こんにちは! 広場の近くにある宿酒場ハオマ亭のパルミラよ。
これから帝国各地の案内をするわね。
一通り見て回ったら、うちのお店で休んでいってね。
◆開拓地リモス村
帝国本土の西沖にある小島で、流刑地として罪人達が流される島よ。子爵様が管理しているわ。
本土からは崖につくった石段を下りて、干潮時にだけ現れる細い道を渡っていくの。
それ以外の時間帯は波が荒かったり渦巻いてたりしていて、とても危険だから出入りは禁じられているわ。
見張りも厳重だから、特別な人じゃないと行き来は許可されないわよ。
最近は、村の住民に難民が加わったみたい。どこかの国の人達とどこかの島の民族だそうよ。
本土も土地がないから、仕方なくここで生活してもらうことにしたんだって。
それと、ここには帝国で唯一魔法鉱石が採掘される鉱山があるの。
鉱山って言っても今はその坑道入口は海の中で、引き潮の時にだけ採掘できるんだって聞いたわ。
ここでの活動が流刑囚の主な仕事ね。
◆ガーディアン・スヴェル
ハルベルト公爵が防犯のために設立した団体で、貴族や騎士達の居住区に本部があるの。
団長は公爵の長男であるグレアムさんが務めているわ。
活動内容はいろいろあって、防犯意識の呼びかけとか大通りや広場の掃除とか、あとは農家のお手伝いなんかも引き受けているわね。火事とかの有事の際もここの人達が駆けつけてくれるのよ。
希望者はたいてい誰でも入団できるわ。魔法や格闘術も、本部にある養成所で心得のある人が教えてくれるんだって。
ここ最近は、難民も加わったって聞いたわ。
ちなみに、うちの宿酒場の一番のお客さんよ。
◆宮殿と敷地内
あたしは行ったことないんだけど、グレアムさんが言うには洪水前は自然の中にあるのどかな離宮だったんだって。
そこには陛下とご家族、それから陛下と同じような特別な地の魔力を持った親族が暮らしていて、この地を守っていたそうよ。
陛下には双子のお姉様がいらしたけど、14、5年前に帝国を守るために犠牲になられたらしいわ。
うちの宿酒場からも見えるんだけど、宮殿には大きな塔が立っているの。その塔は魔力をコントロールしているそうよ。国内の東西南北の端にも塔はあって、魔力塔と呼ばれているわ。
それから、敷地内の外れにウォテュラ王国の難民を収容した特別収容所があるわね。
◆燃える島
もともとは世界で一番目か二番目に高い山だったんだけど、大洪水でここも海に沈んでしまったの。
でも、4年くらい前に頂が姿を現して、同時期に開拓地リモス村がある島も現れたわ。陛下の命で調べた結果、水位が下がったからという調査結果が出たんだって。
これからこの島をどうしようかと陛下達が方針を決めようとした矢先に、海岸に下りていたスラムの住民に占拠されて、彼らはそのまま居ついて海賊になってしまったの。
島には遺跡があったそうだけど、すごいお宝でも眠ってるのかしら。温泉が湧いているところもあったって噂で聞いたわ。
この遺跡、洪水前は立ち入り禁止だったの。時々、偉そうな人が来て調査してたみたい。
とはいえ、今は炎に包まれているから誰も入れない。どんな状態なのかもまったく不明よ。
◆海岸
土壁を取り払った後、ここに下りてきて漁をして生計を立てている人達がいたわ。
当時、まだ燃えていなかった島を拠点にしていた海賊達とも上手く取り引きをしていたみたいだけれど、島が燃えてからは状況が一変したの。
海岸は海賊達に占拠されて、これまで通りの取り引きができなくなったのよ。つまり、ほとんど漁ができなくなったの。
開拓地方面の崖には石段があるけれどここにはないから、町に出るには数時間かけて登らなきゃならないのよ。
騎士団なら風の魔術師の魔法や専用の魔法具で、船を海に下ろしたりできるんだけどね。
おかげで、市場に魚が届くことはなくなったわ。
だいたいこんな感じね。
ここ数年の変化と、あたし達以外の生き残った人達との出会い……何かいいことが起こりそうな気がする!
だってみんな、5年前の恐怖を知っているもの。
どん底の現状から向かう先なんて一つしかないじゃない。
陛下の言葉じゃないけど、平和を勝ち取るのよ!
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