑う。風に紅い髪が揺れる。体はどんどん持ち上がって、やがて彼女は海のほうへと飛び立った。
 上空から見る海は、青く透き通っている。そして、悲しいほどに果てしなく、どこまでも広がっている。
 海鳥が鳴きながら、彼女の近くを舞う。翻って、彼女も一緒に飛び回る。
「ねえ、もっと、もっと遠くまで行ったらさあ!」
「うん?」
 海鳥がアウロラに答えた。
「大きな陸地が見つかるのかな!」
「そりゃあ、おめえ――」
「えっ、なに?」
「だからよーッ! それは――」
 風のごうごうという音で、大切なところが聞き取れない。どんどん加速していく1人と数羽。潮風を浴びて、ふと振り返る。そうだ、夢なら街の様子も楽しくなっているかもしれない。アウロラはそう思って、飛行ルートを変更することにした。


◆破壊こそ正義!

 ファンシーな夢を見ているものがいる一方、まさに世紀末な感情を爆発させている者たちは、街のあたりに集結していた。
 ……もしかしたら彼らの多くには、まだ名前がないのかもしれない。
 だってほら、みんな知らない、分からない。設定だけ与えらえた「誰か」が、やかましく騒ぎ立てていた。

 聞いていた話と違うじゃないの!
 そうだ! 俺は重要キャラだって聞いてたぞ!
 誰だ! 出てこい責任者! モノ売るってレベルじゃねえぞ!
 まあ、落ち着いて、落ち着いて。冷静になろう。
 これが落ち着いてられるか! 破壊! 徹底的に破壊しつくしてくれるわ!
 ふふ……もうこんな世界、壊してしまおうと思うの……。

 喧噪の少し向こうで、リンダ・キューブリックが、自らの手をじっと見ていた。
「なんだ、この力は……!」
 完全に『戦場用』の装備をまとった彼女は、何度も拳を握り固める。全身に力が漲ってくる。ついさっきまでは――そう、下宿で酒を呷って横になって――。まあ、そんなことはどうでもいい。
 この全身にあふれる、なんとも言えない、強大な力。この力を存分に試したい。タワーシールドとヘビーメイス、どちらも使い込んできた相棒のようなアイテムだ。しかし、今はただそれだけの感覚とは違う、まるで自分の意志と一体となっているような安心感があった。これを思う存分使い倒せたら、どれほど気持ちのいいことか……!
 メイスを、ぶんッ、と一振り。
「っ……! イイッ……!」
 思わず、リンダはのどを鳴らした。我慢しきれず、もう一振り。いいぞ……こんなに調子がいいのは、しばらく振りだ!
 どんどん破壊的な欲求が湧き上がる。かつてのように華々しく戦場を暴れ回りたい。暴徒鎮圧などという、そんな小さなことではなく――そう、血で血を洗うような――遠慮も容赦も必要のない、破壊のみが存在する戦場……! アドレナリンで溺れてしまいそうな、命を懸けた、まさに生きるか死ぬかの真剣勝負……!
「ウォォォッッ!!」
 大声を張り上げるその姿は、まさに鬼神。メイスを握り直し、ぎりっと背後をにらむ。
「敵は、どこだ……!」
 血走る眼は鋭く光り、敵を――いや、獲物を探している。今の彼女と戦うことは、おおよそどんな人物でも自殺行為だ。だが、暴走し始めた彼女の情熱は止められない。ムクムクと彼女の体は大きく、力強くなる。元々高い背は、今や街の反対側からでも見えるほどに。頭は雲に触れていた。
「ォァリャァアアアッッ!!」
 また、メイスを一振り。とんでもない風圧で、木がへし折れる。押しのけられた空気の塊によって空の雲は蹴散らされ、草原は表土ごとめくり上げられた。
「敵――どこだ……隠れていないで出てこい……自分が、この手で……!」
 今の彼女は、まさに怪獣そのもの。誰の手にも負えるはずがない。
「そこかッ!?」
 街の端に建てられた物見櫓を、いともたやすく薙ぎ倒す。崩れ落ちた櫓は民家を直撃し、罪もない人々の生活が簡単に破壊された。火の手が上がる。だがリンダにとっては、そんなことはどうでもいいのだ。
「ちッ、外したか……どこだ……どこにいる……!」
 一歩踏み出すと、地が揺れる。リンダは遠くの海へ向かって、ゆっくりと歩を進めていった。

 強大な力で世界を破滅に導きそうなお姉さまもいれば、もっとポップな狂気に包まれているお姉さまもいた。
「よし、とりあえず世界を滅ぼそう~!」
 トゥーニャ・ルムナは、夢の中でも酩酊していた。たまたま造れてしまった黄金色の蜂蜜酒の強烈な作用のせいかもしれない。――だが、そんなものが本当にあるのだろうか?
「いいじゃん、夢なんだから! 美味しいお酒を飲んだの!」
 野暮ったい素面のツッコミだが、色白の彼女がほんのり薄紅に染まっているのを見ると、やはり酔っているのだろう。
「それじゃ、よ~しっ、いっくぞ~!」
 彼女は、ぐんっ、と背筋を伸ばし、謎の言葉を吐き始める。
「いあ! いあ! はすたあ! はすたあ、くふあやく!」
 その姿は、真剣そのもので――。
「ぶるぐとむ、ぶぐとらぐるん、ぶるぐとむ」
 それなのに言葉は支離滅裂で――。
「あい! あい! はすたあ!」
 大きく声を張り上げた最後の詠唱で、どうにも雰囲気が変わってくる。
「あれ~? 適当に言ってみただけなんだけどな~」
 ゆっくり、ゆっくりではあるが、間違いなく、大きな風のうねりが来ている。遠くから空気の圧力で壁ができているのがわかる。何もないただの外空間に、トゥーニャの声がこだましているのだ。
「風よ、街を襲え~っ!」
 楽しそうに笑う彼女。途端、猛烈な風が一気に吹き抜け、哀れ、リンダが破壊した民家の火はごうごうと大きく燃え盛り始めた。高い建物はへし折れ、もろい建物は吹き飛び、ちょっとばかり遮蔽物のないところにいた人間は、ごろんと地面に転がされた。
「ん~! 爽快!」
 彼女はそう言うと、自分もごろんとその場に仰向けになる。
「せっかく無茶苦茶なことやっていいって言ってるんだし、楽しんじゃおうよ、ね~」
 ……だが、その代償は大きかった。
「あ~、なんか、眠くなってきたかも……夢の中なのに……」
 自分の持てる魔力のほとんどすべてを使って、とんでもなく巨大な暴風を巻き起こしたのだ。例えばそれは、自力でハリケーンを作り出すような、ぶっ飛んだ魔力なのである。そして自らの力をよく理解している彼女は、それらを全部使い果たしてしまったことを夢の中でもはっきりと認識できてしまった、というわけである。つまり、1回で出せる最大の魔力を、この風で使い切ってしまったのだ。
「う~ん……おやすみぃ……」
 そう言って、彼女は眼を閉じた。その笑顔は、なんとも満足げなものだった。

 破壊され始めた世界の隅で、1人の少年が、少女と手をつないでいた。
 少年の名前は、ヴォルク・ガムザトハノフ。彼がかたく握り締めていたのは、ジスレーヌ・メイユールの手である。2人の間に、不思議な時間が流れる。
「ヴォルクくん」
 先に沈黙を切ったのは、ジスレーヌだった。ギギギ、と機械のように首を回して彼女を見るヴォルク。
 可愛い――今日に限らず、いつもそうだけど、可愛すぎる――! 
 彼の脳内に沸き起こる様々な感情は、大きなうねりになって顔色に出ている。だが、彼はいたって紳士を装って「何かな」と、無理をした低い声で聞き返す。
「私たちの関係って、さ」
「ジスレーヌ!」
 1つの意思。なのに、体が動かない。それは、あまりに2人が幼すぎるから――。
 じれったい……だが、どうしたらいい? この先、この次、俺はどうするのが正解だ? 考えろ! ジスレーヌに見合う男、男の中の男なら、何をすべきなのか。不死鳥かつ魔狼たる俺が出来ることは――。
「ヴォルクくん、顔、真っ赤になってます……」
 ジスレーヌの手が、ぴとりと彼の頬を撫でた。
「んぃぃ!!」
 わずかばかり、冷たい手。驚きと興奮で、彼の背がビンと跳ね上がる。瞬間、頭のねじが5、6本、すっ飛んでいく音が聞こえた。
「ジスレーヌ!」
 彼はもう片方の手で、しっかりと彼女の手を取った。
「リア充を爆破しよう」
「リア……?」
 ジスレーヌの目が明白に泳いだ。だが、ヴォルクのあまりに強い言葉に、何やらそれが正解のように感じたらしい。
「そうですね……ヴォルクくんが言うのなら、私も一緒に、リア充を爆破します」
 にこっと笑った無邪気な笑み。途端、2人の足元から砂礫が舞い上がり、大きな魔獣のように成長していくと、一気に街へとなだれ込む。
「きゃぁっ!」
 街中からは、カップルたちの黄色くも悲痛な叫び声。
 運よく、というべきか、寂しいことにと言うべきか恋人のいなかったNPCたちの前は素通りして、どんどん街を砂が飲み込んでいく。
「お掃除大変そうですね」
 他人事のようにジスレーヌが笑う。
「それなら」
 ヴォルクのテンションはどんどん上昇していく。彼の魔法で、流れ込んだ砂は反対側へと抜けていく。襲われたのは、ただリア充たちばかり。カップルそろって砂まみれ。ヴォルクたちには出来ないイチャイチャをしているから悪いのだ。だってズルいんだもん。
「ヴォルクくんっ!」
 ジスレーヌの腕が、ぎゅっと彼の腕を抱き寄せた。
「へっ……」
 あっ、しまった。ヴォルクの夢は「リア充爆破」。こんな腕組みなんてしちゃったら……。
「俺がリア充に……!?」
 郊外で、小規模な砂嵐による衝撃があった。

 空の上から一連の破壊の様子を見ていたアウロラは、思わず口をつぐんだ。
 そして、まだ敵を求めてさまようリンダに気づかれないよう、さらに街の奥へと飛行を続けた。


◆平和に行こうぜ

 街が混沌に飲まれつつあっても、人々は(部分的に家が火事になったり砂まみれになったりはしたが)おおよそ健気に平和を求めていた。ただし、同時に本編への出演も熱望していることに変わりはない。
 世界、つまり通常シナリオを何とかして書き換えさせたい彼らの一部は、クラムジー・カープが臨時で相手をしてくれる異議申立所へと殺到していた。
「番号札45番でお待ちの方―」
 しょげた誰かを蹴散らすようにして、彼はその後ろに並んでいた男性を呼ぶ。
「俺だ! こんな手続きいいから早く俺を――」
「まあまあ落ち着いて」
 唾が吐きかかりそうなほどに勢いよく大声を出す彼を制すると、クラムジーは「ふっ」と強く息を吐いた。それから淀みなく、また何度も繰り返されたようなセリフを吐いた。
「まずは、ここにあるのが申請用紙の一式です。中を開くと、お名前、ご住所、生年月日など、基本的な事項を記載する欄があります。お名前の横には、必ず印鑑もお願いします。公的な書類ですが、実印ではなく三文判で構いません。上部の欄が一通り埋まりましたら、次は以下の項目にお答えください。まず、ご家族構成とご家族の所得構成ですね。こちらは通常シナリオであなたがどのような立ち振る舞いをするか、PLやライターが考える軸となりますので、出来るだけ細かく記載をお願いします。次に医療費控除ですが、こちらは――」
 そこで彼は首を傾げた。
「医療費控除? そのあとは、配偶者控除に、青色申告の有無……まあいいでしょう、いい感じに埋めてください」
 クラムジーは無理やり自分を納得させて、名も知らぬ彼に書類を押し付けた。
「これを俺に書けってか! ふざけんな! 俺は既に確約された地位と名誉と――」
「あの」
 クラムジーの目が、ぎりっと鋭くなった。
「もしかして、お酒飲まれてます?」
「あたりめぇだ! こんな状況、飲まずにはいられねえだろうが!」
「あのですね――」
 彼のメガネが光る。
「出られなかったのが不正だと仰るのなら、せめてあなた自身の身の潔白、つまり何の瑕疵もないのに登場が見送られていることを証明しなくてはならないというのに、それを飲酒状態でどう説明する気ですか? 次回は素面で来るように」
「んなこと言ったって」
「そもそもですね、酩酊しながら他人の貴重な時間を奪っているの、理解されていますか?そこらの飲み屋の与太話じゃあないんですから、その辺きっちり線引きしていただけないと。切腹相当ですよ、本来」
 バンっ、と机を叩きつける。
「面接は以上です」
 剣幕に押されて、彼はすごすごと帰っていく。
「まったく……それでは、番号札46番でお待ちの方―」
 次の贄を、クラムジーは呼び込むのであった。

 平和に行こうぜ、と言ったな。アレは嘘だ――いや、嘘じゃない。クラムジーだって、きっと本当に救いたい人は救ってあげられるのだ。救えない人間が多すぎるだけで。それに、大丈夫、もっと平和な人もいる。
 エルゼリオ・レイノーラは広場の中心で、もっと過激に世界を破壊しようとしているモブたちを止めに入ろうとしていた。彼らの半分程度は「幸せなことに」砂まみれで、もう半分は「不幸にも」きれいな状態だった。
「いいわ! もっと燃やしちゃいましょう!」
「僕の出てこない世界なんてどーでもいいやぁ!!」
「オラオラっ! 俺らを出さねえと後悔することになるぜェ!」
「あっ、ちょ、ちょっとみんな!」
 ばっ、とモブたちの輪の真ん中に飛び込んだエルゼリオ。瞬間、ざわついていたモブたちの反応が止まった。奇怪な目でエルゼリオの姿を見る民衆。彼はなんと言うべきかわからず、周囲の様子の変化をつぶさに観察した。
「PC……PCよ……」
「噂には聞いていたが、まさかこの目で拝むことになるとは……」
「あの……?」
「ひっ!?」
 エルゼリオは、もっとも近くにいた1人の女性に声をかけた。
「あっ、あひっ、ヒっ、いっ、命だけはぁ……!」
 それだけ言うと、彼女は白目をむいてその場に倒れこむ。
「ええ……」
 普段は飄々とした態度のエルゼリオも、この瞬間ばかりは困惑した。
「お前……!」
 ざわり、と群衆の奥から野太い声がする。
皇帝の味方か……それとも、俺たちの味方か……どっちなんだ……」
「あの、その、この人倒れてるけど……?」
「いいから答えろッ!」
 夢特有の不条理な状態に、エルゼリオは一歩身を引いて、「どっちとかは、ないなぁ」と顔を強張らせた。また、空気が不穏にざわつく。
「いや、だってね? みんながちゃんとシナリオに出るためには、皇帝に好かれるか、とっても嫌われるか、どっちかがベターだと思わない? それを僕が好きとか嫌いとか、そういうのはないかな、って」
 エルゼリオの答えに、一同はまた、小さくざわついた。彼らにはどうにも、「他の登場人物との関係性の中で『登場しなければむしろ不自然』という立ち位置」という視点が欠けているようだ。この答えのおかげで、半分以上のモブは「それなら仕方ねえな」と顔を曇らせた。名もなきモブ、あるいは「設定は立派についてるのに全然出てこない謎の人物」たちとして生きていく覚悟が出来たのかもしれない。だが、そう簡単にはいかない人もいる。
「あの後退しかけた皇帝の下僕として恥をさらしながら、あるいはいつ討伐されるかも分からない身で隠れて生きろというのか!」
「後退……?」
 エルゼリオは頭の中で皇帝、ランガス・ドムドールの顔を思い浮かべた。
「……後退……して……」
 いなくもない。そう見えなくもない。ああ、でもこれが夢だってことは、つまり、僕がそう思っていること――。
 ――だが、ちょっと待ってほしい。忘れてはいけないのは、この夢が、相当大人数で共有している夢だということ。エルゼリオが思っていなくても、誰かが思っていれば、皇帝の最前線は後退していたことになってしまうのである。……そう、例えば、ローデリト・ウェールがそう思っているとしたら。

「へーか!」
 彼女は宮廷にて、皇帝ランガスの目の前に皿を並べていた。
「……何の真似だ」
「僕が思うに、世界平和の鍵は、へーかが握ってると思うんです」
「なるほど」
 彼はされるがままに、ハンカチーフを首元に巻かれる。湯気の立ち上る料理たち。
「その世界平和と料理たちに、どんな関係が?」
「へーか……」
 黒ゴマのパンに、ローストチキンとトマトのサンドイッチ。唐辛子がばっちり味を引き締めているチーズオムレツ。インゲンのサラダ。レバーとレンズ豆の赤ワイン煮込み。さらには、ニンジンとトマトをベースにした野菜ジュース。
「生え際、ヤバいよ?」
「……言いにくいことを、随分とはっきり言ってくれる奴だな?」
「だってヤバいよ! へーか今いくつなんですか!」
「34だ」
「まだ若いでしょ! 皇妃へーかだってお若いのに! お世継ぎ生まれたときに『パパは頭が太陽さんみたいだけど皇帝なんですよー』って言えないよ! どーするの!」
「落ち着け。傷付いているのはこちらだからな」
「髪の毛に魔力回せなくて荒れ野原になったらどーするの!」
「だから落ち着いて、怖いこと言わないで」
「とにかくッ!」
 ビシッ、と彼女が指をさす。皇帝相手に、その最前線を、堂々と、正面から。
「へーかの生え際が世界へーわの鍵です! 食べてください! そして生やしてください!」
 気まずい沈黙があった。その空気は、間違いなくランガスが作り出していたものだった。
「あ、もしかして嫌いなものありました?」
「……いや、そうじゃなくて……」
「まったく、へーかも意外とお子様なところがあるんですね。皇妃へーか」
 ローデリトがニコッと笑って振り返る。柱の陰から、恥ずかしそうにカナリアがひょこりと顔を出す。
「お前……聞いていたのなら、止めてくれてもいいのに」
皇妃へーか、ほら、皇帝へーかに、あーんしてあげてくださいっ!」
 ……テキストの順番のおかげで、彼らは砂まみれにならずに済んだ。

 ところ変わって、街の中。リキュール・ラミルはしばらくぶりに大量の食材を目にしていた。いつ振りだろう、これほどまでに潤沢な在庫を見たのは。リキュールは元来裕福な商人だ。行く先々で美味しい料理を食べてきた自信もある。美しく豊かな食は、すなわち人生の喜びである。まあ、彼の場合は人生を謳歌しすぎた感の否めない体形になっていたわけだが。
 ここ最近では見たことのない、立派な魚がいた。香りの高そうなハーブや、鮮度のよさそうな赤身肉も。それに、調理場もとてもきれいで、器具も何不自由なくそろっている。思わず、手近にあった包丁を取り、夢中で魚を、捌く、捌く。額にうっすら滲んだ汗を振り払い、ただ思うままに、調理を進めていく。1口味見。
「――ッ!」
 食材のそのものの味があまりに素晴らしく、言葉にならない。ほどけるような脂のうまみの中に、あまりに繊細な身の弾力を感じる。思わずもう1口。それでも、まだまだ大量に刺身は切り出せる。ああ、旨い! もはや味見ではなくつまみ食い、あるいは食事だが、それでも手を止めたくないほどに、旨い!
 ふと、外から狂乱に満ちた音が聞こえてきた。……美食に騒音は相応しくない。リキュールは包丁を置き、調理場から出てさらに店の外へ。喧騒に向かってひときわ大きな声を上げた。
「お食事の時間でございますッ!」
 丁寧ながらも、非常に強い口調。
「美味しいお食事をご用意させていただきました! 喧嘩や暴動よりも、美味しいごはん、これに尽きます! どうぞお召し上がり下さい!」
 リキュールの背後、調理場から、分厚い赤身肉の焼けるいい匂いが立ち込めてきた。リキュールの腹も鳴る。街の人々の騒がしい声も落ち着いて、次第に1人、2人と、彼が呼ぶほうへ、彼が発したあの贅沢な匂いの元へと、吸い寄せられていく。
「うまそう……腹減った……」
「えっ……いいのか? こんなに大量の肉を食っても? 金なんてないぜ」
「お代は結構でございます。その代わり、現実では手前と手前どものポワソン商会を、どうぞご贔屓に」
 小さく手を揉み、彼はテーブルに肉や魚や、次から次へと運んでいく。いさかいの声は、みるみる歓声に変わり、中には喜びからか涙するものまで現れる始末。
「夢の世界なのですから、楽しみませんと! 心ゆくまで、たっぷりとお召し上がりください。手前もご馳走になりながら、皆様と幸せな夜を過ごさせていただきますよ」
 頬の落ちるような彼の夢。今頃枕はよだれで大変なことになっているのかもしれないが……そんなことよりも、今、リキュールはとても幸せな気持ちで、他のことはすべてどうでもよくさえ感じられていたのだ。

 ふわふわと空中散歩を楽しむアウロラは、街の中が次第に穏やかな雰囲気に変化していることに安堵した。そして、風のそよぐ小高い丘へとふわふわ移動していった。


◆好きにさせてもらおう!

 時に、明晰夢を見たことはあるだろうか。積極的に夢を楽しもうとするとなると、やはりどうしても、気になる人と少しくらいはお近づきになりたいものだ。勝手に相手の家に押し掛けたり、意味もなく喋りかけてみたり。あるいは、何にもしないで「何かの偶発」を待つか。それもいいかもしれない。
 リベル・オウスは、どちらかといえば前者に近かった。彼は、ベルティルデ・バイエルを青空の広がる小高い丘へと招待し、お茶会を開いていた。
「誘ってくださって、ありがとうございます」
 私服の彼女は、いつもとは少し違った魅力がある。いっそう女の子らしいというか、その……高貴な出自を感じさせるというか。
「なあ」
「はい?」
「今日は……その……ただの『ルース』でいてくれねぇか」
 ベルティルデ――その本名をルース・ツィーグラーという――は、意図を図りかねて、首を柔らかく傾げた。
「メイドでも、お姫様でもねえ、ただの1人の女の子として……。夢の中でくらい、背負ったモン全部忘れて、好きなことを楽しんで思いっきり笑ってほしいんだ」
「……そういうことですか」
 彼女は、ふふ、と小さく笑った。
「それなら、わたくしのことはルースと呼んでください」
「ルっ……」
 いきなり呼び捨て? ハードル高すぎねぇか!?
「ルー、ス……」
 ベルティルデ、と呼ぶことにはそこまで抵抗はなくても、ルースと呼ぼうとすると、途端に緊張が走る。ああ、なんで俺はこんなところでも奥手なんだ! 夢だぞ! なんなら今ここで抱き着いたってこれは俺の夢で――。
 ちらっとルースを見た。彼女は優しく微笑んで、頭にクエスチョンマークを1つ浮かべている。
 出来ねえ! こんな無垢で可愛いヤツ相手にそんな横暴なことが出来るわけがねえ! 大体こっちはマテオにいた時からちょっとずつずーっと気になってるってのに全然接点が……。
「はあ……」
 様々な感情があふれて、小さくため息が出た。
 いい。そんなことは、きっといつか時間が解決してくれる。今日のこの夢も、1つの思い出なんだ。
「……ルース」
「はい?」
「俺、気付け薬の応用で、『エナジーティー』っていうのを作ってみたんだ」
 薄黄色の液体を、ティーポッドからティーカップへ。
「綺麗な黄色の蛍光色……それに、とっても甘い匂いがします」
「これ、飲んで感想聞かせてくれねえか?」
 彼女は、いただきます、と言って、恐る恐るそれに口をつけた。
「……どうだ?」
「んー……なんだか、翼を授かりそうな、そんな味です」
「成功……なのか?」
 リベルは、ふっ、と小さく吹き出す。つられて、彼女も笑い出した。
 その和やかな空気を、スライディング土下座で現れたコタロウ・サンフィールドが破砕した。
「ああああ!! すみませんでしたぁぁあッ!」
「えっ、あっ、えっ」
 彼女は突然のことに慌てふためき、そっとエナジーティーをソーサーの上に戻す。
「『魔物対策が鍵だね。あとは計画を立てて――』とか言っていたのに、この体たらく」
 土下座のせいでくぐもった声は、地面に吸われて情けなさを増す。
「全く、少しの役にも立てず、申し訳ない!」
「いえ、そんなことは……人にはそれぞれ『タイミング』とか、『都合』とか、そういうこともありますし」
「だからって!」
 ともすれば泣きだしそうなコタロウ。彼はさらに続けた。
「とりあえず、思う存分罵っていただいて構いませんっ!」
「の、罵るって……」
 すっかりベルティルデに戻った彼女は、困ったようにリベルを見た。だが、リベルにも正解は分からない。困った顔をして、肩をすくめた。
「そっ、それじゃあ……」
 彼女は、地面に膝をつき、肩に手を当てた。
「おっ、おばかさんっ……」
「!?」
 照れたように言ったその一言が、2人の男の胸に突き刺さる。いろんな意味で破壊力の高すぎる「おばかさん」。出自の良さがそのまま『良さ』になってしまった悪例だ。まあ、何が『良かった』のかは、あえて言わないが。
「さあ、顔を上げてください。そんな、いつまでも落ち込んでいても仕方ありませんから」
「ベルティルデちゃん……」
 彼女の言葉に、思わずコタロウが顔を上げる。
「結果的に問題はありませんでしたし」
「えっ」
 コタロウの顔が凍る。
「それって、つまり居ても居なくても戦力にならないっていう――」
「あっ、ちがっ、違いますよ! 違いますよ!?」
 ベルティルデの顔が真っ赤に染まっていく。
「なんと申したらいいのでしょう、その、終わり良ければ総て良しと申しますか、うまくいったから結果オーライと申しますか、なんでしょう、なんでしょうねリベルさん!?」
「いっ、いきなり俺に振るなっ!」
「そっか、俺、いなくてもなんとかなっちゃいますよね……そりゃそっすよね……」
「違うんです! 必要です! あなたの力も必要なんです!」
 ベルティルデの必死の声掛けで、魂が抜けかけていたコタロウが、ゆっくり帰ってくる。
「……ま、これでも飲んで元気出せよ。みんなの手でこの世界を作っていかなくちゃいけねえんだ。楽しくやろうぜ」
 リベルは、コタロウの前にエナジーティーを差し出す。
「何? 美味しそうな、刺激的な匂いだけど」
「エナジーティー。感想聞かせてくれよ」
「翼が生えそうな名前」
 コタロウは息をふっと吐いて、「いただきます」と言った。

 

☆  ☆  ☆


「にゃぉー」
 甘い鳴き声が響き渡ったのは、また別の場所。アレクセイ・アイヒマンの部屋に、どこからか1匹の猫が侵入していた。
「なー……」
 ググッ、と大きく伸びをして、それから仰向けに、体をごろん。金の毛並みと碧眼のコントラストが美しい、なんとも上品な猫である。だが、部屋の主がいない。
「兄様ー」
 部屋の外から、タチヤナ・アイヒマンの声がする。小さく、ノックの音。
「入るよー……って、あれ、兄様?」
 ベッドの上には、猫が1匹いるだけ。
「なーん……」
「……え、兄様?」
 はた目にはいきなりタチヤナがおかしなことを言いだしたかのように見えたかもしれない。だが、彼女には、その猫がはっきりと「ターニャ」と言ったのが聞こえたのだ。それも、アレクセイの声色で。
(朝起きたら、猫になっていたんだ)
「分かる、分かるよ兄様、朝起きたら猫になっていたんだね?」
(そうそう……)
「ああ……でも兄様、猫になっても美人さんで素敵で……」
(ターニャ、そんな場合じゃないよ?)
 いつの間にか、猫改めアレクセイはその場に背筋をピンと伸ばして座っていた。
「あっ、そ、そうだね! でも、どこに……」
(ひとまずグレアム団長のところへいくのはどうだろう?)
「……分からないけど、行ってみよう。このままにするわけにはいかないもんね」
 彼女は猫との不思議な会話に首肯して、トートバッグのようなものに自らの兄を抱え上げて入れると、よいせと持ち上げた。

 ちょうどそのころ、ジン・ゲッショウが一足早くグレアム・ハルベルトの元を訪れていた。
「まずは、お茶とお茶菓子、どうもありがとうございます。みんな喜びますよ」
 彼は受け取った緑茶のような淡い色のお茶と焼き菓子を並べ、「それで」と切り出した。
「珍しい来客で、正直驚いているところです」
「いえいえ。せっかくの夢の中でござる。普段グレアム殿はなかなかにお忙しいお方。拙者のようなものが時間を割いていただくのも、かたじけのうございまする」
 ジンは深々と頭を下げ、「で」と続ける。
「拙者、グレアム殿が刃物をこよなく愛していると伺い申して」
「ほう、その話を聞きに来たのですか」
 彼はニコリと笑うと、「それじゃあ、お話しして差し上げますよ」と言った。
「まず何といっても、特有の金属光沢が美しいですね。甲冑などの焼き付けたような金属では表現し得ない、鏡のような強い反射。思わず頬を寄せて口付けしたくなるような……もちろん危険ですから、実際にはやりませんが」
 グレアムが両手を広げ、身を乗り出す。
「そして、流れるような筋。刃物の持つ曲線と直線の組み合わせは、究極の機能美とも言えますね」
「確かに、洗練された美しさがあるでござるな」
「ややっ、ジンさんにも分かりますか!」
 息をつく暇さえなく、グレアムはまくし立てる。
「そこに、さらには刀鍛冶の熱量があり、使い手の気迫が込められている。刃物はまさに美と魂で出来ているのですから、これが素晴らしく人間の心を掴んで離さないのは、当然至極!」
 がばっ、と立ち上がった彼を、ジンは驚いて見上げた。
「あぁ! だから刃物と甘いひとときを過ごす『あの時間』だけは、なんとしても、楽しみたいのです……刃物を愛でるときはね、誰にも邪魔されず、自由で、なんというか救われてなきゃあダメなんです……独りで、静かで、豊かで……」
「そうでござるか……」
 グレアムに心行くまで話をしてもらおうと思っていたジンだったが、そのあまりの迫力に、思わずちょっとだけ引いている。
「……いや、言いすぎましたね」
 その気配をわずかに察知したのか、グレアムは恥ずかしそうに頭を掻いた。
「グレアム殿の刃物愛がここまでとは……」
「お恥ずかしいところをお見せしてしまいました」
 刃物が絡まないとなると、急にグレアムは紳士を取り戻す。
「いえいえ、恥ずかしいことなど何一つござらん。それよりも、刃物を刃物として愛でることができるこの平和が、本当に素晴らしいと思うのでござるよ」
 ジンはお茶をすすり、ふう、と口から湯気を吐き出した。
「あの……」と家の奥から、金髪の少女が顔を覗かせた。カサンドラ・ハルベルトである。彼女は柱の陰から顔だけ出して、ジンとグレアムの様子を見ている。
「ちょっと、お出かけしてきてもいいですか?」
「ああ、構いませんが……どこへ?」
「お外へ、少しお散歩に」
「珍しいですね……ええ、気を付けて行ってらっしゃい」
 グレアムの言葉に、彼女は小さく頭を下げた。

 街路樹の立ち並ぶ道端で、ユリアス・ローレンが彼女のことを待っていた。散歩にお誘いしたのは、彼だ。
「この先に、お花畑の広がる公園があるんです。ぜひカサンドラさんと一緒に歩きたいなと思って」
「……ありがとう……」
 彼女は恥ずかしそうにうつむいている。少しばかり違う歩幅。ユリアスが合わせて少し短く取り、一緒に並んで、花畑へと歩いていった。
 柔らかな日差しを浴びて、彼女の顔が白く透き通る。咲き乱れていたのは、シロツメクサの花。
「わぁ……」
 ついさっきまでうつむきがちだったカサンドラが、今は顔を上げ、あたりの様子をじいっと見ている。香りのほとんどないシロツメクサの花だが、咲き乱れて、むわっと濃い緑の匂いがするような気がした。
「カサンドラさん」
「はっ、はい……!」
「一緒に花冠、作りませんか?」
「花冠、ですか……?」
 彼女は首を傾げて、「それは」と小声で聞いた。
「花を摘んで、それを冠にするのです。昔、母から作り方を教わって」
 ユリアスは花畑の一角に腰を下ろし、シロツメクサの花を、出来るだけ長めに数本切り取った。カサンドラが興味深そうにその様子を覗き込んだので、彼は手招きして、隣に彼女を座らせる。
「この2本を重ねて、茎をくるっと1回……それから、次の1本をその下に……」
 彼の手さばきに見とれるカサンドラは、また小さな声で「すごい」と呟いた。
 ものの数分で出来上がった花冠を彼女に渡す。カサンドラの顔は、シロツメクサとの対比でとても赤く見える。
「よく似合ってます」
「……うれしい……」
 彼女はうつむいて、浅く息をしている。
「もしよろしければ、この後アイスクリームでも食べませんか?」
「えっ……い、いいのかな……」
「大丈夫。ここは夢の中ですよ。アイスを食べて怒る人なんて、誰もいませんから」
 花冠を戴いた少女は、こくりとうなずいて立ち上がった。
 ベンチに2人並んで、ほんのり花蜜の香りのついたアイスを屋台で買って食べる。
 真昼間、屋台のほかに人の影もなく、ただ無言で、アイスを頬張る2人。
 ユリアスはふと不安になり、カサンドラの顔を見た。彼女の心の奥底に流れる感情を、じっとうかがうように。カサンドラは、まだ花冠を頭に載せたまま、どこまでも幸せそうに、アイスに舌先を伸ばしていた。
「綺麗、ですね」
「……へっ……」
「この花畑」
「……うん」
「また、ぜひ僕と来てくださいませんか」
「えっ、いっ、いいのっ?」
 カサンドラは声が上ずったのを感じてトーンを押し下げた。続けて「ぜひ」と言った。

 未だ刃物愛を熱く語るグレアムの家に、コンコン、と誰か戸を叩くものがあった。そう、猫になった兄と、兄をトートバッグに押し込んだ妹がやってきたのである。
「――というわけなんです。それで――」
 ジンの持ってきたお茶とお茶菓子を目の前に、1人と1匹がマシンガンのように説明を繰り広げた。
「まあ、待って、落ち着いて。いいかい?」
 グレアムは両手で制して、困った顔を浮かべた。
「まず、その猫だけど、本当にアレクセイなんですか? にゃーにゃー言っているようにしか聞こえないのですが」
「拙者にも、猫の鳴き声にしか聞こえないでござるよ」
「にゃぉーん!?」
 どうやらアレクセイの声が人間の言葉に聞こえるのは、タチヤナだけのようだ。
「ほら、おいで……」
 グレアムはアレクセイを背中から拾い上げ、ぎゅっと抱きしめた。
「あー、猫可愛い……」
「兄様……!」
 タチヤナは思った。
 なんと羨ましい光景……! グレアム隊長に抱きしめてもらえて、しかも、ああ、あごの下をさすさす……兄様がゴロゴロにゃーんって言ってる……なんだこの光景、天国なのか、楽園なのかここは……! ずる過ぎるよ兄様……羨ましい! 私も、私も団長に抱っこされてゴロゴロにゃーんしたいっ……!
「……って、あれ、タチヤナ?」
「ぐっ、グレアム殿ッ!」
 ジンが驚愕の顔を浮かべる。
「拙者、見てしまったでござる! 今、わずかばかり目を離したすきに、タチヤナ殿が、猫に!」
「……んぉ!? あっ、アレクセイ!?」
 入れ替わるように、グレアムの膝の上にいた猫が、人間の姿に戻っている。
「だからタチヤナがそう言っていたじゃありませんか」
「さすがに重たい……悪いけどどいてくれ」
 震える太ももで必死にアレクセイの体重を支えていたグレアムが、彼の脇腹を抱え上げてゆっくりと地面に下ろす。
「うーん……やっぱり、人間の体のほうがいいね。しっくりくるっていうか」
 アレクセイは小さく、ふふっ、と笑うと、猫になったタチヤナを見た。
「今度はターニャが猫になったのかにゃ?」
「なぉーん……!」
 グレアムが微笑んだ。
「よしよし……兄妹で不平等があってはいけないね。おいで……ああでも、あんまりベタベタ触ってもセクハラって言わないでくださいね? 色々と厳しいご時世ですから」
 グレアムが手を広げたところに、だが、タチヤナは体を進めていけない。そんなこと、恥ずかしくて……。だが、グレアムは彼女が動き出さないのを見て、ひょいっと彼女を拾い上げた。
「にゃぅ!?」
 待って、まだ心の準備が……!
 緊張と不安で、思わず目をつぶる。
「おやおや、意外にも甘えん坊さんだな」
 彼は、タチヤナのあごの下をごろごろと撫でてやる。
「ぉぁー……」
 ゴロゴロと喉を鳴らす猫の姿に、つい先ほどまで見て取れた強張りは消えていた。むしろそれを進んで受け入れているようにさえ見える。
 ガサリ、と家の奥のほうで音がした。
「ん、客人か?」
 珍しく朝寝坊のチェリア・ハルベルトが、頭を掻きながら現れたのだ。
「って、猫……?」
「おはようございます、チェリア様。これ、タチヤナなんですよ」
「……なんだ、私はまだ夢を見ているのか?」
「あるいは、そうかもしれません」
 アレクセイはにこっと笑って、「猫にはストレス軽減効果があるらしいのですが、チェリア様もいかがですか?」と続けた。
「いや、私は結構」
「そうですか……私も人間に戻る前でしたら、チェリア様のことも癒して差し上げられたのですが」
 ふふ、と残念そうに笑うアレクセイに、チェリアは困惑して言う。
「もしかして私が理解していないだけで、その猫は本当にタチヤナなのか? ……それじゃあ、アレクセイが猫に戻ったら、その時は癒させてもらうことにする」


◆夢の世界ですから!

 寝たと思ったら、メイド服の頭の部分、ホワイトブリムになっていた。
 ……それがウィリアムの現状である。
(解せない)
 ウィリアムはコンバートである。メイド服を纏ったこともあるが、メイド服が本体だという設定ではなかったはずだ。プロフィールの管理者へのメッセージ欄にもそんなことは書いていない、多分。
 ここまでの大幅な外見変更は公式的に認められないだろう。
「このままでは、リアクションに登場できなくなる。この謎を解くために旅立たねば」
 危機感を覚えながら、布の筋肉の動きでフワフワ飛ぶ。
「ん? あれは、カナロ氏か」
 見たこともないその人物が、ウィリアムには何故かわかった。
「私は、オープニングに結構出てるのに、名簿に……載ってないんだが……」
「……ふふ。もう、こんな世界、燃やしてしまおうと思うの」
 カナロ氏に詰め寄るモブ達……。
「なんて質の悪いモブ野郎ども! 世界を燃やすとかフーリガンか? 無茶言ってる、まぁ怖い。
 ……って、アーリーじゃねぇか!」
 その場をふわふわ離れようとして気付く、世界を燃やし尽くす為に集中し始めた女性の存在に。
 布筋フル活動で、ウィリアムアーリー・オサードのもとに向かう。
「恋人ぉ……、恋人はいらんかねぇ……安いよぉ……。嫌な事は忘れて、新しいロマンスは如何かねぇ」
 フワフワ、ふわふわ。
「今なら素敵なメイド服がセットになってるよぉ、お買い得、お姉さん、ちょっと試してみない!? ちょこっと! ちょこっとだけ!」
 アーリーの頭の上に着――ボオッ!
「アツゥイ! 俺だ、ウィリアムだ!」
 緊急筋肉停止! 床にぼてっと落ちてぐるぐる転がりまわり、ウィリアムは火を消していく。
「ウィル? なんであなた、そんな姿なの。そんな些細なことどうでもいいけど」
 ウィリアムについた火を消して、拾い上げるアーリー。
「人間だし忘れられる事もそりゃあるだろ! 俺だって昨晩食ったものとか覚えてもいねぇし、日々前髪も伸びてんよ!」
「なんで伸びてるのよ。前髪を切って超イケメンになったって程度の外見変更、問題なく通るでしょう? イケメンになってモテ男のナンパ師になったって設定なら、私が許さないけど……姉として!」
「なら、切ってくれよ」
 しかし今の彼には髪がない。なので燃やしてもらうことも、切ってもらうこともできない。
「まあ、そういうわけで嫌な事忘れて、メイド服着ようぜ」
 突如現れたメイド服が、アーリーの手にぱさり。
「俺を頭に装着して、社交界デビューして、カナリア王妃に負けない立派なレディになるんだ……、そして、カナロダンス大会で優勝してリモス村に旅行に行こう」
 ふわりふわりと、アーリーの頭に下りるホワイトブリムなウィリアム
「それにさ! 意気揚々と俺の物にするからって、価値が有る言うて箱船に乗ったのはいいものの、皇帝にNTRされた男って世間様から見られてる奴もいるんですよ!」
「それって……」
「そう、俺ですよ!」
 そんな目で見られていようと、彼はこうして新たなホワイトブリムとしての人生を、前向きに生きている!
「世の中辛い事ばかりじゃぁない、さぁ……俺を頭につけるのです……、そしてメイド服を着るのです……着るのです……のです……」
 呪文のような言葉と共に、アーリーの手の中にあったメイド服が、彼女の身体を包み込み、立派なメイドへと変えた。
「これでよし、もうすぐ舞踏会の時間だ……って、メイド!? 社交界デビュー関係なくないか!」
「ウィル……前から思ってたんだけど」
 アーリーの冷ややかな声が響く。
「あなた――メイド服と私、どっちが大切なのッ!」
「アーリー、お、お前メイド服にまで嫉妬するのか……ウアチィ!」
 熱く熱く燃え上がる2人――。

 

☆  ☆  ☆


「リーダーだろうがなんだろうが関係ねぇ。手前、そのバンダナ、私と被ってんだろうが!」
 海賊のバルバロは、ボス(本名未定)のいる、プロモーション動画に乗り込んでいた。
「仕方ないだろう。海賊にバンダナはつきものだ。それにな、俺等はしばらく野菜を食ってねぇ。もはや菜野人、菜野人の下級民族は種類が少ねぇんだよ。バンダナの被りくらい許せ!」
「画像の公開は私の方が先! だから手前の方が取りやがれ!!」
 画像の公開は、バルバロの方が3日早いのだ。
「完成は俺の方が早い。だが、発注はお前の方が早かったがな」
「ならやっぱり、私の方が先ってことだろ! だいたいなぁ、人質事件なんつう大事件起こしといて当の本人がこんなところに雲隠れしてるたぁ、どういう了見だゴラァ! 何が目的かだけでも説明してから雲隠れってろ!」
「うるせぇよ、ちっちぇことでグダグダ言いやがって、被りが嫌ならてめぇが外せ」
 激怒するバルバロを前に、ボスは怒りとも悲しみともいえぬ表情で話しだす。
「いいか、完成した俺の姿は、黒髪に赤いバンダナだった」
「!!!!!! 丸被りじゃねぇか」
「完成したお前の画像を見て驚愕したスタッフが、イラストレーターさんに頼みこんで、バンダナの色を変えてもらったんだ。その際にな、ご厚意で髪の色を変えてくだっさったという経緯があって、俺の今の姿が出来た。この姿はいわば超菜野人グリーンバージョンだ」
「な、なんだと……!」
「イラストレーターさんはな、2パターンも作ってくださったんだぞ。そんな経緯を知らぬからといえ、色もデザインも違うバンダナ一つ許せねぇとは、器のちっさな男……いや女よ!」
「くっ……好き放題言いやがって、よし、話し合いで決着がつかねぇならしょうがねぇ。どっちが手前を押し通すか、拳で勝負だ!! 私が勝ったらそのバンダナ外してもらうぜ!!」
「いいだろう、俺が勝ったら真の姿を公開させてもらおう! 妹よ」
「妹!? 手前の妹なんて冗談じゃねぇ」
「なんだ、娘がいいってんなら養女にしてやってもいいぞ。その容姿じゃ愛人にする気にはなれんがな!」
「上等だ、コラァ!」
 殴りかかるバルバロ。ボスは片手で受け止め、彼女の足を払おうとするが、それよりも早く、バルバロはもう片方の手でボスの顔を裏手で払う。
「クッ」

 バシッ
 シュババッ
「ぐはっ」
「……波ー!」
「なにを!」
 凄まじい攻防を繰り広げる2人。
「そこかっ」
「うおおおおおっ!」
「でゃーーーっ!」
 バシッ
 どんっ!
 ドカッ
「うぐっ、ここまで、か……っ」
「ハアハアハア、勝った……」

 激しい呼吸を繰り返しながら、2人は地面に横になり空を見ていた。
「……それで、どっちが勝ったんだ?」
「読んでわからねぇんなら、画で見ればいい」
「イラストを頼めと? なんて汚ぇ野郎だ」
「フッ、悪役だからな」

結果は……

敗北……
敗北……
勝利!?
勝利!?

 

☆  ☆  ☆


 これは夢である。
 夢だから、言いたいこと言ってもいいのだ!
 コーンウォリス公国騎士ナイト・ゲイルは、王国の近衛騎士であり燃える島調査隊の隊長であるチェリア・ハルベルトのもとに来ていた。
「アンタに一言、言いたいことがある。評判悪くて悪かったな! 気にしてはないけど理由がちょっと酷くね? 風体言うけどね、俺も予想外だったんだよ、能力値極振りしたら面白くね? って思ってやったらご覧の有様です!」
「30以上の能力があるなら、変人、性格破綻者と書いてあるだろうマテオのキャラクター設定説明にも。性格破綻してないのなら、お前は変人だ」
「うぐッ。うん、良く分からない内から極端な能力値で個性出すもんじゃないな! と反省しました!! 止めないけどね! 面白かったし。
 後、前回からのコンバートで魔力に1振っておいて良かったと思いましたよ、ホント俺偉い! レイザありがとう!! 振ってなかったら始まる前から試合終了でしたよホント……アブナイアブナイ」
「まあ、魔力がなければ、魔法具が発動できんからな。魔法薬も効果ないし」
「それは、前作で学びました……」
「アトラでも書かれていたんで、登録キャラクターに合わせて変えられなかったんだ。だが、魔力がなければ、洗脳系魔法なんかも全く効かないという利点もあるんだぞ」
「マジですか!」
「だな、そういう能力を持っていたヤツいただろ? 相手にしたら面白かったかもな」
「そういう展開にはならなかったですし、マテオでは、俺は俺のすべきことをしたんで」
 はあと息をつき、ナイトは続ける。
「んで、カナロのキャラクター設定説明では、高い能力値の説明が凄いボロッボロに書かれてたんですが、ちょっとマイルドな表現になりませんかね? 俺、あそこまで酷いことはないと思っているんですよ、ナイトだけに」
「ナイトだけに?」
「訳わかんないね」
「分からん。……マイルドとは、こんなかんじか」

 30以上の能力がある者は変人だ。一件見た目はマイルドな者もいるが、そういった者は内面がマイルドに変態だ。何れも性格がマイルドながら破綻しており、マイルドな付き合いも難しい。

「差し替えるか」
「差し替えなくていいです!」
「マニュアルの説明は、カナリア様だからあれでも随分マイルドに書かれているが、実際はもっと酷いんだぞ、30以上の設定がある偏った人物というのがどういう人物なのかは、アトラで描かれててな……その者は異常な魔法知識を持つ者だった、だが重度の幼女愛好者だ」
「変質者ですか」
「信頼は魅力と社交の値だぞ? これが0なら、交流不可、人間的魅力も皆無だということだからな。……で、お前の信頼の値は?」
「見なくてていいです!」
「しかしその男の知識と能力は眠らせておいてよいものではない。だが、彼と関係を築いていたPCが誰もコンバートしてこなくてな。すまんが、私は帝国を第一にするんで、マテオは無理かもしれん。あ、でも別の異能者がここにいるから大丈夫か」
「マテオは俺たちの行動次第ってことですね!」
 わかってますよと投げやり気味に言い、ナイトは話を変える。
「後、呼び方教えてくれない? 流石に呼び捨て拙いだろうし……隊長でいいのか? 夢の中だし、敬語苦手なんで普通に話させてもらうわ」
「まあ隊長だろうな。それにしても話が長くないか? どこが一言だ」
「気にするな、このシナリオはノリと勢いと見た。普通の時は真面目にやるんで、今はハメ外させてよ。夢の中だし」
「そうですね。私のことはどうぞチェリアと呼び捨てで呼んでください」
「なんでアンタが敬語!?」
「いえ、話の内容的に私が敬語を使う方が正しいように思えまして。色々申し訳ございません」
 深々と頭を下げるチェリア。
「キャラ全然違うんだけど」
「夢だからいいんです」
「まあいいか、それじゃ最後に一言」
「また一言ですか? 何千文字でしょうか」
「まだ1000文字も喋ってねえよ!」
 ナイトは大きく息をつき、真剣な目をチェリアに向ける。
「俺は俺が成すと決めたことを成し続ける、守りたいものを守るために。アンタは『仲間であるのなら、そして命令に忠実ならば、お前は類のない逸材と見ている』と言った」
 チェリアは彼の真剣な言葉に応え、頷く。
「ああその言葉に応えるさ、だが、それを傷つけるなら……俺はその言葉に牙をむく」
 彼の瞳が強く煌めいた。
「……」
 目を合わせていたチェリアの瞳が、軽く揺らぐ。
「……こ、怖い!」
「!?」
「お兄ちゃーん、ふええええーん。ごめんなさーい」
 がくがく震え、泣きながらチェリアは逃げて行ってしまった……。
 体力値も30に達すると、目力で人を殺めかねないと言うのかッ。

 

☆  ☆  ☆


 マーガレット・ヘイルシャムは、マテオ・テーペ回顧録の執筆で疲れた心と身体を癒そうと、ひとり新作の小説の構想を練っていた。
 新作は男性同士ではなく、女の子同士の物語。
「あら、あそこにおられるのは……」
 ふと気づくと、マーガレットは知らない部屋の前に立っていた。
 ドアの隙間から漏れ出す明かりに誘われて、中を覗くと――そこには、2人の女性の姿があった。
 アーリー・オサードと、エルザナ・システィック
 2人が親しくしている男性、ウィリアムロスティン・マイカンは、マーガレットの友人だ。
(あの2人……正直、異性としてどこがよかったのかわからないです。今度機会があったら、聞いてみたいですね)
 部屋の中にいる2人の女性は薄着で、ソファーに並んで腰かけている。
 肩と肩が密着し、交わし合う視線にも、熱っぽさを感じる。
(まぁマテオ・テーペでは死線を潜り抜けてきてますし、深い絆が出来ていたとしても不思議ではない……というか、なんかこのシーン、私が考えた小説の場面と似てますね)
 ドアに近づいて、マーガレットは2人の様子を眺める。
(つまり、これは、ゆり……もとい夢)

 激しく燃え上がった後、アーリーはエルザナに治療してもらっていた。
 下着にガウンを羽織っただけの姿で、ソファーにエルザナと並んで腰かけている。
「あなた恋人いるのよね? どこまでいったの」
「どこまでって……私は付き合ってるつもりなんだけど、プロフィールを見るとそうじゃないのかも。ロスティンさんの好きな人の1人なのかなーなんて。この間もすっごく美人なお友達連れて来たし。今日も来てくれるって思ったのに、何故かいないし。アニサ……アーリーは火の男性との間に子どもできた?」
「でっ、出来るわけないでしょうっ。そ、そういうことわからない、し。ね、ねえ私、やっぱり魅力ない? どうしたら男ってそういう気になるの」
「うん、可愛げがなさすぎるものね、あなた。ちゅーしてほしいなら、自分からこんなふうに求めればいいのよ」
 エルザナがアーリーに体を密着させて、彼女の目をじっと見つめる。
 手に手を重ねて、顔を近づけて求めるように微笑む――。

 ペキッ!
 もっとよく見える位置へと、足を踏み出したマーガレットは、何故か置かれていた木の枝を踏んでしまった。
(誰ですが、こんな足元に枝を置いたのは! なんですか、お約束みたいな展開!)
 ここでS級魔法使いの2人に捕まったら、命のスペアが必要になる!
(残念ですが、一時退散するしかなさそうですね)
 マーガレットは通路へと飛び出し、窓からジャンピングエスケイプ!
「あ、ああああああ、なんて高いのでしょう~。でも夢ですから、大丈夫ですよね、あ、こんなところにロープが。あー……あーああー」
 ロープに捕まって、華麗に隣の塔に乗り移ろうとしたマーガレット。
「みんなの夢、凄かったな」
 そこに、夢の空を旅したアウロラ・メルクリアスが帰ってきた。
「あ、ちょうど良いところに。乗せてくださいね」
 マーガレットは縄を放して、飛んでいるアウロラの背に乗っかった。
「え? ええっ? 重くてコントロールがー!」
「重いだなんて失礼です。体力が2.5倍になったからといって、体重は倍にもなっていません」
「そう言う問題じゃ、きゃーーー、おーちるーー!」
「大丈夫です、夢です、これは夢ですから、夢 で す か ら~~~~~」
 2人は大空を旋回しながら、カナロ・ペレアの世界へと落ちていった。


●担当者コメント
【東谷駿吾】
皆さんの夢を描かせていただき、大変ありがとうございました。
私も眠りが浅くて夢をよく見るのですが、なんで夢って、あんなに脈絡がなくてめちゃくちゃなんでしょうね?
……ただ、半年に1回くらい正夢を見ることもあるので、いつか世界が訳の分からないことになるのではないかと日々怯えています。
おそらく今回の皆さんの夢は、正夢にはならない、はず……。
残念かもしれませんが、どうかご安心ください。
ちなみに、今回はNPCのキャラクターを誇張して書かせていただいた部分があります。
夢の中ですから……それが皆さんの印象、ってことでしょうか?
もし現実の世界でNPCがちょっと違う雰囲気だったとしても、今回のイベントのことは夢の中の出来事と割り切ってくださいね。
それでは、次回もぜひご参加ください!

【川岸満里亜】
『◆夢の世界ですから!』から下を書かせていただきました川岸です。
た、楽しかった……。こんなイレギュラーなリアクション書いたの初めてかも!
あれもこれも書かせていただきたいと思ってしまったのですが、小人数で体力が尽きてしまいました……。
また機会がありましたら、お受けしたい!!

それでこちらは夢ということで、本来のNPCとは違う描写がされている部分が多々あります。
会えないNPCと会えたり、行けない場所に行けたりしていますが、夢ということでご了承ください!
一部、現実世界で実際にあったことが書かれている気がしますが、ゆ、夢ということで……。

さて、6月はパーティーシナリオ皇妃のお茶会が行われます。
舞台は、リモス村に停泊中のアルザラ1号(アトラ・ハシスの船)です。
時期はワールドシナリオ前編第1回のエピローグの時期。
出航直前に開かれる船内でのお茶会とリモス島一周遊覧を予定しています。

是非ご参加ください!