マッチング交流会!?

 陽射しが強くなってきたある日。騎士団開発室の室長、エクトル・アジャーニ24歳独身恋人なしは、宮殿敷地内の外れにある館に呼び出されていた。
「リモス村で他国民と交流会をやるぞい」
 エクトルを呼び出した人物は、洪水前に既に公務から引退していた皇族、トランダ・ドムドール75歳である。エクトルの祖父は、この男性の護衛を務めていたが、洪水前には亡くなっており、父の元騎士団長も殉職してしまったため、現在ではエクトルがアジャーニ家の当主だ。男爵の爵位も継いでいる。
「どちらが沢山のおなごを落とせるか勝負しようぞ」
 『はあ?』と声が漏れそうになるのを、エクトルは辛うじて呑みこんだ。
「自分、下級民族や蛮族に興味はないんですが」
「ふむ。しかし、水はともかく、風の継承者には敬意を持っておるじゃろ? 彼女は究極の美を兼ね備えていると思わんかね」
 風の継承者、シャナ・ア・クー。何度か見たことはある。
 確かに彼女は息を飲むほど美しい。布を巻きつけただけの服装も魅惑的だが、ドレスを纏わせてみたいとも思う。むしろ脱が……。
 ごほん。と咳払いをして、エクトルは憮然とした表情で話す。
「申し訳ありませんが、遊びに付き合っている時間はありません。見合いの話は連日届いており、相手に困っているわけではないですから」
「ほっほっほっ。しかし、実際に見合いはしておらんのだろう? お主もよい年じゃ。早く結婚して子を儲けよ。でないとお主の代でアジャーニ家は断絶じゃ」
 エクトルの兄弟は既に他の貴族に嫁いだ妹のみ。確かに家を守るためには、跡継ぎを儲けなければならないのだが。
「重鎮たちの間で、他国民の要人と帝国貴族を政略結婚させる案が出ておってな。お主の伴侶として、宮殿で預かっている方のルース姫か、メイユール伯爵の一人娘のジスレーヌ・メイユールを迎え入れようと話が進んでおるぞ」
「!!!!??」
 エクトルはルース・ツィーグラーが苦手だ。ウォテュラ王国の貴族とのことだが、彼女の不敬とも思える態度など、何もかもが気に入らない。
 ジスレーヌは良く知らないが、お花畑貴族との結婚なんて御免である。
「エクトル君。これはお見合いではないのだよ。リモスで生きる者達は安定した生活を求めている。彼女達も私達の使用人や愛人となることを、望んでいるのだよ。暗い海の底に戻りたくはない、帝国民としての安定した立場が欲しいと思っておるのじゃよ! さあ、私達のおなごを迎えにいこうではないか!」
 『お一人でどうぞ』を言いたかったが、エクトルはぐっと言葉を飲み込む。
 確かに、このままでは、マテオ・テーペから訪れた民と政略結婚をさせられる可能性はある。
 結婚ではなく、マテオの民を雇い入れることで、彼らを自国民として迎え入れる協力ならば、できるだろうか。
 それに交流会には帝国の有力者の子女も多く参加するだろう。自分の妻として相応しい娘に出逢える可能性もある、かもしれない。

 リモス村で暮らすジスレーヌ・メイユールのもとに、一通の知らせが届いていた。
「帝国の方との交流会、ですか」
 リモス村の広場で行われる、出会いと就職のマッチングパーティ……とのことだった。
「労働者を求めている貴族の方が沢山来てくださるのですね」
 雇用の条件に、帝国に帰化することとある。
 苦しい生活を強いられているマテオの民の中には、帝国人となって、本土で生きることを望む人もいるだろう。
 特に貴族たち。宮廷に向かった貴族の多くが、帝国の民となったという話も聞いていた。
 それをジスレーヌに止めることはできない。
「お仕事や、結婚で関係を築いていきましょうってことなのでしょうけれど……。奪われるだけで、何も残らないのではないでしょうか」
 例えば自分が帝国の貴族と政略結婚をさせられたとしても、帝国は自国民が第一で、マテオ・テーペに生きる人たちを本気で救出してくれようとはしないだろう。
 そして生き残った難民も、最終的には自国民として支配するつもりなのだろう。恐らく、アトラ・ハシス島も。
「お父様がいなければ、マテオ民がまとまるのは難しいですし、帝国の民となることは悪い事ではないのかもしれませんが……」
 どうしたら、マテオ・テーぺの人々の救助に本気を出してもらえるのだろうと、ジスレーヌは常に考えていた。
 そして今、突然のようにひらめいた。
「お父様が政略結婚すればいいじゃないですか!」
 お父様とは、マテオ・テーペを統治するジスレーヌのアシル・メイユール伯爵である。
 容姿も良い方だと思うし、頭も良い。アラフォーでまだまだ子供を望める年だ。前妻……ジスレーヌの母とは、洪水より前に死別しており、現在独身だ。
「お父様が帝国の貴族の方と再婚されたのなら、お父様の領土であるマテオ・テーペの民も帝国民です! 自国民を見捨てるようことはされないはず」
 アシルは最後までマテオに残るつもりのはず。だが再婚となれば、それがマテオ民の救いとなるのなら、2隻目の箱船に父は乗るだろう。父ならば帝国に丸め込まれず、上手く交渉してくれるはず。決して父だけ助かればいい、そんなことを思ってのことではない。ことではないのだっ。
「私がすべきことは、お母様探しです!」
 ジスレーヌは急いで釣書を書き始めた。自分のではなく、父の釣書である。帝国成人貴族に配りまくるつもりだった。

 

 

イベントシナリオ(2020年6月)参加案内

 

■参加方法
公式ショップでチケット(1500円)を購入していただき、こちらのフォームからアクション(600文字まで)をご投稿ください。

 

■スケジュール
2020年6月6日 参加案内公開
2020年6月6日 アクション受付け開始
2020年6月14日(23時59分59秒) アクション受付け締切
(フォームからの投稿は念のため翌朝9時まで行えるように設定してあります)
リアクション公開日は参加者の人数により変動。
最長1か月半程度。

カナロ・ペレアではダブルアクションを禁止としています。
複数の人物と絡む場合、ご行動は全員同一シーンでお願いします。

■主な登場NPC(以下に名前のないNPCも、仲の良いNPCに限りお誘い可能です)
エクトル・アジャーニ
帝国男爵
アジャーニ家の使用人、及び自分の嫁さがしのため参加。
「アプローチってどうやってするんだ? 『おいそこの女、僕の嫁候補にしてやってもいいぞ』でいいのか?」

トランダ・ドムドール
帝国皇族
自分の側仕え兼愛人を求めて参加。
「女の子大募集じゃ! 自分で女の子と言える年齢なら、実年齢は問わんぞ」

ジスレーヌ・メイユール
公国伯爵の娘
父の再婚相手(帝国貴族)探しのために参加。
「私のお母様になっていただけませんか?(いたいけな瞳)」

グレアム・ハルベルト
帝国公爵の息子
ガーディアン・スヴェルの勧誘のために参加。
「よかったら、その才覚をスヴェルで生かしませんか?」

チェリア・ハルベルト
帝国公爵の娘
ハルベルト家の使用人や自分の付き人を求めて参加。
ジスレーヌのターゲットその1
「うちで働きたい? まずは志望動機を聞かせてもらおうか」

カサンドラ・ハルベルト
帝国公爵の娘
姉に付き添い、リモスの友人たちに会いに来ている。
「たくさん人がいても、もう大丈夫……なの」

シャナ・ア・クー
山の一族の代表(風の継承者)
素敵な出会いに期待して参加。
風の継承者の一族の力を得ようとする帝国貴族たちに求められるかも?
トランダのターゲットその1
「えっ、アイジンってどんな仕事? 私に出来るかしら」

ルルナ・ケイジ
公国没落貴族の娘
カッコイイ騎士と会話したいと思ってる。
「本物の騎士さん、カッコイイな~。でもル……私の中ではまだお兄ちゃんが一番かな」

ベルティルデ・バイエル
王国王女
良く解らずに参加。
トランダのターゲットその2
「解放された後のベルのお仕事、探しておきましょうか」

エルザナ・システィック
帝国貴族(前皇帝の庶子)
トランダの付き添い(監視)として参加。
「みんな、久しぶりです。メイドのミーザでーす。なんちゃってね」

インガリーサ・ド・ロスチャイルド
帝国子爵
交流会の進行を任されている。
ジスレーヌのターゲットその2
「私には夫がいるわ。行方不明だけれど……(寂しげ)」

ビル・サマランチ(年齢10代前半)
帝国貴族の娘(実は皇帝の娘)
地属性の10代後半から20代の恋人を求めて参加。
「地属性の方で、お父様に認めて頂ける方、いないでしょうか」

【ご案内】
イベントシナリオは本編の状況を気にせず、お気軽に楽しんでいただけるシナリオです。
本編の話題を出したり、情報を得ようとする行動はお控えください。
今回はどの立場の方も、交流会にご参加いただけます。
NPCとの関係については、イベントで築かれた関係を本編に持ち込むことはできず、こちらのイベントでなんらかの立場を得ても、本編では採用しかねます。
ただし、PC間につきましては同じようなことが実際にあったとしていただいて構いません。
PC関係構築にお役立てくださいませ。

NPCにつきましては、リストに名前のあるNPCの他、カナロ・ペレア後編に登場している仲の良いNPCをお誘いいただけます(無名NPCも可)。
今回は追加料金は不要です。重要シナリオ以外のシナリオにつきましては、1PC辺りの描写量に制限を設けております。多くのNPCと絡みますと、アクションが採用しきれなかったり、PCの描写が減ってしまう恐れがあります。

【アプローチカードについて】
交流会には白紙のアプローチカードを1枚持って参加します。
こちらは採用したい、されたい人物、交際希望相手へのアプローチに用いるカードです。
スタッフが回収して、相手に配りますが、手渡ししても構いません。
白紙なので、無記名で何か変なことを書いてもバレないかも!?

●担当者より

【東谷駿吾】

ありそうで無かった『ガッツリ恋愛系イベント』!

不埒な恋を楽しむも良し、本気で愛の告白をするもよし……はたまた、「契約を結んで」労使関係になるのもよし。

ご自由にお楽しみください! 盛り上げられるよう、私も頑張ります!

 

【川岸満里亜】

こんにちは、川岸です。オープニングを担当させていただきました。
イベントシナリオなので、どたばた楽しい物語になればいいなと思います。

恋愛関係ない求人、求職活動も大歓迎です。真面目、不真面目、不純も大歓迎!
ところで、オープニングを書きながら思ったのですが、アシル・メイユール伯爵の再婚案、もしかしてこれアリなのでは(笑)。
何か面白い雇用関係や、カップルが成立した場合は、続編も検討したいです。
どうぞよろしくお願いいたします。